サクラ・レン 14歳
受付の人についていって廊下の一番奥まで歩き部屋に着いた。
「さぁつきましたよ。どうぞ椅子にお掛け下さい」
「ありがとうございます」
「ではまず依頼について説明しますね。依頼を出す際には「ちょっと待ってください僕は今日冒険者になるためにきたんです」
「えっそうなんですか。すみません早とちりしてしまいました。まずは年齢と名前を教えてくれますか。」
「はい。サクラレン14歳です。よろしくお願いします」
「14歳ですか!成人間近には見えな、ハッ失礼しました申し訳ありません。」
「慣れてるんで大丈夫ですよ」
慣れてるけどここまでの反応は初めてかも、もしかしたら成長の仕方が違うのかな。
「気を取り直して、冒険者になるにはそこまで難しい条件はありません。ですが武器の携帯義務がありますので、何かしらの武器はお持ちですか」
「えーっと、これじゃさすがにダメですよね」
そう言って持っていた木刀2本を渡すと
「そうですねぇ、これではさすがに認められないですね。その場合は冒険者に仮登録する形になってギルドが出す簡単な依頼を受けてもらってそこで信用できるかどうかを判断します。信用を得ることができたら武器を貸してもらえることになります。手っ取り早く新しい武器を買うという手段もありますよ。どうしますか?」
「・・・いっ、いえ仮登録でお願いします。」
「はい。わかりました仮登録の準備をしますね」
そういうと受付の人はベルを取り出してゆっくりと回すように振った。しかしベルからは一切、音が鳴るのは聞こえなかった。
「準備には時間がかかりますのでその間に何か聞きたいことはありますか」
「今のベルは何をしたんですか」
「これはクラックベルというちょっとした魔道具です。これを慣らすと連結したもう片方のベルが鳴る仕掛けになっています。こっちのベルはならないので返信はできないんですが、それでも振り方を変えたら様々な合図が出せるんですよ。でも仮登録は久しぶりだから振り方を忘れかけてましたよ。」
「そんなものがあるんですね。遠くから指示が出せるんならとっても便利ですね」
電話までとはいかないけどそんなものがあるんだ。ていうかそこまでできるんなら電話も探したらありそうだよな。ほかに聞きたいこと、あった
「魔層と深層について詳しく教えて欲しいです。」
「魔層と深層はどちらも魔力の溜まり場であると考えられています。そこでは強い生物が生まれやすいので私たちにとっては危険があると同時に多くの得るものがある場所という認識ですね。
そしてこの二つの大きな違いは魔物です。多くの人が魔物は動物より強いと考えています。その理由が魔物は進化していくという点です。魔層の中は蠱毒のようなもの絶えず魔物同士が争い合い生き残ったものが新しい存在に変化する。それをほっといておくと魔層が氾濫を起こしてしまいます。魔力が膨れ上がり魔物は外に溢れ出して魔層自体が拡大し変化するのです。そうなると甚大な被害が出てしまうでしょう。それを防ぐために王国の騎士団が定期的に大規模な魔物退治をしたり常時冒険者が魔物を狩ったりすることで全体数を減らし、氾濫を止めています」
魔層って怖い。魔物同士で争い合って蠱毒してるとかどんな生態してたらそんなことになるんだよ。
「深層はどうなってるんですか」
「深層は入らなければ被害に遭うことも少ないですね。むしろ私たちの益になることの方が多いです。深層は独自の魔力で形成されており、理由は分かっておりませんが魔物はそこに入ろうとしません。深層では多数の動物がいますがその動物達は魔物とは違い成長したり強くなったりはしても存在そのものが進化するなどの変化は起こりません。生物が深層独自の環境に適応するために原種から姿や生態を変化させていたという事例がありますがそれも魔物の進化とは全くの別物だそうです。深層では独自の魔力が集まるため新しい魔力が生まれたり、地形が変わったりするなど異質な環境になっていることもあります。
例を挙げるとネラリス帝国のアニュラス霊山なんかは有名ですね。聞いたところによると山が浮いているらしいですよ。この町の森もルナトラ霊園という深層ですけど純魔力のたまり場で見た目は普通の森だからみんな忘れているんですよね」
山が浮くのと比べると確かに普通の森だなあそこ。でもこの町の深層による恩恵は教えてもらったな。
「でもこの町は深層のおかげで産業が拡大して大きくなったって聞きましたよ。土壌が豊かで王都にまで売り出してる一大産業だって」
「よくご存じですね。知識を覚えていくのは偉いことです。よしよし。」
なんか子ども扱いされてる気がする。前世と扱いが全く同じ。どこ行っても変わんないなほんとに!
「あっ、そういえば深獣ってどういう生き物なんですか」
「えーと、よろしければ深獣について教えてくれた人が誰か聞いてもよろしいですか?」
いいのかなぁ。でもギルドの人たちに隠し通せるとは思えないんだよね。目立たないようにしてもらえばいいかのかもしれない。
「森で助けてもらったときにフィーリアさんから教えてもらいました」
「やっぱり牙狩りの皆さんでしたか。運がよかったですね。あそこは皆さんいい人ですから困ったら相談してもらえばいいですよ。もちろん私たちも困ったときにはある程度融通しますが。さて、深獣についてですが。実は深獣についてはほとんど何もわかっていません。そもそも実在の確証もままならない状態です。目撃情報は何件かあるんですが倒したとか捕えたという報告はありません。錬金術師や魔法使いが必死に研究をしていますがあまりうまくいっていない様子です。深獣にはいろいろな説があり動物の存在進化であるといったものや深層の魔力の化身だというものまぁ何もわかっていません。この町で深獣を探しているのはあの人たちだけですから予想ぐらいはできていたんですよ。」
あの人たち牙狩りていうバーティ名なのか
「そうなんですね。あと精霊ってどこで会えますかね契約してみたいんですが」
契約の仕方って教えてもらえるのかな。契約出来たら相棒のことも隠さなくてよくなるんだけど。
「ふふっ、憧れますよね精霊は。精霊は深層や魔層で生まれるとされています。ほかの場所でも確認はされているのですが、不安定で生まれたとしても自我はなくすぐに消えてしまうそうです。精霊は生まれた場所の魔力に影響を受けてしまいます。そのせいか魔層で生まれた精霊は凶暴になって契約するのが難しいらしいです。なのでおすすめするとしたら深層ですね。深層生まれの精霊は相性がよければ契約しなくても懐いてくるらしくその場合は契約に魔法や儀式などスキルも必要ないそうです。聞いた話だと契約したいってお願いしたら精霊が実際に教えてくれたとか。そして契約には依代が必要です。大抵は自分の愛着があるものや身につけているものなど冒険者だったら武器を依代にするのが多いですね。ですが精霊との親和性が高かったり他にも精霊の自我が強かったり力が大きいと契約者本人の体を依代に繋ぎ合わせる形になります」
「ありがとうございます!頑張ってみますね」
やった!これで相棒のこと隠さなくてもよくなる。でもちゃんと教えてくれるかなぁ。こいつ僕のゆうこと聞かない時あるし、心配だなー
「コンコン、 グリフさんに依頼してきました。準備はできてるそうです」
扉の奥からノックする音と声が聞こえた。その後部屋に入ってきて受付の人に何かを渡したようだった。
「ご苦労様です。戻っていいですよ。レンさんには今から言う場所に向かって仕事をしてもらいます。第二地区の外門前にあるクリスティアという名前のお店です。この町に入る時通った二つ目の門の手前と言った方がわかりやすいかもしれません。クリスタルの中心に円が描かれた看板が目印の鍛冶屋さんです。頑張ってくださいね」
そう言いながら差し出してきたものを受け取ると紐に木の板がぶら下がっているものだった。
「首から掛けてくださいそれがあなたの証になります」
「ありがとうございました。頑張ります」