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プロローグ

ハイ・ハイ・ハイ!のリメイク版です!

自分の創作を振り返った時、この小説が最もキャラの構想とかをガッチリしていたことを思い出し、改めてきちんと作り直してみようと思って再び新作として作り直しました。

読んでもらえたら幸いです。

よろしくお願いします。



 始まりは物心が着くか着かないか、そんな時期だった。


 気づいたとき、すでに僕は孤独だった。

 それは僕が三歳の時。

 両親には相手にしてもらえず、幼稚園や保育園に通っておらず、外に出る用事なく、ただただ一人だった。起きて、ご飯を食べて、ボロボロの絵本を読んで、窓から外の景色を見て。そして気がついたらまた寝ている。そんな生活をしていたと思う。


 そんなある日、普段は家にいない両親が珍しく家にいた。そして僕の手を取って車で外へと出かけた。朝ごはんを食べて出発したのにお腹が減るまで目的地まで到着することはなかった。


 そんな長距離移動で到着したのはどこかのデパートだった。


 今まで買い物に連れて行ってもらったことなんてなかったからちょっとだけ不安になった。でも普段と違って構ってもらえたこともあって嬉しくてしょうがなかったからそんな不安を僕は無視した。まあ、不安だからってその時の僕が何かその不安に対してアクションを起こそうなんて思いもしなかっただろうから、今更どう思ったところでどうしようもないんだけどね。


 笑顔の両親に連れてきてもらったおもちゃ売り場でおもちゃを夢中で眺めていた。機嫌が良さそうな両親を見て、おもちゃを買ってもらえるかも・・・とそんな気持ちが湧いた。その気持ちを言葉にしようと周りを見渡すと独りだった。慌てたね。そりゃあ親とはぐれたんだから子供は慌てるよ。


 両親がどこに行ったのか分からず、周囲をフラフラと彷徨った。いくら探しても両親はいない。


 ただの三歳児の僕にはそのデパートは広大過ぎ、すぐに歩き疲れて泣きながらその場にうずくまってしまった。そうしているとどこかの店舗の店員さんが声を掛けてくれて迷子センターに連れて行ってくれた。「ここにいればパパとママが迎えに来てくれるからね」と言って。


 その言葉に安心して僕は迷子センターに着いてすぐに眠ってしまった。何時間経っただろうか。両親はデパート内の迷子アナウンスで呼びかけても迎えには来なかった。途中で目が覚めて迷子センターの職員さんと一緒に待っていたが待てども待てども両親の姿を見ることはなかった。


 その日、迎えが来なかった僕は警察に連れていかれることになった。迷子センターにずっといるわけにもいかなかったからね。僕は色んなことを聞かれてそれに分かる限り正直に答えた。家はどこか、両親の見た目はどんな感じか、他の保護者、血縁者、知り合い等。拙い僕からの情報を頼りに警察の方で僕の両親を探してくれたがすぐには見つからなかった。


 両親の捜索の間、行き場のなかった僕は一時的に交番の居住スペースに居候させてもらった。捜索と言ってもデパートと僕の家の周辺捜索と聞き込み。それだけで両親の所在は明らかになった。


 両親は海外へと逃げていた(・・・・・)。そう、逃げていた(・・・・・)のだ。

 両親は借金をしていたようだ。それで借金取りから逃げるのにも限界がきて、ついに逃げ出したということが警察の捜査で分かった。海外ではどこの国に行ったのかまでは分かってもそこからの足取りを辿ることは難しい。ましてや、連れ戻すなんてことは出来っこない。


 親が僕を捨てた。それが警察の捜索で判明した事実。勿論、この時には真実は伝えられなかった。教えてもらったのはもっと後。


 その後、僕の住む場所は交番の居住スペースから養護施設に移り変わった。

 そこから僕の施設での生活が始まった。




               ・・・




 三年間が経った。


 両親が急にいなくなったことが僕のトラウマになったのか、親しい人を作らなくなった。

 作れなかったと言ってもいい。いや、むしろそちらの表現が正しい。

 簡単に言えば、誰にも心を開かなくなったのだ。元々、友達の作り方も知らないし、急にいなくなることへの恐怖から親しい人を作ることが出来なかった。


 そんなある日。


 施設にある女の子がやってきた。


 その子は明るい性格ですぐに施設で人気者になった。

 でもなぜか不思議なことに、あるときを境に女の子は僕に話しかけて来るようになった。それも一回だけじゃない。何回も僕の姿を見るたびに。最初は面白半分や罰ゲームか何かだと思った。でも、何回も話しかけられていく内に違うということが視て(・・)分かった。


「いっつもいっつも、だらしない顔してるわね」


 そう言って毎回毎回話しかけてきた。


 僕は顔には出さなかったが、話しかけてくれることが嬉しかった。だけど、トラウマが邪魔して僕はその気持ちを女の子に上手く話すことが出来なかった。精々、「あぅ」「うん」「えっ」とか漏れ出た声くらいだ。


 それに、こんな暗い僕が施設の人気者に話しかけるのはダメだとも思っていた。だからいつもそんな生返事ぐらいしかできなかった。


 そして女の子が来てから少し経ったある日、誰かを引き取りに恰幅の良いおじさんがやってきた。


 どうやらどこかのお金持ちらしい。


 そのおじさんは娘を早くに亡くしたらしく、明るくて元気があってどんな人でも平等に接することのできる子を引き取りたいらしい。


 何人か候補はいたが、最後にはあの女の子が選ばれた。


 条件付きで養子にするなんてロクでもないんじゃないか・・・。そんな気持ちがその時の僕にはあった。でも、何も言えなかった。それは僕がその条件に適う子を見出す理由を作ってしまったから。後で施設長に聞かされたけど、僕にいつも話しかけていたことが決定打になったらしい。


 恰幅の良いおじさんが僕に話しかけている女の子の姿を見ており、そのことを施設長と施設の職員に話したらすぐに決まったようだ。


 数日後、その子は引き取られるとき、みんなにさよならの挨拶をした後、どういう訳か僕のところに来た。


「さよなら。もし次に会ったら・な・・け・・したいな。だ・ら、わた・・・と、わす・・・で」


 僕はそれに頷いた。その言葉がたまらなく嬉しかった。今ではもう覚えてはいないけど、この子は僕を捨てないと感じたのだ。


 でも、そう感じた時には遅かった。女の子は引き取られる直前だったからね。僕はたまらなく悲しかった。そうして気づいたんだ。


 僕はあの女の子が好きだったんだってことに。


 暗い僕にいつも楽しそうに、嬉しそうに話しかけてくれたあの子が。


 でも、気づいたときには遅かった。


 あの子はもう引き取られていったのだから。


 もしかしたらあの女の子が遊びに来るかもと思い、毎日待ち続けたが女の子は一向に姿を見せなかった。

施設の大人に聞くとどうやらかなり遠くに引っ越してしまったらしい。




                ・・・




 それからまた一年が経った。


 僕はさらにより一層暗くなっていた。もうあの女の子には会えないという気持ちが僕をそうさせたのかもしれない。


 あの子がいなくなり、僕に話しかけてくれる人はいなくなった。もちろん、施設の大人たちは話しかけてくれていたけど、事務的なことだけだ。


 そんなある日、仲の良さそうな明るい夫婦がやってきた。


 僕はそんな仲の良さそうな夫婦を見て自分とは対照的でその光景が眩しく、そして羨ましくなった。まるで二人でいることが当たり前のようで、それでいてその当たり前をとても大切に想っている。そんな雰囲気には僕は縁がないものだと思っていたから。


 その夫婦は子供を一人、引き取りたいらしい。でも、条件を言わず、自分たちの目で判断したいらしい。

それはこの施設ではごく一般的にあることだから施設の先生もすんなりと許可した。


 でも、その夫婦の選び方は少しおかしかった。


 子どもたちを集めて、一人ずつ目を見ていったのだ。当然、僕もその中にいた。僕は嫌がったのだが施設の職員の人に強引に連れられてきてしまった。


 夫婦は順番に見ていって最後に僕が残った。最後に残った僕以外には納得のいく子がいなかったらしい。そして、最後に僕の目を見た。


 その瞬間、二人は立ち上がった。


「「この子を引き取らせてくれませんか?」」


 と同時に言った。


 その言葉に僕は動揺を隠し切れなかった。


 どうして僕なんかがいいのだろうと不思議に思った。こんな暗い、まともに話そうともせず、俯いているだけの子供。それが僕だったから。


「これからよろしくね」


 夫婦の内の女の人がそう言って僕に話しかけた。でも、僕はそこでも生返事しかできなかった。


 明日迎えに来ると夫婦は言い、帰っていった。


 僕は職員に促され、数少ない自分の物をリュックサックに詰めた。引っ越し。その言葉に少なからず、ワクワクした。そしてこの苦しく、悲しい場所からどこか別の場所に行けると思ってドキドキした。でも同時にまた両親のようにいなくなったらどうしよう。そんな思いにも駆られた。


 晩御飯が終わったあと、施設のみんなにお別れの挨拶をして僕はそのまま眠った。特に個人的にお別れをする人もいなかったからだ。


 次の日。施設の前で僕は新しい両親となる夫婦を職員の人と一緒に待った。見送りに来てくれる人はいない。それが悲しいわけではなかった。でもどうしてか、一年前にいなくなった女の子のことを思い出した。


 女の子に思いを馳せていると夫婦がやって来た。


「お待たせ。さあ、行こう」


 僕の手を握りながら男の人がそう言う。僕は手を繋がれたことにビックリして、返事が出来なかった。


「ふふっ。緊張しないで?さあ」


 女の人にももう片方の手を握られ、そう促されて僕はそれに頷き、夫婦が乗ってきた車に乗り込んだ。


 そうして僕は引き取られた。


 でも、どうしても疑問に思うことがあった。それを聞かないと安心することが出来ない。そう子供心に思った。夫婦の家に出発した車の中の後部座席から意を決して聞いてみた。


「ど、どうしてこ、こんな僕を引き取ったんですか?く、暗くて取り柄なんて何にもないのに・・・」


 すると


「あなたにはとても強い心があると思ったの」


 と女の人は言った。


「君には将来、人の心を読む力が、人の本質を見抜くことが出来る力がある。いや、心と本質を視る眼を持っている。それはとても重要なことなんだ。これから先、家族になる君には」


 と男の人が言った。


「でもね。一番の理由はね、私たちは子供が大好きなのよ。あなたは本当は素直で優しい子。それがあなたの目を見ていて、雰囲気を見ていて何となく分かったの」


 と女の人が言った。


「「だから私たちの息子になってくれないかな?」」


 仲良くシンクロしたその言葉に僕は


「・・・うん。僕には難しいことはよく分からないけど、こんな僕でもいいならよろしくお願いします」


 少し子供っぽくなかったが、しっかりとその問いに答えた。泣きそうになるのを我慢しながら。嬉しくて少し体も震えていたけど、それでも、僕の気持ちが二人に伝わるように。


 そして移動から一時間ほど経ったとき、家に着いた。着いたは着いた。でも、建物が門から覗いても見えなかった。門から車で敷地内に入り、少しだけ車を走らせると家が見えてきた。というか、豪邸だった。


 外観はどこか外国を感じさせたけど、何故か不思議と帰る場所なんてないと思っている僕に自分の居場所だと感じさせる。そんな優しい雰囲気の家だった。


 今の僕では一日使っても見て回れないくらいだ。そう感じた。


「ここがこれから君の家になるんだよ」


 男の人はそう言った。


「ここが?」


「ああ」


「すごいお金持ちだったんですね」


「そんなにすごくはないさ」


 そう言って門をくぐる。


「すごい。こんなに家が大きいなんて」


「まあ、職業柄、立派な家を持たなくちゃいけない部分もあったからね。さあ、もう着くよ」


 そう言うと豪邸の手前にあった車庫に車を駐車し、夫婦は車から降りた。僕もそれに続くように車から降りる。夫婦は僕を両サイドから挟んで歩き出した。


 家に到着した。その事実に再びドキドキが僕を襲う。


「中もひろーい」


 僕は玄関からそのまま数歩歩いて中の広間の中央に止まり、ぐるりと回りながらそう呟く。


「帰ったよー!」


 そう女の人が言うと奥から声が聞こえた。


「おかえりなさーい」


 ぱたぱたと女の子が走ってきた。僕より背が高い。少し年上だろうか。


「この子が新しい家族?」


 女の子は首をかしげながら言う。


「何歳なの?」


「ななさい」


 初めて会った自分と同じ年か少し年上くらいの女の子につい緊張して舌足らずに答えてしまった。でも、女の子は気にしなかった。


 僕のその言葉が嬉しかったのか、女の子は満面の笑みを浮かべた。


「じゃあ、私がお姉ちゃんね!」


 僕と女の子の会話が一旦終わると男の人が話し出した。


「では、自己紹介をしよう」


 そう男の人が言って三人が僕の前に並ぶ。


「君の父親になる高波(たかなみ) (つばさ)だ。よろしく」


「君の母親になる高波(たかなみ) 沙耶子(さやこ)よ。よろしくね」


「これから君のお姉ちゃんになる高波(たかなみ) 美香みかだよ。えへへ~、これからよろしく~我が弟よ!」


 全員が言い終える。


「じゃあ、君の番だ」


 お父さんが僕に言う。


「あ、えっと・・・僕の名前は夏月(なつき)。よろしくお願いします」


 僕は一拍置いて恥ずかしげに言う。


「お父さん、お母さん、お姉ちゃん」









 これは僕が二人の女の子と新しい両親と出会ったことで始まった物語だ。





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