過去の因縁に溺れて 二話
なんとか説得できて師匠にもなってもらった。これですぐにとはいかなそうだけど魔法も覚えれるかも。
「でも、稽古をつける前に君の覚悟を見せてもらう。」
「覚悟、ですか」
その時、ガチャリと扉が開いた。
「あれれ、この部屋でパーティーするなんて聞いてないよ」
「フィリちゃんもいるんだね。久しぶり」
「なんでうちのリーダーが隅っこで空気になってんだ。まぁいつものことだが」
おそらくアイシスさんの仲間である人たちが戻ってきた。
「フィリさんそろそろ帰った方が良いと思いますよ」
「そうだね。でもせっかくだからレンを紹介しようよ。イサラ、この子を一時的だけど弟子にしたの」
「それは、本当に大丈夫なんです?」
「難しいかもしれないけど僕は精一杯頑張るつもりです」
「心配なのはそっちじゃないくフィリちゃんのほうだよ」
「まあまあ、とりあえずワタシ達もちゃんと自己紹介しようよ。私の名前はルル・ノウェラ。君は?」
そう言ったのは左肩に木が生えているのが特徴的な女の人だった。作り物かとも思ったが左肩の肌が露出していてそこから木の継ぎ目も見える。
「サクラ・レンです。失礼かもしれないけど、その木って体に問題ないんですか」
「うーんこれはねぇ、元々は宗教的なものっていうか文化的なものっていうか説明が難しいんだけど。まっオシャレみたいなものだと思ってよ」
流石にそう思うのは無理だよ。
「テト・イサラです。レンさん。フィリちゃんはいつも真っ直ぐで振り回されることもあると思いますけど初めての弟子だから頑張ってくださいね」
そんなに忠告されるとめっちゃ怖くなってくるんですけど。本当に大丈夫なのか心配になってきた。
ししょーと仲が良さそうなこの人はししょーと似た雰囲気を感じるのに比べるととても対称的、身長の高さは全然違うし関係ないかもしれないけどこの人はポニーテール。何より2人の性格は真逆だ。なぜ似てると感じたんだろう。
「未だ状況が掴めねぇが後でそこの不貞腐れてるリーダーに聞けばいいか。俺はパティオ・ウルクス、まぁよろしく」
この男の人はゴツいというよりデカいな。威圧感はあまり感じないでもその人の存在の重さと力強さを感じる。
「自己紹介は終わったか、なら邪魔になる前に帰らないとな」
「ちょっと待って、レンは依頼が終わったの?武器を受け取りに行く鍛冶屋で待ち合わせしたいんだけど。」
「はい、依頼はグリフさんの所で武器も作ってもらってます」
「あそこなら安心だね。」
「レン君、私からも一ついいですか。依頼が終わったならギルドに報告したほうがいいですよ。まぁあちら側も把握はしてると思いますけど心配させるのもまずいですし、手続きを先にできますから」
あっそういえば、森に入った後に夕方まで消息が分からない状態って普通に考えたら心配させちゃうよね。
「じゃあ今から急いで報告しに行ってきますね。ありがとうございました」
別れる前に手を振って礼を告げて扉から出て行く。その遠ざかる背を見届けて少しした後
「バイバイ。」
小さくでも確かに手を振った。
「はぁ、黙って聞いてましたけどあまり感心しないですよ。あんな小さな子を巻き込むのは」
「うっせえよ。今まで黙ってた時点であいつの気持ちは変わらないことが分かってんだろうが」
「まぁそうですけど、でもその時が来たらいくらでも力を貸しますよ。もちろんあなた達が良ければ」
「私達も差し伸べられた手を払うほど復讐に燃えてるわけではありませんよ」
「そうだね。でもありがとう。今日は部屋も借りちゃったし、イサラとはもっと話したかったけどまた時間がある時にね」
宿屋を出るともう月が出ていて夜になりかけている。月の光が町を照らす、家の窓などに反射してまるで漂うように周りが明るい。月の光、星の光は気分を高揚させる。やっぱり昔を思い出すからだろう。
「おい、フィリさっきのはどういうことだ」
「さっきって?」
「誤魔化さないで下さい。途中からフィリさんをほとんど誘導してましたよ」
「まぁレンにとって悪い話しじゃないから俺も止めなかったけど、流石にいつもと違うぞ」
みんなに隠し事はどうやらできないらしい。するつもりもないんだけどね。
「分かったの。レンが気になる理由が。レンは私に似ていた、いや昔の私と同じなんだ。あの目は変化を求めている目だった。自分を変えたい、環境を変えたい、そして変わらない自分が許せない。譲れない想いは人を帰る。昂る激情は体を動かす。あの子は強くなれる私のように、そしてあの子達が新しい私に変えてくれるみんなのように。」
「それがいい変化なら俺たちも止めないんだが」
「絶対にいい変化だよ。レンと再会した時みんなと初めて共闘した時みたいな衝撃を感じた。縋るほどに求めていた変化が思っても見ない方向に転がって行く。私はね、今高揚してるんだ。みんなと冒険するぐらい。レンはどうなっていくんだろう。ワタシはどうなっていくんだろう。ふふっ、アハハッ。楽しみだなぁ」
抑えようとしても自然と頬に手が動いて口角も上がり恍惚とした表情になってしまう。
「その笑みもテンションも久しぶりだな」
昔、一人で冒険している魔法使いがいた。仲間も作らずより過酷な環境に休もせずに身を投じ続ける。自分を顧みずにただ一人で実績を積み誰にも頼らない。それを魔法使いでやってのける常軌を逸している中でも異色な人物はやがてこう呼ばれた。
「凶星 エルフィン・フィーリア」




