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「今の島津川ってたよな」とか「はい島津川出ました」など金井君と森本君と私がいるときに時折2人でニヤニヤ、へらへらしながら私をそう評していることがある。
どうやら彼らの中学時代にも私のような気難しい女がいたらしく、この感じからするとまあ褒められてはいないだろうなということだけはわかる。
それでも私の性格により彼ら共通の笑いポイントが生まれているなら何かには貢献してるので良しとしている。
それにしても「向こうは哲学だから…」「え?あれ哲学だったの?」とかなんとかごにょごにょ漏れ聞こえる単語だけ拾うと、相当な変わり者らしいのでなんだか複雑である。
この断片的な情報だけだと気にならなくはないのだが、しかしはっきりその島津川さんのことを聞くのも怖いので私は何も気づかないふりをして一緒になってへらへらしていることにしている。
いや怖いというのは嘘だ。こっちから聞いたら負けだから聞かないのだ。
あいつらはああやって断片的に島津川さんをちらつかせているが向こうからどういう人物か説明しないので、明らかに私の方から「その人ってどういう人?」という質問待ちなのだ。
こうなっては女が廃る。こんな分かりやすい誘いに乗る私だと思ったか?なめられたもんである。
おそらくその島津川さんも逆に私の立場になれば私と同じことを考え何食わぬ顔をしてやり過ごしているに違いない。
などと会ったこともない人に妙な親近感を覚えながら、クソ男子2人の戯言に付き合いつつ、復讐のチャンスを伺うことにした。




