〈64〉
森本君と無言で屋上に向かう。屋上の中心で私が腕を組むと彼はなぜか正座になる。別に私は怒ってなどいないのに。
「私よりふさわしい子がいるじゃない。美樹とか鈴音とか」と言うと
「なんでお前に俺の好きな人を決められなくちゃいけないんだよ」とド正論が帰ってくる。私も無駄なことを聞いたもんだ。
「とにかくあんたとは付き合えない。気持ちはうれしいけど。やっぱ私とあんたは付き合うっていう感じじゃないでしょ?」と私は言った。
「わかった。返事ありがとう。また今まで通りに戻ってもいいか?」と聞かれたので
「ああ、それが私も一番うれしい。そして殴ってごめん」と謝った。
「ははっ。そうだった。けっこう痛かったわ」そう言って森本君は立ち上がった。
私もなるべく早く元に戻りたいので、「ちょっとしゃがみたまえ」と言った。
そしていつかのように森本君の背中に飛び乗るとそのままおんぶで自分の教室の前で降りて帰ってきた。
教室に着くと美樹が取り巻きと教室の真ん中の机の上に座ってぎゃははと笑っている。
舞香と絵美里のところに金井君もいる。
私もそこに座ると金井君が
「紅茶にショウガとはちみつ入れたらめっちゃまずかった」と言った。金井君はいつもの調子だ。私は
「いやショウガは余計だろ」とツッコむと私もいつもの調子がだんだん戻ってくる気がしてきた。
絵美里は「スープというよりタレ」と言う題名の、もはや小説かどうかすらわからない書物を読んでいる。絵美里よお前はお前でどこへ向かうんだ。などと思ってたら急に眠気がやってきた。そういえば3時間しか寝ていなかったんだ。今日はよく寝よう。
しかし私は森本君に遠慮が本当にあるのだろうか?やってきた眠気の中でそのことが少しくすぶっている気がしてたら、あそうか、こうなったらこれからは私も美樹の美の講義を受けて森本君にふさわしい女になったら、そしたら本当に遠慮があるのかどうかわかるかもしれないなと思った。
来月にはもう3年生か…なんか早い1年だったな。
クラス替えでもし森本君と同じクラスになったら気まづいのでそうなったらもうそのまま付き合ってしまうか。やはり何か私の中でくすぶっている。
わかった。決めた。私はもう一人の私に向ってこう言った
「そのくすぶりが今後どうなるかを見守ってみるってことでどうか?」 了
最後までお読みいただきありがとうございました。皆様の貴重なお時間をこの作品に割いていただき重ねてお礼申しあげます。よろしければ、あと一手間だけ、いいねや高評価や肯定的な感想などいただけたら大変ありがたいです。よろしくおねがいします。




