第426話「平和主義者な俺は平和的に取り戻したい!?ちょっとした間話の巻」
( ^ω^ )ついに出てしまいましたが(汗)、この作品はあくまでフィクションです。
登場する人物、団体、出来事は全て架空です。
我が家転生…「我は無限の竜脈使い?」…が眷属育成計画中なのですw
第426話「平和主義者な俺は平和的に取り戻したい!?ちょっとした間話の巻」
そこには音もなく、極めて静謐なる白い空間…。
現実なのか?
白昼夢なのか?
未だ、何度経験しても彼女には理解が及ばない。
それでもこうして、自分の神を目の当たりにし、その降臨を前にしている…という栄誉と栄光は、彼女の薄っぺらな自尊心を最大限に満たしていた。
「ああ、神よ。お与えくださった下命、粛々と進行しております。今しばらくの猶予をお与え下さいますよう…(平伏)。」
深々と首を垂れる。
神を直接見上げるなどと、天罰が降るであろう。
『……慈しみ深きグレンダよ…何度も申しますが…私は神ではなく…使徒ですよ…』
「ははっ。神にして使徒ですね!!当然ですね!!」
何と言われようとも、彼女の中では、それは確固とした事実なのだ。
この絶対的聖なる存在は神以外の何者でもないのだから。
『はぁ(ため息)……困ったものですね…』
そして神にして使徒なる者も溜め息をつく。
それもそれで彼女を興奮させもした(?)。
人から聖人に進化した…いや、させられた彼女からしても、彼女の神は遠く手が届かぬ至高の存在。
そんな神の世俗的な言動がまた、彼女を昂らせた(え)。
「お任せ下さいませ!!全力をもって、不埒で下賎で低俗な地上のゴミ共から神の聖遺物を取り上げ、唯一正しき清廉潔白なる我らが聖人協会こそが世界を管理してみせます!!」
それは悪意のない完璧なる善意。
全世界的な正義感。
だが、世界平和の維持の為には、正しい選択であり結論である。
『……まあ、いいでしょう…大神官の前任者はまさに俗物でクズでしたので…あなたには大いに期待していますよ?』
「ははっ!!我が命と魂にかけてっ!!」
平伏。これぞまさに平伏ってさまを彼女は見せつけた(?)。
平伏し過ぎて額に青あざが出来た頃、彼女の神の気配がサァ〜〜っと引いていく…
「あっ!?」
顔を上げれば、そこは自分のいつもの執務室。
木彫りの机と石造りの暖炉の炎が暖かい雰囲気を醸し出している。
しかるに、神の威光に触れた彼女の手足は凍りついたように重い…だがそれでも。
「あああぁぁぁ〜〜〜ん。ペテロ様あぁぁぁ(歓喜)。」
年甲斐もなく興奮の絶頂にある「グレンダ・トゥーンズラ」。
いや、彼女はまだ実年齢的には未成年…若くして聖人協会の大神官に抜擢されたのも、世間での抗議活動「地球浄化作戦」の広告塔として持ち上げられたまま、未成年者特有の本能のまま突き進み、糸が外れて世論に巻き込まれた結果の偶然。
悪意のない独善的な善意…それが「聖人」になる為の「聖なる資格」。
彼女は聖人としての霊性を与えられ、霊と魂の何たるかを理解する為の儀式を経て、精神だけは数百年と引き延ばされた…筈である(汗)。
「ペテロ様ぁ。ペテロ様ぁ。ペテロ様ぁぁあ。」
だが、故のこの様である。
『…はしたないですよ、グレンダ大神官様。』
うっ!?
しまった、見られた(汗)。
だがまあ、それも今となっては日常茶飯事で(え)。
私と彼女?の付き合いはそれなりに長いので…
「あら?居たのですか、聖ミモザ様?」
影幻のように浮き出る白い姿…彼女もまた、聖人認定された比較的新しき聖霊の一柱。
大神官に就いてから日の浅いグレンダの補佐役にして秘書であり、そして聖人Mグループの筆頭者でもある。
『…グレンダ様、あなたは大神官にして執行者。聖なる者として自覚していただかないと困りますわ。』
「あら?そんなこと言われなくても分かっていますわ。それよりも、派遣した正義の使者〈ジャッジメント〉からの朗報はまだですの?」
『ええ、その件ですわ…やはり法王庁からの苦情と横槍が上がっていますわね。』
そんな事を聞きたいわけでは無いグレンダ嬢にとって、そんな報告を上げる聖ミモザも法王庁も、全てが生ぬるい日和見的な偽善など我慢ならないわけで。
「えええぇぇい、恥を知りなさい!!神のものは神のもの!!神に選ばれし私たち聖人が管理してこそ、神も喜ばれましょうにっ!?」
それをポッと出の辺境の東国の竜脈の?何んたら家とやらが現在、世界を席巻しているとかいないとか!?
SANMA?何それ??
食べ物で神を虜にしようなどと馬鹿げている。大罪である。
竜脈結晶?
古来より、ドラゴンは神敵!ドラゴンは駆逐しなければならない巨悪!!
噂では、魔族も関わっているとか?断罪確定!!
『お、落ち着いて下さい、グレンダ大神官様っ!!』
毎度毎度、このフレーズ好きだなぁ…とか思いながら、聖ミモザは彼女を宥める(汗)。
『例の聖遺物は正義の使者〈ジャッジメント〉が回収に成功していますわ。東国の八咫烏が嗅ぎ回っていますが、物証は得られないでしょう。しかし、遅かれ早かれ…』
近く、神の名を冠した絹糸が輸送される手筈となっている。この作戦には聖人Vグループの聖霊たちが協力的であり、その理由は…
「それにあなただって知っているでしょう!?聖バレンティヌスが姿を消した原因は、あの何んたら家が関わっているって事だからでしょ!!」
『うっ。それは…』
聖ミモザは顔を強張らせた。
何にせよ、聖ミモザはホワイトデイを司る聖霊であり、聖バレンティヌスとは対になる存在なのだ。
故にこそ、聖ミモザには聖バレンティヌスの存在との親和性があるのだが…聖人が、いや聖霊が行方不明になるなど前代未聞なのだが、その存在が多幸感に満ちていると感じる違和感もまた、聖ミモザは感じていたのだ。
「ともかく!!あの何たら家をどうにかしなきゃならないでしょ!?」
それは即ち、田崎家を籠絡し、聖人協会の手中にすると言って憚らないグレンダ嬢。
聖人協会の裏の顔、支配層である聖霊たちも彼女の意見に傾倒しつつある。
それが彼女の持つ「神の贈物〈全時代的唯一論〉」の影響力なのである…。
『…分かりましたわ。配下の聖モノを田崎家に正式訪問させましょう。』
「えぇ?あのオジさんで大丈夫なのかしら?」
見た目はオジさんとは言え、彼も歴とした聖人認定された聖霊である。
聖人Mグループの上位聖霊である(汗)。
『まずは聖モノに訪問させ、様子を見ます。田崎家が従順に降ってくれればよろしいのですが…。』
「所詮は人間でしょう?まぁ、私が行けばすぐに片付くのですけどぉ(笑)。」
ケラケラとグレンダ嬢は笑う。
何故なら、彼女の全時代的唯一論は男を狂わせ卑屈にさせるという、それはそれはタチが悪い権能なのだ…。
◇ ◇ ◇
こうして、彼女たちは足を踏み外して行くのだが…まだその事を知る由もない。
一方、法王庁の教皇に泣きつかれた八幡宮統括本部の運営本部長の鳩山さんは震えながら一
夜を過ごしていた(?)。
『くっそ。とんでもねぇ事をしでかしてくれやがったぁ!!』
白髪を掻き上げ、苦渋に顔を歪める恰幅の良い壮年の男…鳩山 巴。
白いスーツが妙に似合う。
こう見えて、使徒なんて格下である天使たちの総元締め、大天使メタトロンその人なのだ(笑)。
『ど、ど、ど、どうしたもんかぁ!?今すぐ八幡様に報告するべきかっ(汗)!?』
『あらあら、鳩山様?この場合、教皇さんを口止めしておいた方が良いと思いますわよ。』
おん?
…お前は福利厚生部担当のガブリエル!?
耳が早いなっ!!
って言うか、いつの間に俺の執務室に入った!?
プライベートの侵害だろがっ(怒)!!
『いや、何を言ってんだ!?事は八幡様が特別視するあの田崎家に下部の下部とは言えな、下界の末端組織が手を出したっていう状況だぞっ!!』
『う〜ん。ですけど、だからこそ事は慎重に、ですわよ?我らが神の盟友である田崎蓮人様の意向を第一に、ですわね。』
くっ。いや、確かに、彼女の言うことも一理ある。
同じ四大天使であるミカエルもウリエルも、彼女には頭が上がらないわけで、それはガブリエルの頭脳明晰さと先を読む能力ゆえに。
それと…コイツ、なんでチャイナ服?
やけにスリムでアレ過ぎるのだが…(汗)。
『そもそもね、下界の組織って末端過ぎて、自分達が八幡宮統括本部の下部組織である事実も把握していないわけですわね。』
それな。
むしろ聖人協会の下部組織である法王庁こそが、実は監視目的で作られた密偵組織である事実も知る由もないのだ(え)。
『とにかく、まずは謝罪だな…。』
『そうですわね。そこはまず素直に謝った方が吉だと思いますわね…懇切丁寧に、ですわよ。』
ああ、だろうな。
とりあえず、これで方針は固まったが、いかんせん、許せん(怒)。
肺に悪いとは知りつつも、葉巻に伸びる手が止まらない。
『身体に悪いですわよ?』
『分かってはいるが…ん?チャイナ服って、お前まさか!?』
『あらあら、やだわ。日本にどっぷりハマって抜け出せないラファエルから先に情報が来てたから、龍神同盟の黄竜様に面談を申し込んで、口止めをお願いしておいたのよね。安心して良いですわよ。』
おい、何だとぉぉぉ(怒)!?
『アイツは、何で先に俺に情報を上げてこないんだっ!!』
ダン!!っと大理石の机を叩いたら割れた(汗)。
やっちまった。いつもの事だが、また経理科から怒られる…。
『まあ、そういう性格だからじゃないのかしら?両方ともにですわね。』
水と油か?まあ、そりゃ分かってはいるが(え)。
しかし、ラファエルを日本に出向させたのは八幡様の命だが、失敗だったのでは?と今でも思うのだが、それこそ後の祭りである…。
間話…終わり。