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おれは人間サラブレッド ANATA号  作者: 桐生 ハム太郎
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裏開催10レース

☆裏開催10レース☆


「とうちゃん、やった、やった〜〜〜!」

テレビの前では雪ちゃんが半狂乱状態で凄い事になっている。

まぁ無理もない。

アナタ=クロことおれが重賞を連勝したんだから、そりゃ小さい牧場なら大騒ぎになる。


この牧場、本来ならオルフェーブルを種付けする資金だって大変だったんではと思うが、初めてこの牧場産で重賞ウイナーとなったシズカにだけはまた、トリプルクラウン(三冠馬)を種付けしたい石田さんのこだわりがあった。

偶然にもこの時代に何とか頑張れば手が届く価格でオルフェーブルが種付け出来た事が素晴らしい。

先代の社長が勝負をかけて輸入したシズカの祖母にナリタブライアンを付け、更にその血統にジャングルポケットを付けて産まれたのがシズカ。

ジャングルポケット自体は今は種付け料安いので、石田牧場がオルフェーブルの種付け料を払うのがどれだけ大変だかも何となく想像が付く。


「やっとダービーに出れそうな馬が出来ました」

石田の社長が部屋の片隅にある仏壇に報告をしてる。

雪ちゃんも

「じいじぃ、クロがダービー勝つのを応援してやってね」


経営は正直苦しい。

でも…石田の社長の雪ちゃんが一人前になるまでは、悪魔に魂を売ってでも牧場を守るという覚悟が、丈夫なクロの身体とおれの魂を呼び寄せたのかも…とおれも今は思ってる。


おれも実はまだ小さい子供がいる。

離婚して親権を元妻に譲ったわけだが、正直…娘と一緒に暮らしていたら人間時代に自暴自棄になる事もなく、馬車馬の様に今も働いていたに違いない。


競争馬として生きていてもたまに雪ちゃんに会いたいと思うのは多分、

娘と雪ちゃんがシンクロしちゃってんだろうなと思う。




そして同じ頃…




「ねぇ、宗ちゃん。この馬、名前変だけど凄い強いよ。」

勢津子は病室のテレビから札幌2歳Sを観戦してた。


「よくさ、職場のバァちゃんの真似とか言って、…」

「ちょっと、ちょっと、アナタ、アナタとか認知の真似してたよね(笑)」

勢津子が思い出し笑いをする。

そう、宗一郎は事故に遭う前は介護施設で働いていた。

口癖は「最後くらいは人の役に立つ」だった。



まさか、その変な名前の馬が宗一郎だとは勢津子も思わない。


が、


何故かアナタがとても気になり、アナタの出るレースは今後観ようと思ったようだ。

言葉ではない何かを感じたのかな?





ふと

宗一郎を見つめる。



「あれ?」



宗一郎の口元が少し笑ってるように見える。




勢津子の目から大粒の涙が溢れ出した。





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