愛しい彼女と会いたくて
いつもの朝……のはずだった。
私は会社に行くために、玄関のドアを開ける。
「やあ」
「!?」
扉の向こうには先日振った元カレが居た。
私はドアを閉めようとする。
でもドアを押さえつけられて、虚しくも閉めることが出来なかった。
一体なぜ……エントランスにはオートロックで施錠されたドアがあるはずなのに……。
俺は先日彼女と別れた。
理由は些細な喧嘩。
飲み会で知り合った女と一夜を共にしただけだ。
俺は彼女がこの世で一番好きで大切だ。
なぜそれがわからない?
「オートロック……」
セキュリティがどうのと言ってるが、俺にとっては紙でしかない。
時間は朝の7:50。彼女が出るのは8:00。
ここの住人がちょうど出社する時間でもある。
思惑通り、初老のサラリーマンがセンサーでエントランスの扉を開く。
「おはようございます」
「おはようございます」
俺はその住人に何の不信感も与えないように挨拶と会釈をする。
そして……あとは彼女の部屋の前で時間を待つだけだった。
「時間にしてはモーニングの時間だな」
俺は彼女の驚く顔を想像して、微笑みながら時を待った。