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おれは人間サラブレッド ANATA号  作者: 桐生 ハム太郎
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第11レース

☆第11レース☆


札幌2歳Sを勝った事でおれの評価は更に多方面に意見が分かれたようだ。


A「あれはバリバリのスプリンターでしょ。気性の荒いオルフェーブル産駒の典型だね」

B「2歳は芝しか大きいレースないから仕方ないけど、あの調教の走りを見る限りあれはダートの方が走るね」

C「ちょっと頭飛んでるとこはオルフェそっくりだけど能力は高いね。でもダービーとかはどうだろうね」


一つ共通点があるとすれば、やっぱり気性的にあまり長い所はダメかもと言う意見がほとんどを占めた事か。


まぁだからと言って、札幌2歳Sで一応1800メートルを克服した訳だし、2400メートルのダービーが絶対ダメかと言われたら走ってみないと解らん所はあると思うし、基本的に短距離馬ばかりが賞金を多く獲得しようものなら…


得意距離1200〜1600メートルの短距離馬ばかりのダービーの可能性だってあるわけだし(笑)



藤平先生も次走はどうするかまだ悩んでるみたいだ。

そしておれは北海道の帰りにまた福島の天転ファームの外厩に入る事になった。

2.3日のんびりしてからまたびっしりトレーニングする事になるだろう。


「さすがに石田牧場に放牧は無かったか、ちぇっ(笑)」

おれの僅かな希望は瞬殺された。

でも、ここの施設で筋トレをするのが一番間違いないと思うので、サボらずにビシっとがんばろう。





そして…


そんな天転ファームでのある日、おれは衝撃的な物を見る。


いつものように天転の坂路を鼻歌混じりに駆け上がっている。

背中に乗ってる人間にはとても歌には聞こえないだろうが、バリバリのバラードを気持ちよく歌ってる。

三代目ジェイソウルブラザーズだな。

ん?オッサンが若い歌とか止めろって?

まぁどうせ周りにこれが聞こえてる奴なんていないんだからほっといてくれ…


と、思ってた。



「あら驚いた、私以外の馬人間にここで遭うなんて」



………


「え?」



おれの斜め後ろにいる芦毛の牝馬。

ま、まさかおれと同じ馬人間か??


「そんな驚く事じゃないよ(笑)決して多くはないけど、私達みたいな人間のまま馬になった人は世界中にいるわよ」


芦毛の牝馬が続けて喋る。

「私は関西馬の京子。あ、馬名はレインスザクよ」


「あ…あ、おれは関東所属の宗一郎。馬名は…」


馬名は…

あーまさかこの名前で自己紹介する日が来るとは思わなかったよ。

くっそふざけんな、ババァ(笑)



一番言いたくない馬名を言う前に京子がテンポよくまた話し出す。

「宗一郎、じゃ、貴方の事は宗ちゃんと呼ぶわっ」

…そうそう、おれはアナタで宗ちゃんなのよ、ブツブツ。



おれは京子と並んで歩いてる僅かな時間に、聞ける限りの事を教えてもらった。

かなり驚いたが、おれや京子以外にもまだ人間馬が多数いるのも教えてもらった。



正直…もっと時間があれば京子から京子の知ってる限りの事を全て教えてもらいたかったが、そこはやっぱり人間に管理された馬である以上難しい。


衝撃の事実。

でも…おれがこの姿で今、ここにいるわけだから意外と不思議な事ではないのかも…



その後も京子とは何回か同じ調教時間に出会す事は出来たが、なかなか思うような話までする事が出来ないままおれはまた藤平厩舎に戻どされた。




まるで

解ける事のない知恵の輪を手渡されたような気分だよ、ホント。







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