『昔話』
初めまして!!
読んでいただくだけで光栄です!!
いつか大賞を取りたい街騨 悠花と申します!!
よく力みすぎて疲れてしまいますから軽めに描きます!!
コメントや誤字報告どんとこいです!!
アデラント国立ウレトン学校。
学士から博士までの幅広い教育課程を取り扱い、国から支給される優秀な人員と予算を使って優秀な人材を輩出し続けるアデラント唯一の国立学校だ。
平民から王族までどんな身分でも入学することができ、それぞれの専門学問や青春を心待ちにする新規入学生は毎年20000人近い。
私、モロ・ソラも二年前はそんな新入生の1人だった。
ウレトン学校では入学時、五つの専攻を選ぶことができる。
魔工学、騎士学、経済学、美工学、文化学だ。
魔工学は魔術が関わるもの全般についての授業や施設が利用できるようになる。また国内での魔法学校は3つしかないのでかなり競争が激しい、、、、はずなのだが魔法を使える人物はかなり限られている。また魔法が使用できても実用から程遠い場合もあり実際はそこまで競争が激しくないのであった。
次に騎士学、剣術から体術まで多くの格闘術や知識を詰め込まれる。騎士学には知識はいらないと思うかもしれないが軍事計画のための歴史学や予算運用の算術など、多くの要素が詰まっているのが実態だ。
ちなみにかなり競争は激しい。
経済学は最も競争の少ない専攻だ。
元々の実家が裕福でないと経済学は活かせない上に経済学という学問も未発達であり時折一発逆転を狙った平民が大きな成果を挙げていると聞く。
変人集団、美工学は説明する必要もないだろう。毎日のように工学室を爆破しその度に学校は立て直しを行なっているが彼らは莫大な利益を埋め出すため何も言えないと言うのは有名な話だからだ。
そして最後に私が転科前に所属していた文化学。貴族出身の美男美女が多く在籍するこの学科は他の学科に比べかなり競争が激しい。もちろん勉学ではなく色恋沙汰だが。
二年前の入学式、期待に溢れた胸に刻まれた彼の横顔を忘れたりことはない。
さらりと揺れる特有の赤紫の髪にパッチリとした目、誰とでも気軽に話してくれるにも関わらず出身は大貴族。
そうベルギルテ・ランドレム・サミト様だ。
サミト様に憧れるものも多かった中、がむしゃらに頑張った私は一年後にはサミト様率いるベルギルテ派閥に入ることができた。
そこが私の幸せの絶頂であった。
今でも忘れることのない、私のいない教室での会話。職員室へと向かい途中、廊下でうっかり聞いてしまったのだ。
「サミト様、なぜあんな平民の小娘なんか派閥に入れるんですの?」
ベルギルテ派閥で二番目に発言権を得ているウルデ・リュセリー・ベル様特有の甲高い声が私を罵倒する。
あまりのいいように固まっていると
「平民の小娘、、、?」
心の底からわからないというように返事をするサミト様。
私を高く評価しているゆえかと淡い期待を抱き、そのような見下した見方をするベル様をおしかりになられるかと思った。しかしその直後、私は絶望に叩き込まれた。
「あぁ、あの娘か。興味もないし第一平民はいないと同じようなものだろう。」
認識すらされない存在。
それが平民出身ということ。
その日から、私は何に期待したらいいかなんのために自分を磨くのかわからなくなってしまった。
日常こそ今までと変わらなかったが、改めて周りにいる心許せる友人の少なさに絶望し、派閥内での身内争いに辟易した。
そんな来年への不安と絶望が募る3月を思い出す。
「これで本日の講義を終了する。課題として各自古代の王国もしくは古代の帝国を一つ選びそれぞれの簡単な歴史について指定羊皮紙3枚以上でまとめてきなさい。あとソラ嬢は私の研究室に来なさい。」
入学からずっと私を可愛がっている歴史学の先生が私を呼ぶことは少なくない。
多くは課題の確認や授業の片付けの手伝いだ。
やって特に誰かが疑問や質問、理由を聞くでもなく授業は終わった。
多くの学生が教室から出ていくのを見計らって先生に近づく。
「レプス先生」
「おぉソラ嬢、そこの魔術具をいつも通り持ってきてくれ。残りはわしが自分で運べる。」
私の方に振り向きながら、クルステ・アルバルト・レプス先生は杖を振って教科書から資料やらを浮かべていった。
名前が三個以上の単語で構成されていることからも分かるがレプス先生は貴族で、魔法を使うことができる。
なのに平民蔑視をしないため授業は面白いのに貴族学生からの人気は低い。
先生に頼まれた通り教科書ぐらいの重さの魔術具を抱えて共に廊下を歩く。
この魔術具は百科事典のようなもので先生の思い通りの資料を取り出せるらしい。
「ソラ嬢、最近なんかあったかね。」
空中に浮かせた羊皮紙の採点をしながら私に尋ねるレプス先生。どうしたら移動しながら空中に紙を固定するなんていう器用なことができるのだろうか。
「ちょっと最近悩んでまして、文化学でやりたいことがあまりないというか。」
すこし濁しながらもモチベが落ちていることだけを簡潔に伝える。なんら対策はできないが人に言うことで自分の見えない利点があるかもしれない。
レプス先生は採点をやめ、私の方を見た。
「ふむ、あまり聞かない方がいい話のようだ。来年に不安があるみたいだが、どうしたものだろうか」
硬い表情の私を見て何かを察しているらしい。考えながら歩いてると柱にぶつかりますよおじいちゃん先生。
そうこうしていると研究室についた。
講義室からはあまり遠くないのでそこまで疲れることはない。まだ学科専攻を選んでいないので中央棟で講義を受けれるのはかなり嬉しいことだ。
「魔術具は机に置いておいていいぞ、そこの棚にクッキーがあるから奥の部屋の助手達をたたきだしてお茶にしよう。この後の講義はないじゃろう?」
レプス先生の研究室の奥には学生が研究する用に文化歴史専攻科棟とも繋がっている歴史学研究室がある。当然歴史学専攻科の人しかいないはずだがレプス先生を慕う人物はよくそこを占拠している。
「あら、ソラじゃないの。おやつの時間ね」
私と最も仲の良い先輩であるアルデバラン・アルデ・グレイアス先輩もそのうちの1人だ。整えれば輝く紫色の長い髪、メガネの奥に光る理知的な杜若色の瞳。
本来なら魔法工学魔術専攻科にいなければいけないのだが魔術専攻科の教授は良くも悪くも結果やレポートが全てなのでそこをしっかりしていれば特に何も言われないらしい。
「イアス先輩、わたしのことお菓子の化身かなんかだと思ってませんか?」
ジト目で睨むもグレイアス先輩は学園有数の大貴族の1人、貴族らしい笑みで誤魔化されてしまった。
ちなみに貴族の令嬢は名前を省略して呼んでもらうことに親しみを覚えるらしい。
グレイアス先輩の一言で即座に研究室に出てきた先輩学生達とお茶を飲む。
もちろん歴史学の権威であるレプス先生への差し入れだが先生曰く「いい歳こいて全て自分で消費しようとすると口の中が甘ったるくなって講義に支障が出る」とのこと。
そんなこんなで私が来るといつもお茶会が始まっている。
「みんなは転科したことあったかな?」
紅茶片手に魔術具で何かをしながらレプス先生は尋ねる。私は転科などという制度を初めて聞いたのだが、、、
「あら、ダブレスは文化古語専攻科からの転科じゃなかったかしら。」
「よく覚えてるね」
これまた顔が整っているのに苦々しい顔をしているせいで台無しになっているアルデバラン・ガイド・ダブレス先輩だ。
なぜこうも貴族は全員顔がいいのか気になったのでグレイアス先輩に聞いてみたら「顔のいい者を召し上げたりして大きくなってきた貴族なのだからその子供の顔がいいのは当然よ」と言われてしまった。最初の貴族のほとんどはは面食いだったらしい。
「諦めざるを得なかったんだよ、僕は貴族にしては魔法への適性が薄いから古代星魔文字などの解読は一切できなかったんだ。」
自分のプライドとたたかいながら喋っているものレプス先生は自分で聞いたのに興味がないようだ。
「なるほど、転科は転科先の優秀学生3名以上と担当教授の同意が必要か。優秀学生となると限られるなぁ、、、教授はヒュパティアなら認めてくれるだろうが優秀学生となると限られるなぁ。」
「ヒュパティア教授?あぁ、なるほど?魔法工学の優秀学生が必要ならここにいますけど一体誰を推薦するつもりなんでしょう?」
なぜかグレイアス先輩は理解していたが私はおいていかれている。
どうやら誰か転科するらしい。
確かにいまの私なら転科という選択肢はありだと思う、考えておこうかな。
「ソラ嬢はこのまま文化学を学ぶことに迷いを感じているようでな、論理的だし魔法の素質もあるので魔法工学に推薦すればまた新たな選択肢を選べるのではないかと思ったのじゃ、まだ一学年なので十分追いつける。」
「、、、へ?」
てっきり別のどこか知らない人だと思っていた話の主人公は私だったらしい、確かにこのまま文化学科にいたくないとは思っていたが、そんなに私のためにしてくれるとは思わなかった。
「あぁ、それならばいいと思います。最近元気なかったのは僕も思ってましたがそんな理由があったのですね。あとの2人はライムントとレフェールにでも頼めばいいのではないですか?まぁ、本人から説得していただいたほうがいいでしょうが」
ポット・セルト先輩はボソッとそう呟く、わかりにくい人だ。
ライムントなら聞いたことがある。
魔法工学科を唯一の派閥を率いるアイゼンファルド・ファルド・ライムントのはずだ。
アイゼンファルド家は、五年前に教科書に載るような大規模内乱によってかなりの大混乱を引き起こしたとされている。
まぁ、平民には関係なかったが顔馴染みの商人のおじさんがそう言っていた。
「あ、あの」
「レフェールはともかくライムントと連絡がつくんか?噂によると居場所を知るものはいないらしいが。」
レプス先生はそう尋ねながらクッキーに手を出す、言葉を遮られた私もクッキーに手を出す。これ高いやつな気がするけどばくばく食ってやった、ちょっと後悔した。
「ライムントが個人として噂のセレナ嬢の後ろ盾を明言してるのはご存知でしょ?彼女ならば居場所を知っているだろうし、第一セレナ嬢は一応ソラと同学年だし気が合うと思うわ。」
「セレナ嬢ってたしか私と同じ平民のフラント・セレナちゃんのことですか?」
ウレトン学校の生徒は四割が貴族で六割が平民だ。よって貴族の名が売れることがあっても平民で有名な人物はなかなか少ない、平民は派閥の重要人物になることが少ないことも関係している。
しかし、セレナちゃんは多くの男子学生のお誘いを受けており文化学でも有名だった。お誘いってのはまぁ、色恋沙汰だよね。
「もちろんよ。まぁなぜライムントが後ろ盾になっているかは私も知らないのだけども」
頷きながらもさっきからお菓子をぱくつく私私の口にクッキーをアーンしてくるグレイアス先輩。
うん、美味しい。
「教授もグレイアス様も本人の同意はどこに置いてきたのですか、先ほどから困惑が見られますよ」
またもや、セルト先輩がボソッと呟いた。
「あ、そうじゃったな。自己完結する癖のせいで本人に聞き忘れた」
「ソラ、本当にいまの環境が良くないならば転科するべきだと私は思うわ、研究室には今まで通りくればいいなし特にやりたいこともないのでしょう?」
2人はそういうとお茶に参加している全員が私の方を見る。
確かにいまの環境は良いとは言えない、モチベーションも保てていないわけだし第一早くあのベル様から離れたい。
冷めてしまったサミト様への恋心も向き合わずにしまい込んでしまいたかった。
「私、転科してみたいです」
その言葉はいまの私を形作っている。
次回は12/18の予定です!!
できれば二本描きたい!!