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〈62〉

 その後徐々に吐き気がこみあげ、私は嘔吐えずきながら倒れ込んだ。目をつぶると先ほどの光景が頭の中で高速で明滅し、とても耐えられそうにない。どうすればいいかわからないが、吐き気は消えずとりあえずトイレに行って「おえっ」と言ってみるが何も出てこない。やまない吐き気と吐くこともできないという二重の苦しみの中で、なぜ自分がこの状態なのかも全く分からずただ全身に毒が回ったような苦しみにのたうつことしかできない。

 全く想定してなかったことが起こったからだろうか。相変わらず目を開けても先ほどの光景の明滅がやまず、漫画で見た頭をぶつけた時に頭上で星がくるくる回っているような、脳が直接揺らされてぐわんぐわんしてる感覚が止まない。

 私はトイレの前の廊下で倒れて、虫のようにうずくまって、この状態が過ぎるのを待つしかなくなっていた。

 その間私は心の中で美樹!美樹!と叫んでいた。

 美樹助けて!美樹!と何回も美樹に助けを求めるも、どうしても直接連絡することができない。どうしても頼れない。自分は弱いな。こんなにも頼る強さがないもんかとやや観念に似た気持ちが出てきたころ、少し楽になったような気がして体をひきづるようにして自分の部屋へと帰る。

 相変わらず吐き気は消えずしかしこんなところを家族に見られては余計な心配をかけるだけで、またトイレに行くにも細心の注意を払わねばならないのがうっとうしい。

 しかしこびりつくような吐き気がどうしても治まらず、何回か往復しているうちに、深夜になって、さすがに心配した母から「大丈夫?」と言われたが「生理痛」とだけ言って、何とかやり過ごし、そのうち眠りについたらしく朝7時になっていた。

 おそらく3時間ほどは眠れたはずで、気分はずいぶん治まっていた。

 私は今日絶対に学校に行かなくてはならない。そして何食わぬ顔で授業を受け帰ってきさえすればいいのだ。いつもやってる簡単なことだ。そうしなければ周りに心配されてしまうから。

 私は体を転がし学校へと向かった。

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