夢の記憶
「萩にい、死ぬってどんな感じなのかな」
「ふーん、えっ、急にどうしたのそんなこと聞いて」
ベットの上で本を読んでいた萩にいはパタンと本を閉じた後不思議そうに首をかしげている。
「いやっ、ただなんとなく気になって」
「まぁ間違いなく悲しいことではあるでしょ。残される人にとっては特に、本でも大体がそこら辺が物語の転換期になっていくよね。そもそも死の表現とかも本によって違うからいろんなものを読んでるとまた面白いんだ
「違くて、そうじゃなくて、自分が死ぬ時のことだよ」
いつものように脱線しそうな会話を戻して再度聞く。
「死ぬ時っていっても苦しいかどうかとかは死に方にもよるだろうし、死んだ後のことは実際に体験できないからなおのことわかんないよね。ふふっ死んでみてからのお楽しみって事でいいんじゃないかな」
あんまり笑えないよ。
「あんた達、なに不謹慎な会話してんのよ」
「あっ楓ねえ、おはよう」
「はいはい、おはよう。前も言ったけどさ私は蓮のお姉ちゃんじゃないからね」
「えー、でも楓ねえは姉ちゃんみたいなもんだよ」
「はぁもういいわ。で、あんたはどうして蓮に変なこと吹き込んでたわけ。ここじゃ誰がいつ死んでもおかしくないんだから洒落にならないわよ」
その言い方も洒落になってないよ楓ねえ。
「蓮にね、死ぬってどういう感じなのか聞かれたから自分が思ってることを言っただけだよ」
「何それ蓮大丈夫?怖い夢でも見たの?」
「違うよ!ちょっと興味があっただけだし、それに僕はもう小学生なんだ。大丈夫だよ」
「そうだね。でもあれが学校かどうかは疑問が残るけど」
「萩!あんたはいつも余計な一言が多いの」
「ごめんってば楓、気をつけるよ」
萩にいはいつも楓ねえに怒られてるなぁ。それで直さないのもどうかと思うけど
「心配しなくても蓮は私達よりずっと長生きするわ。それでも怖い夢を見た時は私が子守唄でも歌ってあげる」
「しなくていいよ。それに歌いすぎてまた楓ねえの
声がでなくなっても嫌だからね僕」
あの時は結構面白かったけど大変だったし
「そんなことまで考えなくていいの。まったく余計なお世話なんだから」
「そういえばここ最近、蓮はずっとベットで寝てる気がするんだけど本当に大丈夫?」
「あぁそれは寝てるんじゃなくてVRゲームしてるの、今ハマってるんだ。現実と違って自由に体動かせるし、優しい人もいっぱいで友達もできたんだ。2人も一緒に遊ぼうよ!」
みんなでやるならどんなゲームがいいかなぁ。やっぱり僕が最初に遊んだゲームとか?あれっでも先輩たち不親切な過疎ゲーだから本当は初心者に向かないって言ってたなどうしよう
「わぁーいつになくグイグイくるね。僕はいいと思うよ。どうせなら見たことないものがあるところがいいかな」
「えー、私は授業以外はせめてこっちで過ごしたいんだけど、、、あーもう泣きそうな顔しないでよ。わかったわかったからやればいいんでしょ。体を動かせてなるべく小難しくないやつにしてよね」
「うん!あっそうだ。友達におすすめされたゲームがあるんだけどいろんな種族があって面白そうなんだ。みんなと一緒に冒険できるからちょうどいいと思うんだけど、、、、、、、、
話しを続けているとパキパキと何かが割れる音がして会話をを止めた。にもかかわらず自分の声が聞こえて、自身の口が動いているのがわかる。
そうかこれは僕の記憶だ。まるで夢の中で夢だと気づいたような感覚で不思議と実感できた。すると自分の体から弾き出されて視点が移動する。3人が居る部屋、いや過去の世界が遠ざかっていく。
体もないまま吹き飛ぶ。その勢いはものすごい早さで見えなくなっていく景色の距離感だけがものがたっている。
このままではいずれ、今見えている水平線の彼方にあるような光さえなくなるだろう。そうなれば何も無い世界に逆戻りだ。でも近づいたりこの勢いを止めることができない現状に辟易することしかできなかった。
「バキン!!」
「カハッ!痛いっ」
見えない壁に激突して真っ黒な空間に白い亀裂が入る。
「パリン!ピシッ、ピキピキ」
ヒビは連鎖的に割れ続け黒一面を白に染めながら広がっていく。そのヒビからは光が漏れ出していて眩しいほどの明るさを放っていることが背後でも感じることができるだろう。しかし今の僕にはそんなことを構う余裕はなかった。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!」
白いヒビが入るたびこの空間が割れるたび激痛が走り、どことも分からない体が悲鳴をあげる。痛みがくるたび意識が飛んで頭が真っ白になり考えることもできない。それに呼応するかのように白いヒビが広がっていく。痛みに耐えていると気がつけば辺り一面がヒビだらけで白く明るかった。
ポロポロと小さな破片がヒビから落ちる。それは段々と大きなものになっていき次第に塊となっていった。抜け落ちた場所の穴から何かわかるかもしれない。痛みに歯を食いしばることもできないので息を整える真似をする。
「フーッ、フゥー、フー。うん気休めにはなるかも、穴の向こうの森はさっきまでいたところだよね」
自分の見ている景色をテレビみたいに遠目で見るって本当にどういう状況?
そう言っている間にも一つ二つと次々に抜け落ち空間が崩れていく。やがて全てが割れ落ちた。
崩壊する瞬間に膨れ上がる痛みと巻き込まれて落ちていく感覚を最後に僕は目を覚ました。




