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転1

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「彼は“誰か”に伝えたかったんです。自分がここに来たという痕跡を。……それは美月さん本人か、あるいは、彼女が連れ去られると想定した上で、それを追う誰かに向けてのメッセージだったのかもしれません」

そう言って、高橋は棚の前に立つ。

「カメラの死角で、グリの視線を考慮すると、侵入者が立っていたのはこのあたり。ちょうど、この棚の前です」

黒川も立ち上がり、高橋の横へ歩み寄る。

「黒川、手袋」

沢渡が即座に指示を飛ばす。

白い手袋をつけた黒川が、慎重に棚を開ける。中には猫用のおやつ――“カリカリだニャ”があり、その袋には付箋が貼られていた。

手書きの文字でURLが記されている。

「ホントにあった…。」

高橋の本音がこぼれる。

「え?あそこまで説明して自信なかったんですか?」

黒川が思わず聞き返す。

「勝手に開けるわけにもいかないじゃないですか。大事な証拠をダメにする可能性だってあるし。正直、半信半疑でしたね」

高橋の言葉に少し呆れつつ、黒川はURLが書かれている付箋を沢渡に見せる。

「インターネットでここにアクセスしろってことか」

誰に言うわけでもなく、沢渡は独り言のように呟く。本来は捜査の情報なので高橋や陽菜がいるところで見るべきではない。しかし、高橋のおかげでこの手がかりにたどり着いたのもまた事実だった。

「こちらのパソコンで、このURLにアクセスしてもらってもいいですか?」

この場で見るべき。そう判断した沢渡は陽菜にパソコンを使わせて欲しいと申し出た。

「えぇ…どうぞ」

陽菜の許可が降りると、黒川が付箋を高橋に見せる。付箋に書かれた小さな文字を、高橋は目を細めながら確認し、少しずつPCに入力していく。入力が終わると、もう一度付箋と見比べ、間違っていないかを確認した上で、一言「では。」と言い、エンターキーを押下した。



画面は暗転し、サイト全体が表示される前に英字での警告メッセージが表示される。高橋はマウスを操作し、OKにカーソルを合わせクリックする。

画面が切り替わり、表示されたのは8つの猫の画像だった。猫の画像の下にはそれぞれ値段らしき数字が外国通貨で表示されていた。


陽菜「……猫ですか?」

沢渡「……猫なのか」

黒川「……猫ですね」


犯罪に関わる画面を覚悟していた三人は、思わず同時に息をつく。

――ただ一人、高橋だけは違った。口元を手でおさえ、PCの画面をじっと見ていた。

「いや、おかしい…。」

画面を眺めながら呟く高橋を3人が見つめる。

「うん。やっぱりおかしい。今の為替で換算したら、この猫一匹で500万円超えてる」

「セレブ御用達の高級猫を販売しているサイト?」

画面から目を離さない高橋に陽菜が高橋の横顔を見ながら問いかける。

「そんな平和なもんじゃない気がするなぁ…」

陽菜の問いかけに答えつつ、高橋はマウスを動かし、何ヶ所かクリックしてサイトの中を探索する。

すると、サイト内に動画サムネイルを見つけ、高橋は何気なくその動画を再生した。

再生された動画を見て数秒後、

「陽菜ちゃん見るな!」


PC画面を見ていた高橋は突然振り返り、大声で叫ぶと、陽菜の顔に自身の手を向けた。

「え??なに?どうしたの?」

突然の高橋の行動に陽菜はもちろん、沢渡と黒川も息を呑む。

「大声出してごめん。でもこれは見ちゃダメだ」

口元に手をあて、高橋はPC画面を睨む。陽菜は言われたとおりPCから離れ、沢渡と黒川は高橋の両脇からPCを覗き込む。

「これはなんだ…」

沢渡の声が低く落ちる。

「……猫の腹部を、刃物で切開している……」

黒川の言葉に陽菜が耳を疑う。

「え!?なんで??なんでそんな酷いことするの?なんでそんな動画あるの??」


重苦しい空気が流れる中で、高橋が重い口を開く。


「ここは…」

一旦動画を止め、ノート型のPC画面を半分閉じる。

「違法薬物…覚醒剤の取引をする闇サイトだと思う」




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