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After [World]アフターワールド  作者: 白湯
落としものは川の向こうに
19/21

過去の因縁に溺れて 五話


「うん。よくがんばったね。」


兎に向かって手を合わせているとフィリさんが肩に手を置いて励ましてくれた。


「ありがとうございます。フィリさん」


「むー、師匠って呼んで」


やっぱりそれ本気で言ってたんですね。


「こらこら、無理強いするのはあまり良くないと思いますよ」


「そんなこと気にするよりこの兎たちをグリフのおっさんに持っていくほうが先だろ」


「それもそうだな。じゃあ一旦帰るか」


無事にテストのようなものが終わり帰路につく。自分の迷いも断ち切れて成長できたような気がする。でもまだ始まったばかりなんだこれを何回も繰り返さないといけない。


ゲームの時と同じように考えた僕の計画。それは自分の戦力を最短で上げるためにレベリングだ。素材やお金を集めて、そして自分の装備を整えていく。ゲームだったら普通でいつもやってること。


さらに言えばこの普通が今の世界でも通用する節がある。この世界の価値観で言えば僕は子供だ。まぁ前でもそうだったていうか実際そうなんだけど、問題は僕に向ける目だ。フィリさんとグリフさんあの二人の目はまるで聞き分けの悪い子供を諭すような優しいものだった。


つまり僕の価値観はここでは異常とまではいかなくとも珍しい部類なんだろう。さしずめ箱入り娘、いや男だし息子かな。実際病院から滅多に出れないし箱詰め状態のようなもんだったけど。


あっ、そういえば萩にいと楓ねえもよくおんなじ目をしてたなぁ。

自分が記憶を忘れていても変わらず人を困らせていることに少し笑ってしまった。


「何かおかしいことでもあったの。」


「ちょっと自分の不甲斐なさに笑ってしまって」


「そう。」


後ろに兎の山を引き連れてたった二人で会話しながら町に向かう。昨日もやったはずのこと僕にはそれがなぜか遠い過去のように感じた。



「おいおい!こりゃまたえらい数持ってきたな。昨日の倍はあるじゃねえか。で、これをどうしてほしいんだ」


「それ全部刻陣石に加工して。」


「またかよ。ていうかそんなに集めて何に使うつもりだ」


「僕のせいだと思います。刻陣石を集めるって言い出したのは僕ですから。でも僕が深獣狩りに参加するためには必要なんです」


「その理由も気になるが、今は置いておくとして。それならなおさらなんでだ。属性魔石の方が威力が高いしそれに安いぞ」


「レンの育て方は師匠である私が決めることにしたの。あと加工には私の魔法を使う。それなら安く済むでしょ。」


「まあな。でもそれだとお前さんが覚えてる魔法しか使えんが問題はないのか?」


「大丈夫。レンの役に立つと思う魔法を込めるから、それには純魔石が絶対必要なの。」


えっ、僕それ聞いてないんですけど。僕が刻陣石でどんな魔法を使うか選べないってことだよね。別に自分で考えた方が強くなれるとか言う自信もないから師匠に任せてもいいのかな。



「さすがに属性魔石もいるけど、純魔石よりは取り寄せやすいんじゃない。それでどのくらい時間かかりそう?」


「いろいろと注文が多い仕事だなほんと。これでも俺は加工が専門だからな、一週間もあれば終わるだろ」


「わかった。その間にレンには刻陣石の使い方を教えないとね。それに一週間もあれば魔法の一つぐらいは覚えられるよね。」


「「えっ」」


「魔法ってそんなに早く覚えられるものなんですか。グリフさんの反応を見るとそうは思えないんですけど」



「俺の知る限りでは簡単なものでも一ヶ月はかかるらしいんだが。心配するな、人間は死にものぐるいでやれば案外なんでもできるようになるさ」


「絶対に無理ですよぉ。もしできたとしてもどんな過酷な訓練することになるんですか」


「ウダウダ言わないの。覚悟決めたんでしょ。ほら行くよ。」


師匠は強引に僕の服の首根っこを掴んで引きずり始めた。


「覚悟を決めたって言いましたけど、そのぉ、覚悟にもいろいろと種類があるというか。すみませんまだ死ぬ覚悟はできてないんです。助けてー!」


そんな僕の願いは叶えられることもなく連れ出されて店の扉がバタンと閉じた。


そうして引きずられて着いたのは見るからに訓練所のような場所。床が地面になっているが屋根もあり、人を模した案山子なども目に入る。


使われてる形跡が少ないのが気になるがそれでもちゃんと手入れはされているようだ。


「近かったからまだいいですけど離してくれてもよかったんじゃないですか。僕が歩けないと思ってます?」


「途中からちょっと楽しくなっちゃって。」


「俺たちの方はびっくりしたぞ。店から出てきたと思ったら引きずられてたんだからな」


「そうですよ。それでレン君をここに連れてきて何するつもりなんですか」


「ただレンの魔力を調べるだけ。」


「まぁ最初はやっぱりそれからだよな」


えっ、なんか皆んな納得してる。僕だけわからないんですけど、あれかな才能とかをはかるやつなのかな。


「それをしたら僕に魔法の才能があるかどうかが分かるんですか?」


「うーん、ちょっと違う。今のレンの魔力が魔法使いに向いてるかどうかわかるけど才能までは無理。」


「魔法使いに向いてたら才能があるっていうことじゃないんですね」


「えーっとね、魔力は変わりやすいものなの。遺伝によって生まれた時から違うこともあるし、戦闘とか訓練しなくても日常生活の中や周りの環境に影響を受けてしまう。魔法使いはなるべく自然の魔力、純魔力に近い方がいいから変な癖は無くす必要があるの。」


「そうなんですか。それで僕は具体的には何をすれば」


「何もしなくていい。私が君の体を媒体にして魔法を放つからその時の魔力の通り方で判断するから。背中こっち向けて手を前に向けて」


言われたとおりに練習用の案山子に手を向けた。自然と体に力が入り向けた指先が少し震える。


「そんなに緊張しなくていいぜ、体に魔法を通すと言っても危険なことは何もないんだ。もっと力を抜けよ」


肩の力を抜いて集中する。その後、師匠の手が背中に触れる。その指先から手のひらから温もりを感じる。それは前に感じた魔力よりも滑らかに素早く体の中を巡る。


背中から肩に向かって集まり捻れる。腕の中で触れ合って紡いだ。そして指先から繋いだ手がほどけるように離れた。


放たれた魔力は煌めき風を切って飛んでいく。そうして十歩先にある案山子に大きな風穴を開けた。



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