遅かった自己紹介
「おーいみんな森の終わりが見えたぞ」
先頭の人が言った通り森を抜けることができて遠くに町のようなものも見える。そして森の抜けた先で待っていた人達と合流すると
「ふー、無事に森を抜けれたなぁ」
「まぁいつもより安全な道を選んだからな余裕だろ」
「お二人は大丈夫でしたか」
「はい!いろんなことを聞けて楽しかったです」
「本当か!フィリが仲良くできてたのか!」
「うるさい。わたしをなんだと思ってるの。」
「まぁフィリさんですからねぇ」
「さすがに擁護はできんな」
「あっ、皆さんの名前を聞いてませんでした」
「そうだった。私の名前はエルフィン・フィーリアよろしく。」
「エルフィンさんですね。さっきはいろいろとありがとうございました」
「むー。」
「えーと、フィリさんはあまり家名で呼ばれるのが好きじゃないんですよ」
「そうなんですか。すみません」
「おれたちみたいにフィリって呼んだらどうだ。仲良くなったみたいだし。で、おれはコルディス・グラナだ。おれも坊主には期待してるぞー、森の中で静かに歩くの結構うまかったからな」
「いえ、森の中で遊んでたことがあるだけで全然大したことないですよ」
言えるわけないよ。一時期本格の狩りができるゲームにハマって練習しましたって、でも本職の人に言われるなんて案外、本格派ゲームも役に立つもんだ。でもアレ本格とは名ばかりの蹂躙されゲーなんだよなぁ。うっ、動物を追ってたら超大型の巨獣に踏み潰されたトラウマが
「はいはいみなさんが期待してのは十分わかりましたよ。そして私の名前はシフォンス・オリーブです。あなたのこれからに女神様のご加護あるよう祈っておきますね」
女神様か。ちょっと詳しく聞いて見たいけどこの世界の常識とだったらまずいかも。
「みんながそんなに期待してんならよぉ俺たちが冒険者ギルドまで案内してやるよ!後輩になるかもしれねぇんだし。じゃあさっそく行くとするか!」
「アル。名前。」
「あぁすまん忘れてたわ。気を取り直して俺の名前はディン・アルマンだ。これからよろしくな後輩!」
僕が冒険者になるの決定したんですね。まぁ元からなるつもりだったから別にいいんですけど。
「助けてもらったのに名乗るのが遅れてすみません。僕の名前はサクラ・レンです。僕たち2人を助けてもらって本当にありがとうございました」
「キューーゥ」
相棒もぺこりと僕を真似て頭を下げたようだ。
「別にいいよ。面白いものも見せてもらえし。」
「そうでだぜ。精霊なんて滅多に見れるもんじゃないからな」
「うーんわたしたちは直接助けてはないですから気まずいですね」
「別にいいじゃねぇか。また困った時に助ければいいだろう」
「これ以上問題が起きるのは嫌なんですけど。それにお二人にはここまで守ってきてくれたことでちゃんと感謝してるんですよ」
「でもその子のことは隠しておいたほうがいい。契約もしてない精霊なんて問題に巻き込まれるのは目に見えてるよ。」
「そうですよね。悪いけど相棒には服の中に入ってもらうことにしますね」
「キューーン!」
そう言うと相棒は僕の首元に飛びかかり服の中に潜り込もうとする。
「ちょちょっと!今は入ろうとしなくていいよ!」
相棒を捕まえようと服に手を突っ込んでもスルスルと動き回って避けられ続けている。
「キュッキュウー」
「だから服の中で暴れないでって、あはははっくすぐったいって、ちょっとっ、、ホントに、、、待ってって、、、やめろー!」
「キュッ!」
あぁやっと捕まえれたよぉ。
「「「「アハハハハッ」」」」
「ずっと笑ってたんですか。見てないで助けて欲しかったです。」
「ふふっすみません。お二人の姿があまりにも仲睦まじいものでしたから」
「私も。君たちならいいコンビになると思う。」
「まぁ退屈には困らない生活になりそうだな」
「こりゃぁ早いとこ契約の方法を見つけてあげたほうがいいな。あーおもしれぇ」
いろんなことがたくさんあったけどようやく町に着いた。まず目につくことは町が壁に覆われていることだ。でも壁が僕の身長の倍程度しかなくてびっくりした。城壁ってこんなものなのかなぁ想像よりだいぶ小さいんだけど。
「キュウ?」
「コラっ勝手に服から首を出さないで」
あぁもうこれからが心配になるよ。
「町の壁ってだいたいこんな感じなんですか?」
「いや、この町は王国の中でも平和だからな」
「はぁ。ここはアグレス王国辺境の町レスト。
地理的に深層に囲まれていて魔物の危険性も少ないから平和ボケしてる。」
「一応あってますけど、ちょっと主観入ってませんか?あの壁は元々この町の本来の壁ではないんですよ。中心部にちゃんとした壁がありますよ」
「ちゃんとした壁があるのにどうして増やしたんですか?」
「そうですね、普通なら当初の壁より町を大きくすることはあまりしません。ですが深層に囲まれたこの町の土壌が余りにも豊かだったので農地を増やし町を拡大することになりました。
今ではこの町の立派な一大産業で他の町は当然として王都にまで流通してるぐらいです。その時錬金術師達が1番効率良くてなおかつ将来的に改変する可能性を踏まえてあの形になったそうですよ。
一応この町は敵国に攻められる時は他の町を通らないといけないし守ってもらいやすい場所に位置してるので大丈夫だと思うんですけど。まぁ平和ボケしてるって言われても否定はできないかもしれないですね」
「そうなんですね。勉強になりました」
「いえいえ、検問までの暇つぶしにちょうどよかったですよ」
「知識を増やそうとすることはいいこと。2人も見習ったらいい。」
「あんまり気にしたことがなかったな!」
「俺もそういう勉強はこりごりなんだよ」
「はぁ。そろそろわたしたちの番ですね」
門の前までくると門番の人が話しかけてきた。
「アルマンじゃないか、今日はずいぶんと早い帰りだな何か問題でもあったのか」
「今日は途中で迷子を助けてな、町まで送ることにしたんだ」
すると門番の人の視線がこっちに向く
「よかったなお嬢ちゃんこの人達は面倒見がいいし、この町の兵士も神殿の人達も優しいからきっと助けてくれるさ。これから頑張りな」
「ありがとうございます。でも僕は男なんです」
結構間違えられること多いから別にいいんだけどね。こっちでもかあんま変わらないのか。
「えっ、悪かったな少年」
「あんたはいつも肝心なとこでカッコがつかねぇな」
「うるせえよ、後がつっかえてんだ。さっさと行きな」
無事に検問が終わって僕たちは冒険者ギルドに向かって進んでいく。
「さっきの門番さんいい人でしたね」
「そうだね。それとギルドの前に鍛冶屋に寄るから一緒にきて。」
「はい。別にいいですよ」
そしてまた別の門を通った後に進んで到着した場所はクリスタルのような絵の看板がぶら下がったお店だった。
「おーい、おやっさんいねぇのか」
アルマンがドアを開けて店主を呼ぶ。
「そんな大声出さなくても聞こえるっつーの。で、今日はなんのようだ」
店の奥から出てきたのはハンマーを片手に持っている大柄な男性だった。
「今日はこれを売りに来た。」
「コイツは宝晶兎か。また面倒なもん狩ってきたな、今はそいつの依頼を出してなかったと思うんだが」
「今日はこっちの坊主がこいつらに囲まれてるのを助けてな。そん時倒したやつを持ってきたってわけだ」
「宝晶兎に襲われるなんて運がいいのかわるいのかわかんねぇやつだな。普通なら逃げまくるから探すのが大変なぐらいなんだが」
「ははは。そうなんですね、、」
確かにウサギの攻撃力はスピードのわりに低かったし、あの機動力で逃げられたらめんどくさいだろうな。
「だからこの宝晶兎を全部換金してこの子に渡して。」
なんかフィーリアさんの指がこっちに向いてる気がするけど気のせいだよね。
「無理です!もらえませんよ。助けてもらったのにお金なんて」
「わたしたちは倒してないので本人に任せますけどフィリさんは譲らないと思いますよ」
「俺も別にいいと思うぜ、あの兎は探すのが1番難しいからあんだけ集めたのは坊主の手柄だ。それに俺は動きを止めただけだしな」
「これで2対1だね。それにそもそも君はお金持ってるの?」
「うぐっ、それは持ってないですけど」
「じゃあもらっといたほうがいい。もともと君の手柄のようなもの。それに絶対に君の役に立つはずだよ。」
「うーん。わかりましたよ。ありがたくもらっておくことにします。でもこの恩は必ず返しますからね!」
「そう。別に返そうとしなくていいんだけど。頑張ってね。じゃあ査定をお願い」
「まぁ気になるところはいろいろあるが大丈夫だろう。いつも通り10匹で5000メニーってとこだろうよ入れる袋はおまけしといてやる」
メニ―?たぶんお金の単位なんだろうけど安いのか高いのかいまいちよくわんないな
「はい、ありがとうございます」
若干の重みを感じる袋を手に取って店を出ようとすると
「フィーリア、お前さんに頼まれたもんが出来上がっとるぞ。」
「わかった。みんなは先に行ってて。」
「わかりました先に行って待ってますね」
ガチャッ。そうして僕たちはフィーリアさんを置いて先にギルトに向かうことにした。
「それにしてもよぉ、なんでこんな変なもの頼んだんだ?魔法使いのお前さんが刻陣石なんてめったに使わないだろ。それに属性魔石ならまだしも純魔石で作ってくれなんて絶対普通に使ったほうが便利だろ」
「いいの。ちょっとした実験。やってみたいことがあるの。」
「そういえば、お前さん宝晶兎になんか変な魔法でも使ったか?」
「いつもと同じ魔法だけど。なにかあったの。」
「いや、別にいつも通り結晶には傷がなかったから金額をいつも通りにしたんだが。宝晶兎の体に所々打撲の跡があったのが気になってな。もしかしたら新しい魔法でも使ったのかと思っただけだ」
「ふーん。私がつけた傷以外にも傷の跡か。そういうこと。」
―記憶のカケラ―
2040年4月19日
「彗さん蓮君が呼んでますよ」
「えっまた?せっかく私が仕事のない日なのになー」
そう気だるそうに返すのは、桜 彗さん。椅子に座っていてもわかるほどの手足の長さとスタイルの良さ、考えるのは失礼だけど体格的には蓮くんに全く似てない。
でも二人とも艶やかな茶髪とクリッとした目がそっくりで微笑ましんだよね。まぁ悪戯する時の無邪気な子供っぽい目つきもそっくりなんだけど。
「なんだか疲れた顔してるね、どうしたの」
ギギギっと椅子を傾けながらこちらを覗き込んでくる
「いえ、ただもう少し大人になってくれたらなぁ。って思っただけです。それと椅子曲げる気ですか普通に座ってください」
「まだ蓮は小学生だよ。それにその方が可愛いし」
はぁ、どっちもやめる気はないと。
「あなたのことですよ。蓮君にカッコつけようとするのはいいですけどあんまり背を伸ばしすぎないでくださいね。さっきのも笑顔が漏れてバレバレでした」
「そんなじゃないし。もういいよ!蓮のとこ行くから」
そう言って椅子から勢いよく立ち上がって部屋を飛び出した。
「あっ蓮君ちょっとグズってたから気をつけた方がいいですよ」
「げっ、それを先に言ってよ」
急いで部屋に向かうとベットにちょこんと座っている蓮は今にも泣きそうで、そばにいる看護師さんが大変そうだ。
「遅い、、、」
むすっとしてるの可愛い!じゃなくて
「ごめんね。ちょっと仕事が立て込んでて」
できれば嘘はつきたくないけどこう言った蓮は少し落ち着いてくれる。とにかく会話を続かせて機嫌を直さないと
「それで、何があったの」
「この間ね、珍しく体調が良かったからね。公園に行ったの。僕頑張ったんだよ。麦わら帽子もかぶったし、でも」
あっもう泣きそう。無理矢理にでも話しを逸らそう。成功率60パーセント、えい
「よしよし。えらいじゃん一人で頑張って。ちゃんと体も動かさないとダメだからね。」
「えへへ。って違うよー!撫でても誤魔化されないから、僕公園で女の子とか可愛いとかばっかり言われたんだよ。どういうことなの!僕も男なのに、なんでこんなにみんなと違うの!」
うっダメだった。でも怒ってる方がまだ泣いちゃうよりマシだからよかったかも。
「うーでもどうやって説明したら、ホルモンバランスを調整してるっていうか成長を阻害してると言いますか」
「わかんないよー!」
「そっそうだよね。でも安心して私にとって蓮は蓮に変わりないし、それにいつか絶対かっこいい男になってるよ。なんてったって私の弟なんだもの。約束する」
蓮に言い聞かせるように語りかけて、ギュッと力強くそして優しくハグをした。
「ほんと?約束だからね」
「うん。それと蓮が楽しみにしてた新しいゲームがあるから大人しく待っててよ」
「わかったよ。姉ちゃん」
嘘みたいに機嫌が良くなった蓮を一人置いて部屋を出る。
「あのー今更言うのもなんですけど私がいてもよかったんでしょうか」
そういうのは最初に蓮の面倒を見ていた看護師の人だ。
「別にいいわよ。私は気にしないし」
「でも、あんな約束しちゃってよかったんですか?調整をやめちゃったら
「いいわけないでしょ。あの子はかっこいい男に育てるけど成長期も第二次性徴期も来させるわけにいかないの。あの子の命を守るためなんだから」