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After [World]アフターワールド  作者: 白湯
落としものは川の向こうに
8/21

初めてお仕事

ふぅ、ついた。たぶんここだと思うけど入ってみるしかないか


「すみませーん。ギルドの依頼できたレンですけど誰かいますかー」


「たっくよぉーうちの客はどいつもこいつも大声出さねえと人が呼べねぇのか。普通に呼んでくれや」


だって誰も店の中にいないんだもの。店番が1人ぐらいは必要なんじゃないかな。


「さっきのお前さんが仮登録の依頼だな。まぁ言いたいことは色々あるが細かいことには口だしゃしねえよ。何か希望の仕事はあるかい」


「僕が決めるんですか。えーっと力仕事でお願いします。あとは魔石に関わる仕事をやってみたいです」


「なんだ魔石に興味でもあんのか」


「フィーリアさんに魔石は魔力の練習に使えるって聞いたので」


「へぇあいつが、そりゃあ随分と親切だな。いいぜ俺は元々魔石とか宝石の加工が専門だからな。そんぐらいの仕事は山ほどあるわ」


「だから店の名前がクリスティアなんですね。でも皆さんここのこと鍛冶屋さんって呼んでましたよ」


「それは俺が鍛冶の仕事もしてるからだな。問題があるとすればそっちの仕事のほうが多いことだ」


「鍛冶師の才能があったんですね」

やりたいことと実祭にある能力が違ったのかな。そういう人確かにいるけどね僕としては悩みだったとしても才能があるだけうらやましいよ。


「ちょっと違うな。確かに魔力は武器の鍛造と相性が良かったし魔法操作もそこら辺の鍛冶師には負けるつもりはねぇけどよ。その技術は加工とか細工にも応用できるしそもそもスキルだって削るとか磨くとか細工のスキルばっか身に着けてるからな。宝石とか防具の特殊加工とか装飾品のほうが得意なぐらいだ」


「じゃあどうして鍛冶の仕事が多いんですか実力もあるのに」


「人気がねぇんだよ単純に、武器と比べると地味なもんが多いからな魔法の補助とか耐性とかなんだが。ここら辺に対策を立てるような環境も相手もいないしな。」


「それだったらここで商売しないほうがいいんじゃないですか」

今までの話を聞くとここだいぶ平和だから必要とされてないけどもっと過酷な環境だったり状態異常を使う魔物が多いところだったら売れるんじゃないかな。ゲームでも始まりの町で状態異常耐性の装備とか買ってもあんまり必要ないもんね。


「いや、ここには研究のためにいるからそこまで深刻な問題じゃねぇよ。ここみたいな純魔力のたまり場は珍しいんだ。晶脈がねぇのはちと残念だが研究材料には困んねぇよだからあんま気にすんな。でもありがとな長々と愚痴を聞いてくれて少し楽になったわ」


「大丈夫です。面白い話でしたから」


「それじゃあ仕事の話に戻るがこれを道具屋の店主に持っていってくれ」「ドサッ」


重いものをカウンターに置く音が響いた。三つの鞄が積み上げられ響く音は中に入った物の重量を察するには十分だった。


「この鞄の中身ってもしかして」


「そうだ魔石だ。とはいってもこれは刻陣石と呼ばれるものだ。魔石を加工して作られるもので魔法使いがこの中に魔法を込めると誰でも魔法が使える代物だ。使い捨てだけどな。でも扱いには気をつけろよ。どんな魔法が入ってたとしても割れると中の魔力が暴走して大変なことになるからな。まぁ地面に叩きつでもしない限り割れねぇけどな」


これを僕が運ぶの。この体の身体能力が知りたいから軽い気持ちで力仕事頼んだだけなのにどうしよう。やってみるしかないよね。


「よいしょっと」


重い鞄を左右の肩にぶら下げて残っているリュックサックも背負ってみた。すると案外しんどくないことに気づいた。すごく重いことは感じる、歩くのが精一杯だしこの体でも限界ギリギリだということが理解できる。だが、どうやら僕は疲れを感じないらしい。例えるとするならゲームでどれだけのライフやスタミナが減ったとしてもキャラのパフォーマンスが落ちないように僕の体も何も感じないわけではないが行動に支障が出ない。


「おいおい、それ全部運ぶつもりかよ。やめときなお前さんが一度に運べる重さじゃねぇぞ」


「だい、じょうぶです。やらせてください」


「そんなに必死になるならいいんだけどよ。ぜってぇ無理だけはすんな」


「はい。行ってきますね」


「ちょっと待てお前さんどこに向かうつもりだ。まだ届ける場所を説明してないんだが」


「あっすみません。これどこに届ければいいですか」


「道具屋だ。ギルドの近くにあるからすぐにわかるだろう。目印は双葉に実がついた絵の看板で店名はハスリーフだ。わかんなかったらギルドに聞いたらすぐだぜ。ああそうだグリフ・バンドルからの届け物って言えば伝わるから忘れんなよ」


「ありがとうございますグリフさん。今度こそ行ってきますね」


重い荷物を背負って一歩一歩踏みしめるように進んでいく。人生をもちろん前世も通して初めての仕事、でもこの体は疲れを感じない。いつもと全然違う感覚だ。汗をかかず息も乱れない。長く歩いたとしても気だるさや吐き気も足に疲れがたまることもない。まさに夢のようだった。いまならみんなと同じように生きることができるだろう。今までできなかったこともできる、いやもしかしたらゲームの動きも再現できるかもしれない。これからワクワクすることがいっぱいだ。なのに、、、どうしてこんなに虚しいんだろう。


長い時間がかかったがようやく店の前まで来ることができた。



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