表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/20

承3

翌朝。

目を覚ました美月は、隣で寝息を立てる本多の顔を見つめた。ほんの少し開いた口のまわりには、無精髭がうっすらと伸びている。

彼は外国の俳優のような髭に憧れているが、体毛の薄い体質のせいで、その願いはなかなか叶わない。

それでも諦めきれず、何度も伸ばしては剃り、伸ばしては剃りを繰り返していた。

美月は、そっと人差し指でその無精髭に触れた。

――あの灰色の猫の毛は、きっともっと柔らかくて、ふわふわしているだろう。そんな想像をしながら指先でなぞっているうちに、思ったよりも長い時間が経ってしまい、ついに本多を起こしてしまった。

「あ〜……フニャウニャ、◯△⬜︎*※……」

あくび混じりに、寝言のような言葉をつぶやく本多。

「おはよ。――猫、決めたよ」

美月は微笑みながら言った。

彼女は、灰色の猫を飼うことに決めたのだ。

「ん?……◯△⬜︎*※……?」

本多は夢と現実の狭間を彷徨っていた。


飼うと決めた美月の行動は早かった。

ペットショップの開店時間を待って電話をかけ、店員の白石梓に灰色の猫を引き取りたいと伝える。

仕事の都合で引き取りは次の土日になるが、他に希望者が現れたときのために、契約金の一部を前払いしておく必要があるという。

美月は迷わず、ネットバンキングで全額を振り込み、念のため再び梓に電話を入れた。

「振り込みは確認できましたので、篠崎様の猫ちゃんとしてお預かりしますね。お越しいただくのをお待ちしています」

梓の明るい声に、美月は胸を撫で下ろした。

その後、美月は猫を迎える準備に取りかかった。

インターネットで必要な猫用品を調べながら、ご飯皿や爪とぎ、トイレなどを次々と調べる。

実家で猫を飼っていた経験はあるが、自分で世話を主導したことはなく、あらためて調べると知らないことばかりだった。

便利なグッズも増えている。

たとえばトイレひとつとっても、猫砂が飛び散らないように工夫されたバケツ型のものなど、形状や素材のバリエーションが豊富で、どれを選ぶか迷ってしまう。仕事以外の時間は、ほとんど猫のために費やされた。

だが、その時間は苦ではなかった。

かわいい猫グッズを眺めているだけで楽しかった。

灰色の猫が、この部屋にやってくる日が待ち遠しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ