過去の因縁に溺れて 三話
町はすっかりと日が沈みかわりに月が出ている。月はいつもより大きく見えて、それはまるで自分の時間だ。と主張しているかのように明るく光り輝いていた。
月明かりがあると言っても街灯もない真っ暗な道をなんの苦もなくとぼとぼ歩いている。やがてギルドの人に怒られることになった引き換えにおすすめされた宿屋に着いた。
報告を忘れたことは責められなかったけど森に入ったことは怒られた。普通に考えて子供が森に行った後、半日も消息不明になってたら心配させちゃうよね。
今までの自分の行動を反省しながらドアを開ける。明かりの消えた部屋に簡素なベットが一つ、そこに腰掛けると唯一ある窓から月の光が差し込みまるで照明のようだ。
ベットに腰掛けても全然眠くならない。疲れはあるはずだけどやっぱり何も感じない、ただ興奮してるだけかそれともこの体だからなのか。考えてもしょうがない、どうやって時間を潰そうかな。夜に出歩くわけも行かないし、することもなくてふと空を見上げる。
月以外には星も色とりどりな光を放ち空を飾っている。あまり夜空を見た記憶はなかったけどそれでも前とは違う景色に感動を覚える
「月の前に星なんてあるんだ」
月に重なるように輝いている青い星。月の周りを回っている星なのかただ間にあるだけなのか。姉ちゃんにはわかったかもしれないけど僕にはちんぷんかんぷんだ。でも
「月に友達ができたみたいでなんかいいな」
夜空を見て落ち着く、しかし眠気はなく逆にやる気が出てきた。なので何かやることを探してみる。鞄には属性魔石がまだ残っていた
みたいで明日に備えて練習することにした。
「失敗して部屋壊さなきゃいいんだけど」
時が過ぎて夜も更けていくやがて町も寝静まりただ一人が活動している。その頑張りは誰に見られるでもなく月だけが明るく励ましているようだった。
「はぁ結局一睡もしなかったな」
あんなに重かった鞄が空っぽだ。魔石もすぐに全部使い切って途中から相棒を頭に乗せて魔力を流してもらうことにしたし。ていうか相棒のことどうしようかな。もう契約したから言っても大丈夫だろうけど分かんないな後で聞いてみよう。
そんなことを考えながら鍛冶屋に着いた。ドアを開けると今回はちゃんとカウンターで待っているようだ。
「おう。レン待ってたぜ」
「今日は店番してたんですね。大声で呼ぶ必要がなくなってよかったです。」
「毎回普通に呼べってんだよ。まぁそれよりも武器だろいいのができてるぜ」
コトンと置かれた一振りの剣、それは銀色を主役としてうっすらと白も混ざった鮮やかでシンプルな刃。一見装飾もない無骨なものだがそこには役割を追求した機能美が感じられる逸品だった。そして店の照明を反射して淡い青を刀身に写す姿は命を奪う道具というのを忘れさせてくれる。
「綺麗ですね、本当に」
「当たりめえだよ誰が作ったとおもってる。素材は全部この森で採れる物を使ってるからあまり硬い鉱石はねぇけどよくキレるぜ」
「軽くて滑らかな刃。レンにはピッタリかもね。」
「いつから居たんですかフィリさん」
気づいたら後ろに立っていた。扉を開ける音も聞こえなかったし、どうやったんだろう。
「みんな店の外で待ってる。早くいこ。」
「はい!武器ありがとうございましたグリフさん」
「おう、頑張れよ!」
「バイバイ。」
二人が店から出て行き、いつも通りの集中できる作業場が戻ってきた。そして昨日作った剣と少年を思い出す。不思議な感覚だったのだどちらも。剣は特別な素材でもなく特殊な技術を使ったわけでもないそのため傑作とは程遠い。でも今までで一番丁寧な作品になった。
少年はもっと異質だ。能力と雰囲気が合わない、状況と行動がずれてる。戦うことを迷っているにもかかわらず人並みに高い戦闘技術そして魔物に囲まれた後の怯えや恐怖もなかった。色々とチグハグだ。まぁそれにしても
「今日のあいつは気持ち悪いぐらいご機嫌だったな」
店を出ると他の三人が迎えてくれた。
「レンもようやく武器を手に入れたんだな。」
「そうですねおめでとうございます。でもこれからどこにいくつもりですかフィリさん私達にも教えない必要があるんですか」
「あんまり危険なことはさせるのはやめておいた方がいいだろ」
「ただいう意味もなかっただけ、そんな難しいことでもない。レンの実力ならすぐに達成できると思う。」
うっ、嫌な予感がする。絶対そんなことないやつだ、姉ちゃんが騙そうとしてくる時と似た言い方だもん。ウソは言ってないけど本当のことも話してないやつだ。
「結局僕は何をすればいいんですか?」
「君が戦った宝晶兎それを一体だけ倒せばいい。できる?」
やっぱり。でもいつかは向き合う必要があることだ。命を奪わないとここでは生きられない。いやそれも違うか、前と何も変わっていない。僕は知っていたはずだ教えてもらったんだから。ただ考えなかっただけ、生きるとはどういうことか何を犠牲にしたのかを。
僕たちは命に助けられて生きてきた。そして僕は友達に家族に助けられて生きてきた。それに気づかないまま。今度こそ覚悟する時なんだ。命を殺す覚悟じゃない、全力で生きる覚悟だ!
「でき、、絶対にやります!」




