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〈34〉

 とにかく冬はものすごく天気がいい日が多い。だから少しでも空を見て太陽に当たらねば宇宙に失礼である。となれば屋上である。冬の昼休みは寒いけど無風なら屋上である。

 屋上に来たら森本君が瞑想していたのでズッコケた。誰のマネかと思ったけどすぐに私のマネかと自分で気づいた。

 これは先日の仕返しをしなくては、いや、してあげなければなるまい。

 そろりと後ろから近づいて、速やかに体に巻き付き胴体を足でカニばさみにしてヘッドロックをかける。

 しかし森本君は動じることなく何も言わない。180センチの森本君に154センチの私が巻き付いても子供がお父さんにじゃれているようなものなのか「効いてる」感じが全然しない。くそっ。

 「そういえばさあ」と涼し気に話し始める森本君。つづけて

 「このまえ、JKが瞑想したら悪いかね?って言ってなかった?」

 「ああ言ったな」

 「悪いかね?って『かね』って普通言う?俺もつられてそのあと偏見で悪いかねって言っちゃったけど」

 「言わんかもな」

 「あれ何?太宰治の影響?」

 「そうかもな」

 「やっぱ太宰が好きなのか」

 その言い方は非常に語弊がある。こういう雑な決めつけが一番カチンとくる。ここは正確に訂正しないと後に引くやつだ。私はただ人間失格という小説のここがいいと言っただけだ。太宰なんて女にだらしない単なるおっさんだが、その言い訳にうまいところがあるという程度に過ぎない。確かに作品と作者は完全に切り離せないかもしれないがそれだとしてもその作者の能力の一部が好きだと言ったに過ぎないのである。

 ということをヘッドロック越しに伝えると

 「お、向きになっちゃって、なんかかわいいじゃん」と言われた。

 かわいい?今私にかわいいと言ったか?言ったな?その挑発乗ってやろうじゃないの。私は森本君の首に腕を巻き付け思いっきり絞る。すると森本君が

 「んが…んが…ご…ぐ…ぎ~」

 やっと効いてきたようである。そしたら私の腕を平手でトントンとするので「お前の力はその程度かもっとかかってこいよ」と言われている気がしたのでもっと力を込めて絞る。そしたら

 「こひゅ~こひゅ~」

 となんか様子がおかしいので力を緩めて放した。後で聞いたら相手の体にタップするのは柔道や格闘技のルールで参ったのサインらしい。私はこういうじゃれ合いを男子とあまりやったことがないので非常に勉強になった。危うく男子高生を一人殺めてしまうところだった。

 まあでも、太宰に関する訂正と、私にかわいいといったらどうなるかを知らしめることができたので総じていい一日だったのだと思う…たぶん。

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