人の記憶を探る
『ニンゲンについての授業』は2年前だった。それまでは人間への差別、区別は少なかった。せいぜいあっても、動物やモンスターの親が子どもにむかってあそんじゃダメよ。という程度だった。ぼくと友達だった生徒はその妄言を信じず、ぼくと遊んでくれた。
だが、子どもながらでも、自分で確かめると様子が変わってしまった。
『ニンゲンと動物、モンスターの違い』彼らの見る目が気持ち悪くなった気がした。
今知りたいのはそれより前の記憶だ。どうやって友達を作るかどうかだ。まずは時間をかけて話したり、意気投合したり。または利益だけで付き合ったり…まずそれを彼に伝えよう。
「時間をかけないと友達になれない。第一友達にならないといけない目標っておかしくないの? 自然と─」
「自然とニンゲンと心を通わすのは無理だよ? オモテの世界だとそもそも信用されないでしょ? 」
嫌な記憶が蘇る…『授業の日』以来、クラスメイトたちが事件が起きたときに人間を疑うような気分が悪くなった日を。
ぼくも同じことをしてしまったから報いだと思うけど、やるせない気持ちが湧いてきたあの日を。不良のチャームを…都会から来た子を…犯人だと決めつけてしまった報いだ。
「──ねぇ!! 聞いてる!! 」
ファムの声で現実に戻されてしまった。そういう過去をえぐる発言は辞めてほしい、そうぼくは願った。
「で、聞いてなかったようだから説明するけど。人間は…じゃなくて『信用されてないキミは、どうすればボクと友達になれると思う? ………じゃあ正解言うね! 無理やり人の記憶や過去に入って、問題を取り除いて『友達』を飛ばして『親友』になれば良いんだよ! 」
それにはこのアイテムだと言わんばかりに、『ハート型のモノ』をぼくに渡した。マニュアルも付属している。
マニュアルを読むと…・このハートを使って人の記憶、過去に入ることができる。・そしてその人の心の問題を解決することで、『心を通わせた親友』になる。・それがキミの仲間…っと書いてあった。手作り感満載だった。
「それ! ボクの手作りだからね! ていねい! に扱うんだよ。…っと、実践ということで『ボクにそのハートを使え』…いいね? チュートリアルだから気負わずに行こう! 」
ファムに言われるがままにハートを使用した。またもや反転した。貴重な同日での二度目の気絶だ。まったく嬉しくない。
「ハル君! 起きたかな? チュートリアルだから説明しながら頑張ろううね! 眼の前のカカシ! あれがボクの心の問題だよ。さあ頑張って! 」
先程の『影の国』同様の景色だったが、ファムは見えない。おそらく本当に心の中に入ったのだろうか。
…ん? 紙が落ちている。簡単なプロフィールが書いてある紙だ。ファムと人物名に書いてあるので、心の主の説明なんだろうか。
・人物名 ^ファム^
・性別 ^男^
・好きなもの ^スイーツ^ ^自分磨き^
・心の問題 ^カカシにトラウマがあるようだ^
なるほど…多分だが、カカシを倒して心の主『ファム』にスイーツだったり、褒める言葉を上げれば…親友になれる? らしい。
「ワクワクするのは、人間のぼくが必要にされてるからなのか。とりあえず面白そうだし、頑張ろうか…」