〈10〉
「不細工にうつる鏡は見ないに決まってるでしょ。これ基本よ~」と美樹が言えば
「あ~わかるわ~」と金井君が言った。
お前がわかるのかっ!?と私の瞳孔は拡大し0.5秒だけ金井君を凝視したあと、いかんいかんと目を伏せまたおかずに箸を伸ばした。
美樹の影響で美を意識し始めた舞香は、ふん!ふん!とうなずきながら今にもメモでも取りそうな勢いで話を聞いている。
「とにかくそういう鏡はすぐに捨てて」と並のブスが言えば鏡のせいにするなという怒号が飛びそうだが美樹が言うので説得力が半端ない。
美樹とも仲良くなった金井君が昼食を一緒にとるようになった。私、舞香、絵美里、美樹と金井翔太というたぶん男子高校生が1体と5人所帯になっていた。
さっきまで美樹と美について話していたかと思えば、実は舞香がネット将棋の有段者であることが判明し、最近始めた初心者の金井君が完全に舞香を師匠扱いしてる。300局ほど指してもまだ4,5級をうろうろしている金井君は有段者という肩書の威力にひれ伏している。これは舞香も悪い気がしないだろう。名占い師にアドバイスを乞うがごとくの低姿勢で金井君は舞香に将棋の戦法の相談をして、何やら譜号が飛び交う。
相手が角道を止めた場合、居飛車、振り飛車の両方があるがこれは棒銀、早繰り銀、腰掛銀の可能性を保留できるように銀を3,7に置くのがいいのかどうとか…ということまで聞きとれてあとは何を言ってるのかわからなくなり、最後に舞香が
「私たちレベルならどれでもいいよ」ということで、おそらく金井君のレベルではまだ早い相談だったんだと思いながら私は次の唐揚げを頬張った。




