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ニンゲンは腫れ物。嫌われ者

 「この世界を救ってください! 勇者たち!」

 とんでもないことになったぞ。


 ぼくの名前はハル。

 突然だが、ぼくはこの街唯一の人間である。ぼく以外は動物、モンスター、異系、そんな奴らばっかりだ。だけど、優しい者ばかり(人間以外に)で良い世界だと言える。

 いや人間のぼくにも優しい。けど、区別はされている。他の動物、モンスターとは違って、脆くて、頭が弱くて(もともと人間の知性なんて高くないかもしれない)、そんなようで「人間には無理をさせてはいけない」「触ってはいけない存在」として扱われるようになった。

 だけど、冒険に出なくてはいけなくて、そこでぼくの人生は変わってしまった。悪い方でね。


 「えぇーと、みんなぁ、今日はグループワークの日なんだけど、もうグループは決まって、るよね?」


 今日は学校なんだが悲しい報告がある。ぼくは前世があるせいでちょっと浮いてる生徒になっているのだ。あと人間だから腫れ物扱いである。イコールこの式は『ぼっち』が答えだ。え? なぜ浮いてるかって? 授業でね、『人間について』っていうのを受けたらさ、他のモンスター連中は「気持ち悪い」だってまあ別に良いけど


 「あっ、ハル君は、先生とぉグループで良いかな? えへへ? 」


 ん? 先生からの扱いは良いじゃないかだって? 勝手に罪悪感を覚えてるだけだよ。そういう授業したのなら後片付けもちゃんとして欲しいけどね。


 「あ、あの先生! わたしたちのグループでハル君を…」


 その言葉とともに来たのはブーイングの嵐。人間はともだちではないんだろう。と思いつつチラ見したのはクラスメッセージ。書いてあるのは『みんなともだち』


 「えー?! どうして! リリーちゃん! 人間なんて入れなくてもいいじゃん! 」


 「そうですぞ。せっかく先生が預かるというのに」


 預かるって、まるで化け物扱いだな。チョー優等生のリリーさん(笑)は悲しそうな雰囲気を出しながら俯いた。いや、泣きたいのはこっちだよ。なんつってね。彼女はこの街で貴重なモンスター枠の女子で、ろくろ首だ。

 

 「えーと、じゃあハル君は先生とグループ、ね! えと、グループも決まった…あ、チャームちゃんはどうしようか。先生とハル君とのグループで良いかなぁ? 」


 チャーム。名前とは裏腹にちっと怖い系のライオンの女子だ。呪いとか使う系の怖さじゃなくて、不良系の怖い女子である。人間差別がある街なので、不良とか最先端のファッションを行く連中には差別しまくりなので、ぼくと同じでクラスで浮いてる。


 「ッチ! グループとかダリィな。帰る。」


 残念なことにグループは、ぼくと先生の二人だけだ。

 

 「…」チラチラ


 チラチラ見てるのは、先程大反対されていたリリーさん。勝手に誘って、勝手に罪悪感を覚えて、挙句の果てに泣きそうな顔。泣きたいのはぼくさ。




キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン



 みっちり三時間のグループワークは終わった。と言っても、ぼくはなにも喋ってないけど。先生の意見で、先生の言葉で、先生の字で書いて終わった。それだけ。そうそう、授業中もリリーさんが見てきてウザかったね。

 さあお楽しみの給食タイム…とは行かず、ぼくは帰る準備を致す。理由はご飯が配られなくなったからだ。前に話したように人間についての授業があったんだけど、生態系も食べるものも違うとのことでみんな困ってしまったのだ。懐疑の目が気持ち悪くて、その授業以来お昼ごはんは食べていない。


 「あ、ハル君は、帰るんだね。さようなら。えへへ? 」


 虫酸が走る笑い方をやめてくれれば、選択を間違えた良い先生なんだけどな。あとみんなは気づいたかな、ぼくは学校に来てから一切喋ってない。一日で見ても全く声帯を使ってないぞ。親とも一言程度だ。自慢じゃあないが。


 「あの! ハル君! 」


 軽快な足音を響かせこちらに来たのはリリーさん。勇気を出すのが遅いね、『あの日』に出してればぼくは、こんなに卑屈じゃなかったのにね。


 「なに」

 

 できる限り相手を見下す声にしたが…効果はない


 「その…ね。一緒に帰ろうかな、って」


 「他の友達は君とのお昼を待ってる」


 彼女からは見えなかったようだが、たしかに彼女の後ろには他の友だちがたくさんいる。悪口を携えながら。


 「なんで人間がリリーちゃんと一緒に? さっさといなくなってよね」

 「ふむ、図鑑の人間には『場が読めない』とはかいてなかったけどね」

 「これだから俺らと違う人間は…」

 「はやく戻りましょ? リリーちゃん! 」


 「あっ」


 リリーさんは何かを言いたそうだったが…どうでもいいか。




 ぼくにはお気に入りスペースがある。家族のいる家ではない。終焉の場所もとい、ゴミ捨て場だ。家は…なぜか人間が生まれてしまったので、親も妹も兄も、どこかにいってしまい。まるで廃墟で、良い記憶が無い。

 ゴミ捨て場は落ち着く。ゴミ捨て場と言っても、すごく臭い場所ではない。どちらかといえば物置。街の人が使わなくなった物を置く場所で、きれいではある。


 「…おいおい、なぜ先客がいる。しかも不良のチャームかよ。」


 不運なことに奪われてしまった。これじゃあぼくの居場所はないと同義だ。…待てよ? チャームを見ていたら物が崩れそうになってる。やば…


 ガッシャーーン!!


 案の定だが、ぼくの安息地が崩れてしまった。そしてチャームも下敷きで、なんだか少し可愛そうだ。


 「うう…おーい助けてくれよ」


 助けを呼んでるはずなのに小声だ。どうやら恥ずかしいのか。チャームを助けたくはないが、安息地は救いたい。ただまあ、彼女が絶命したあとに片付けてもいいが…呪われそうだ。前置きは長くなったが助けることにした。

 

 「え? おま…人間かよ…チッ」


 ずいぶんな嫌われようだが、人間なので仕方ない。これ以上嫌われたくないので、彼女に触れないように助けよう。


 「あ、おいお前! 上! 」


 ぼくの意識は迫りくるどでかいトンカチでブラックアウトした。意味不明なのでが…


 もう一度いうが、意味不明なのだが冒頭のセリフになる。


 「この世界を救ってください! 勇者たち! 」


 隣には気絶したままのチャームがいた。さらに頭が痛くなった。




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