☆第18レース UAEダービー 前編☆
☆第18レース☆
UAEダービーとはアラブ首長国連邦のドバイにあるメイダン競馬場で行われる競馬の競走である。
2015年はG2に格付けされている。アル・バスタキヤ、UAE2000ギニーとあわせドバイ三冠の1つに挙げられる競走である。
「ホント、権藤のオッサンは馬使いが荒くてまいるわ〜」
と、口からは愚痴こそ出るが、おれ的には満更…いや、むしろドバイにやって来た事実がけっこう嬉しかった。
一口馬主の最終目標の一つに海外制覇の夢は外せない。ま、何故か自分が馬になって自ら参戦するとか夢にも思わなかったが、来年の古馬G1戦に備えてメイダン競馬場の雰囲気を知れるのはとてもプラスになると思ってる。
無事に入国の手続き関連も終わり、招待馬専用の馬房に来ると懐かしい声に呼び止められた。
「アナタ?もしかして宗ちゃんじゃない?」
そう、声の主は京子だ。
馬齢では2つ上の京子はG1ドバイマイルに参戦するらしい。
次走予定が高松宮記念と両天秤だったのだが、無事にドバイから招待を受けこちらに参戦となったみたいだ。
「宗ちゃん、私ね、これがラストランなんだって」
G1は秋華賞とマイルチャンピオンシップの2つを勝てたけど、私的にはさ、まだ走れると思ってるし…」
なんだか話の本筋は別にありそうな喋り方をしてる京子におれはまともにツッコミを入れた。
「馬としてお母さんになるのは怖いか?」
京子はドキッとした顔をした。
ま、そりゃそうだ。
おれだって、引退後に種牡馬になって【馬】と交尾するとか出来るのかなぁとか考えた事はある。
だってさ、当たり前だけど、おれは心は人間であって、競馬サークル内でも牝馬のケツ見ても興奮しないし、むしろ人間の女に関心を未だに向けてる。
京子も全く同じなんだろうと思う。
「おれも同じだよ。生きてる時は次は馬にでもなりてーやとか言ってたけど、実際は…まぁ、色々考えてしまう事の方が多いよ」
もし、今
この向かい合った馬房に扉が無かったら、おれは京子を抱けただろうか?
京子を人間として見れるのであろうか。
「あ〜。馬として最初の相手はせめて人間馬が良かったわ(笑)」
「そうだな(笑)おれも最初の相手はせめて言葉通じる奴が良かったわ(笑)」
ハハハ
「とりあえず、明日は将来、京子と一発出来るようしっかり勝ってくるわ(笑)」
「そうね、ここで負けちゃうような奴の種は要らんから明日はしっかり勝って来なさい(笑)」
品のない会話だが、おれも京子も久々に仲間達と呑み明かすような楽しいひと時を過ごせた気がした。
これで京子と会うのもホントにラストかもな。
とりあえず先に明日は日本代表として勝ってくるさ。まぁ楽しみにしてなさい|( ̄3 ̄)|