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承11


承11


カタカタカタカタ……

カタカタカタカタ……カタ。

カタカタカタカタ……

カタカタカタカタ……カタ。

カタカタカタカタ……

カタカタカタカタ……カタ。




入力した内容を一通り見直すと、本多はエンターキーを押した。画面にプログラム起動の許可を求めるポップアップが現れ、「YES」を選択する。処理経過を示すウィンドウが立ち上がり、バーが0%からじわじわと伸びていく。

「いけますか?」

本多は冷めたコーヒーが入ったマグカップを口に運び、画面を見つめた。バーは順調に60%付近まで伸びた。しかしそこからスピードは一気に落ち、70%手前で完全に動かなくなり、英字のエラー表示が現れるとプログラムは止まった。

「……やっぱダメか。」

失敗による落胆というより、むしろ失敗が想定どおりという表情で天井を見上げる。

資料の上に無造作に置いてあったスマホを取り、数回スクロールしてから通話ボタンを押した。

「あ、お疲れさまです。本多です。今いいですか?はい。この前のやつ、部長から言われた方法で試しましたけどダメでした。共有フォルダに入れときます。そもそもの目的ってデータ圧縮ですけど、元データ軽くするためのツールが重くなるってのがナンセンスですよね。上が言うから試しましたけど、部長の方針で進むのは正直どうなのかなって。消費電力がトントンじゃ意味ないって話ですし。まぁ……わかります。結果が劇的に変わる感じはしないけど、まだ修正の余地はありますんで、もうちょっと試します」

話しながらマウスを操作し、本多は既存のプログラムを複製。次の作業の準備を進める。

「それとですね……まだ見せる段階じゃないんですけど、アプローチ変えて、個人的に別のやつ作ってます。好奇心というか、今はまだ妄想に近いんですけど。ええ。まだ全然です。うまくいったときだけ報告します」

そして、本多は声色を変えた。

「で、これが今日いちばん大事な相談なんですけど……」

一拍置き、深刻な口調で続ける。

「月末、総務の女性陣と飲み会になりまして。はい。呼んでますよ、千早奈緒さん。だから課長に声かけてるんですよ。え?いやいや、金づるなんて思ってないですって。直属の上司に楽しいひとときを味わってもらいたいだけですから。ほんとですって。大人の世界ですからね。青二才にはわかりませんし、何があっても口割りません。はい。じゃあ店決まったらメールします。お疲れさまでーす」

相手が切ったのを確認して、通話終了ボタンを押す。

「んじゃまぁ金づるいるし、一人二、三万コースだな。天ぷら?いや、ここはふぐだな」

プログラムの複製が終わったPCは、画面がスクリーンセーバに変わっている。

「ふーぐー、ふーぐー」

ふぐを連呼しながら店を探すためにスマホの画面をスクロールしていると、LINEが届いた。

送り主は美月。メッセージを開いた瞬間、本多は目を見開く。

「まじか。……詩織ちゃんいるのか。」

目を閉じ、背筋を伸ばして深呼吸する。本多が瞬時にメリデメを考えるときのクセだった。

「行こ」

上下スウェットのままアウターを羽織り、財布とスマホを手に取る。

「ハーイボール、ハーイボール」

ハイボールを連呼しながら本多は玄関を出て、美月のマンションへ向かった。

美月からLINEが届いて18秒後のことだった。


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