*とある日の会話*
『お前、今日ログさんの所に手紙を届けさせられたんだって?』
『そうだが、別に特に変わったことは無かったぞ』
『つまり会えなかったってことか。』
『いつも都合よく出かけてるんだよな。何処でこっちの情報を仕入れているんだか。』
『相変わらずだなぁ。んでアイシャさんはどんな顔してた?』
『今回はスゲェ怒り方してたぜ? そりゃもう俺殺されるんじゃないかって思ったほどだ。』
『そいつは災難だったな。いつもの事っていやそうだが。』
『それが今回はちょっといつもとは違くてな。』
『どういうことだ?』
『手紙の依頼はアイシャさんからだが、手紙を書いたのはギルド長らしいんだよ。』
『はー、そりゃどういう風の吹きまわしだ? まさか資格はく奪とか?』
『まさか、あんな大物そうそう手放しはしないだろう。』
『分からねぇぞ? 何しろあの態度だったからな。呼び出しに応じない。見つけたら逃げる。挙句に手紙に対しては知らんぷりと来たら、堪忍袋の緒もそろそろ切れるんじゃないか?』
『どうだろうなぁ。……居留守と言えば、今思えばちょっと変わったことがあったな。』
『お、どんなことだ?』
『いや、大したことじゃない。いつも通りログさんはいなかったんだけどよ、代わりに可愛らしい女の子が出てきたんだ。』
『クリュスっていうログさんの“これ”じゃなくて?』
『ああ、別人だ。どうにも獣人の女の子っぽかったな。口ぶりは丁寧だったから、何処からか泊まりに来ている客かもしれない。』
『それちゃんと報告したか?』
『したぜ。そんで、その事が妙なんだ。報告したらアイシャさん黙り込んじまってな、何か真剣に考えだして。唐突に書類の山を見始めたり、何かメモを取ったりし始めたり。ついさっきまでヒステリックに怒鳴っていたとは思えない異様な様子だったぜ。』
『そいつは確かに妙だな。まさか獣人の子に心当たりがあるとか? お貴族様とか。』
『まさか。そうだったら即座に迎えに行けって命令が出てるだろ。あの宿、あの立地だぞ?』
『それもそうだな。しかし、だとしたら一体何なんだ?』
『俺に聞くなよ。ま、上の事情なんか俺らにゃ考えても分からねえさ。それに、一波乱あればそれはそれで良い酒の肴になるってもんだ。』
『相変わらず、性格悪いなお前。』
『そう褒めるなよ。』
『そういやこの間の件だが――――――。』




