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おれは人間サラブレッド ANATA号  作者: 桐生 ハム太郎
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第5レース

☆第5レース☆


せりでオーナーが権藤氏に決まって数日後、おれは予測通りに福島の社隊ファームの外厩の総本山である天転ファームに移動した。


実はおれは昔…まだここが出来て間もない頃にここに何度も脚を運んでる。

若い頃にも一口馬主を少しやっていたのだが、その当時に持っていた馬達の外厩の拠点がここで、当時の馬仲間達とここにはよく遊びに来てたんだ。

当時はまだ別のグループ牧場が経営していたのだが、その牧場の親牧場がブッ潰れて、その後にここを社隊ファームが買い取ってここまで大きくした経緯がある。


石田牧場自体は天転ファームと繋がりはないが、オーナーの権藤氏が社隊ファームの上客なせいもあり、ここにおれが入れる事になったのだろう。

まぁ、おれも重賞勝たないといけない身なんで、天下の天転ファームで身体を鍛えられるのはとても助かる話だ。




そしてまた寒い冬を越えて春が近づいて来る。




そんなある日、珍しく権藤氏がおれの所にやって来た。

要件は話の内容で大体は分かった。

話と言うのは…

どうやらおれの真のオーナーは権藤氏の奥様の方らしい。

と、言う事は…もしかして

アホマイヤの冠が付かないって事やん(笑)

人間の言葉を理解するおれは当然のように人間達の要求をこなし、思惑通りに夏競馬からデビュー出来る運びとなったようだ。

厩舎はシズカも世話になった関東の古参調教師である藤平先生のよう。


よしっ、関東所属…ええやん!


昔程ではないが、良血馬は関西に入る傾向が未だに根強く、基本的にあまり遠回りしたくない性格のおれとしては、弱い相手で条件戦は勝ち抜いて、重賞レースは極力空き巣狙いで取れたら最高位な気持ちが強い(笑)

だからデビューは関東がいいと思ってた。



で、そんな下らない妄想をしてる内にオーナー達の簡単な話合いが終わったようだ。

そして、

真のオーナーの権藤花子氏がずっと人の顔見てにやけてる。

「アナタ、アナタ、この子面白いのよ!」

面白がってる花子氏を前におれも調子に乗っていた。


花子氏の「アナタっ」の声に合わせておれも首を縦に振り「ヴフィ」と鳴く。

花子氏も言葉が通じてると思い、何度も「アナタっ」と連呼する。

おれも面白いがってイチイチ反応する。

オーナー夫妻はとても満足してくれたようだ。

おれもイカツイ土建屋のおっちゃんよりはかわいいばぁちゃんがオーナーで良かったと感じてる。



そして…

悲劇はある日突然やってきた。





馬房のサイコパスガールの19と書かれてた所に新しい名前が入るみたいだ。

お、ついにおれも競走馬になるんだな。

バァちゃんにめちゃ媚び売ったからきっとカッコカワイイ名前になるだろう、おれ。

これでも将来は凱旋門賞勝つ予定だから、国際的にも恥ずかしくないやつな、

ヲイ、にいちゃん早く名前貼れよ。



そしておれは47歳+1歳の人生の中でも最大級のダメージを受ける。




【アナタ】




え?


何、それ?

ガチで?

え?それが名前な訳ないよね?


なんか人間の時の様に血の気が引いて行く…

アナタアナタアナタアナタアナタアナタ…

おれの名前…ま、マヂでアナタなのか?




あー

もう何も言えねぇ。




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