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おれは人間サラブレッド ANATA号  作者: 桐生 ハム太郎
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第15レース ポープフルS 後編

☆第15レース 後編☆


あー

今日はレースの日か。


何となく、何となくなんだけど、やる気がイマイチだ。

もうG1一つ取った余裕もあるが、ここ最近考えていた事がかなり影響してる。

それはやはり【おれは人間】なんだという事。

いつもなら年末は仕事も家の用事も慌ただしく、方々にテンパりまくって、ちょっとした交通トラブルでキレまくったりとかして一番不安定な時だ。

なのに…今のおれは目標を見失い、ただ、飼い葉を貪るだけの家畜。

馬として、一つの区切りがついた事で飽きがきてしまったような感じかも。



「今日も適当に走って適当に勝って適当に終わらすべ」


身体は仕上がってるが、心の方は少し重症かも知れない。




そしてホープフルSのパドック。


おれは聞こえるはずのない声に興奮する事になる。


「おーい、前歩いてるそこのデケェ馬〜。おれの声聞こえるかぁ?」


まさか?

まさかだよな?


おれは後方から聞こえる声に反応する。


「お、やっぱG1。いるじゃねーか、人間馬がよ」


おれはわざとその馬と並んでパドックを周回する。


「お前も人間馬なんだな。初めて人間馬にレースで会ったわ。天転ファームでは京子って人間馬には会ってるけどな」

おれは隣にいる人間馬に呟いた。


「お、アンタが噂のアンタかい(笑)色々聞いてるぜ。強いらしいじゃないの。今日はお手柔らかに頼むわ〜(笑)」

飄々と喋る隣の馬はおれより一回り以上小さく見える。まぁでも、人間馬なんだしかなり強いのだろう。


あ、

こいつ、何て名前なんだろ?

おれはパドックの掲示板からこの人間馬の名前を探す。





【オタク】




……

やべえ、危うく死ぬとこだった。


「なぁ、お前の名前、あれでいいのか?あれだよ、あれ、そう、オタク(笑)」


ちなみにおれは必死に笑いを堪えてるのだが、どうやっても涙が止まらなくて鼻まで出てきだしてる。まぢでレース前に腸捻転で死にそう。

あー

もう我慢できねー。



( ゜∀゜)アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒゴッ!!!ゴホッ!ゴホッオエェェェー!!!

「オメーの名前付けた馬主はバカだろ笑、おれがもしそんな名前付けられた日にゃ、間違いなく舌噛んで死ぬわ、あー間違いねぇ、( ゜∀゜)アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒ…」



あー、苦しい。

ん?


まぁ当たり前だが、隣には怒りで鬼化したオタクがおれの首に噛みつかんばかりの勢いで睨んでる。


「おれは見ての通り、身体も小さいから今、お前とケンカしても勝てねーがレースでは覚悟しとけよ

( ̄Д ̄)忘れんなよ」



「あー、後な、

オメーの名前の方がおれより2千倍くらい変だから。そこ理解した方がええど?」




え?





…そして新たな目標と楽しみの中、

おれの本当のデビューの時間がやってきた。



「本日のメインはG1ホープフルSです。一番人気は前走でダートG1川崎2歳優駿を勝ったアナタが1.9倍の一番人気。2番人気は前走京都2歳Sを繰り上がりで一着になったオタクが5.2倍で後を追っています」



ふーん、あの人間馬、一応重賞勝ってるんだ。

ま、あんな日和ったヤギみたいなのに負ける気はしねー。


「ゲートも順調に進み、最後にカクサンが誘導を受け…スタートしましたっ!!」



「今日はアナタは逃げません。今、馬なりで先頭から5番手に付けています。アナタの隣にはオタクがマークするようにびったりとくっついています」


ははーん。おれの出る位置を塞ぐ作戦かね?どうでもいいよ、好きにマークしてくれよ。


おれ的にはオタクがおれの邪魔してくる事は想定内。

が、オタクの真の作戦は中山の最後のコーナーで各馬が膨れる瞬間におれの外側に張り付く事で、おれがコーナーで膨れた瞬間、派手に吹っ飛ばされたように演技する事だった。

前走も同じ作戦で一着馬を降着させて楽してタイトルホルダーになってきてたのだ。


「おれが派手に吹っ飛ばされたように見せれば、お前みたいなデカイ馬は審議の対象になる。ま、精々最終コーナーまで良い夢見てくれや」

オタクの作戦は人間の脳だから思い付く、シンプルだが効果的な作戦。これを食らったらさすがのアナタもどうしようもないと思われた。


「何だよ、隣の人間馬は…ぴったり張り付き過ぎじゃね?も、もしかして…ホモか?こいつ」

そう思った瞬間、人間時代のトラウマが蘇り全身の毛が逆立つ。


そう。宗一郎は人間時代、異常なほどホモ、ゲイ、ニューハーフにモテたのだ(笑)

「アナタニナラいつでもケツサシダシマスわ〜」

ダメだ、もうゾクゾクが止まらねー(T_T)



「各馬最後のコーナーに差し掛かる。アナタはオタクにぴったりマークされたまま今先頭から4頭目の位置。さぁどう抜け出すのか!?」



とっさの出来事。

おれは首を逆に振り、手前を変えずコーナーに入る。


「あーーーっと、各馬が一斉に膨れる中、アナタの馬体だけが綺麗に最内をトレースする〜!!

こ、これは車で言うドリフトだーーーー!!」


「なんだーー!?」

内から押されるのを想定して走っていたオタクは内に体重を深くかけていたせいで、後続の馬達と激しく交錯した。


「コーナーで内によれたオタクに後続の馬がぶつかり、オタクの騎手が落馬っ!ぶつかった後続の馬も転倒して競争中止っ」





「バツグンのコーナーワークでアナタがドンドン後続を引き離す。今、アナタが先頭でゴールインっ!!」




はぁ。ホモはどこ行った?

おれはレースの勝ち負けも忘れ、近くにオタクがいない事に安心する。



一方…

「ありえねぇ。馬のドリフトなんて滅多に見れないぞ、普通。」

対象的に競争中止になったオタクは怪我こそ回避したが、アナタの能力とセンスに脱帽したまま固まっている。




初めての人間馬とのレースでまさかモーホーと勝負するとかありえねー( ´Д`)y━・~~

あのまま付きまとわれたらまた死んでたかも知れねーな、ホンマ。



もうアイツとの勝負は金輪際無しって事で(笑)



ま、兎に角、

今日は何とかケツも守れましたし、中央G1も取れました!!

似鳥のオッチャン、今日もリンゴよろしく頼むぜっ(=´∀`)








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