魔力の練習中
森に行くことに決めた僕は心配する門番さんを説得してなんとか元々いた森まで戻ることができた。そしてとぼとぼ森を歩く中でふとこんなことを考える。
武器を持つ、僕にそんなことができるだろうか。グリフさんに言われたことを思い出す。それだけじゃないフィーリアさんも同じように言ってくれた。それでも覚悟がでない、なにも決められない。ゲームのような世界に生まれたいと思っていた。でも実際になってみるといつもの僕と同じだった。周りに心配ばかりかけて、優しく助けられたとしても自分はただ流されていくだけ。
僕は死んでも変われないのかなぁ。
「キュイ!キュイ!」
「そうだよね。こんなところでウジウジするために来たわけじゃないよね」
「よしそれじゃあどうにかして契約してみよう」
「キュン」
とりあえず相棒を持ち上げてみた、そして相棒をペタペタ触ってみた。でも一向に契約の仕方を教えてくれそうになかった。僕に何か足りないのかな、たぶん魔力だろうな。
そう思って早速今日買ったばかりの鞄を肩から降ろして木の幹に座った。鞄を開けてフィーリアさんが1番大事だと言っていた純魔石に両手を置く。
置いた手はしばらくすると暖かさを感じるようになっていった。その熱はゆっくりと、流れる泥のようにゆっくりと渦を巻き回っている。そして手は微弱な電気が流れているかのようにピクリと反応したりする。それを僕は腕のほうまで広げようと意識を巡らせる。熱を腕に移動させようとするたび自分の体が圧迫していて通らないそれをこじ開けるたびに痛みでビクッと体が動くが本当にダメージがあるわけじゃない。ならこれはどんなに痛かったとしてもマッサージと変わらないそう思うことにした。おそらく魔力だと思われるこの熱を全身に巡らせるころには汗をかかないはずの体は全身から汗が噴き出していて、たくさんあった純魔石はかけらも残っていなかった。
「はぁ、、はぁ、両腕の魔力が体でつながったあとは魔力が循環するようになって速かったけどちょっと勢いが激しすぎて、、ヤバかったなぁ」
「キュイッキュイ」
「なんだ、ほめてくれるのか。ありがと。ていうかお前の体冷たくて気持ちいな」
「キュ―――――ッ」
ひんやりとした相棒を抱きしめていると体の中に流れ込んでくるものがあることに気づいた。
「これはたぶん相棒の魔力だよね。もしかしてこれを取り込めば契約できるかも」
相棒の氷の魔力を注いでもらったが自分以外の魔力を大量に取り込むことはできないらしい。そこで僕は魔力をまねることにした。相棒にはまた氷の魔力を注いでもらいそれに近づけるように魔力の性質を変えていく。これが魔力を覚えるっていうことなのかな。しかし自分の体を氷の魔力で満たしても契約することはできなかった。
「これでも無理か、もう手掛かりがないな。まだ契約は無理そうだよ」
「キュイイー」
相棒は自分の尻尾を追いかけて縦にぐるぐると回って遊んでいる。
「気にしてるの僕だけかも」
時間がたち気も抜いたためどうやら元の魔力に戻ったようだ。今度は自分だけで魔力を変化させようとするがうまくいかない。どうやら再現する魔力を取り込まないと自分の魔力を変化させられないらしい。せっかくなので属性魔石でほかの魔力も取り込むことにしてみた。
まずは普通に魔石を使ってみる。最初は安全そうな風から、魔石を一粒つまんで今度は魔力を送り出そうと力を入れてみる。すると口で息を吹いた程度のそよ風が魔石から流れた。
「ほんとに使い物にならないな」
全部使ってみた結果、火はライター程度、水と土は片手で保持できる程度、雷は静電気程度だった。それと2,3回使ったら壊れてしまった。普通に使ったらあまり役に立たないかもしれないが今回は魔力を取り込みたいだけなので大丈夫だろう。
順番に魔力を取り込んでいって体を適応させるのにそれほどの時間はかからなかった。さっきと比べると5種類全部覚える時間が半分しかかからなかった。まぁそれでも結構な時間がたっていつの間にかもう昼が過ぎてる。だが今はそんなことよりも深刻な問題がある、それは覚えた魔力がまともに使えないということ。体に溜めた属性魔力を使う実験をしようと風の魔力を魔石の要領で放ったら風が爆発して吹っ飛んじゃった。まぁそのあとは察しが付くけど試してみたら案の定、火は自分が燃えるし、水はもう少しでビショビショになるとこだった、土は地面に落ちたし、雷はこっちが痺れただけ。
これじゃあ何も役に立たないよ。あっそうだ、ゲームの動き再現できるかも!
まず少ししゃがんで足に風の魔力をためて出力を絞って開放する。よし、成功したぞ。グレネードの爆風で加速するとかよくやってたなぁ。今回のは威力を調整できるからスピードも制御できるし、実用性あるかもな。あれゲームだとどうやってこの後止まってたっけ。えーと、確か壁に激突してリスポーンしてたな。
「まずいまずいっー!」
ヤバい木だこのままじゃぶつかる、そう認識した時周りがゆっくりになっていくのを感じた。走馬灯ではないようだ。何コレ、とりあえず逆噴射しないと。態勢を変えてゆっくり近づいてくる木に両足で着地してその衝撃を風で相殺する。よしタイミングばっちり!
「あっ威力ミスったー!!」
さっきよりもはやい速度で同じ軌道を描き戻っていく、この速さだと元居た場所を楽に通り抜けて飛ばされるだろう。機械の体だからといっても無事な保証はなさそうだ、どうしよう。ていうか相棒にぶつかる!
「相棒助けて!」
「ムキューーーーッ!」
その時相棒の毛皮がエアバックのように膨らみぶつかった僕の体を包み込み衝撃を吸収した。
「わわっすごいモフモフ」
それでも勢いを殺しきれずに一緒に飛ばされてしまうが相棒の毛皮は木にぶつかっても跳ねるだけで問題がないようだ。そして何回か木に当たりながら少しずつ減速していった。一つ問題があるとすれば相棒は無事でも中にいる僕は木にあたるたびに違う方向に振り回されるということ。完全に止まる頃には洗濯される服の気持ちがわかった気がするぐらいだ。
「うー酔った。ゲームで飛び跳ねるとかこのくらいの動きはやったはずだけどなんか違うのかな。ふぅ助けてくれてありがとね。初仕事の原因が僕の自爆だったことは情けないけど」
「キュッキュ」
「思い付きで行動すると碌なことにならないな、いつも。それにしても随分と遠くまで飛んできたなぁ」
周りを見渡すと木が生えていない場所がありその先に川を見つけることができた。これは森の奥にまで来たということであり魔層に近づいてしまったということでもある。
「魔層に入りたくないし、散々ひどい目にあったから帰りたいけど・・」
ガサガサと葉っぱの揺れる音がこちらに近づいているのが分かった
「ヴヴーガルル!!」
「だよねー。あんだけ派手にやらかしたら敵がくるのも仕方ないよな」




