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令嬢遊戯

作者: 睡蓮

初投稿です

なんとなく思いつき勢いのまま書きました

設定の緩さは生暖かい目でスルーを(´・ω・`)

「なんだと?」

ある部屋の一室で綺麗な顔を歪ませ言葉を発した男と

その男の前に涙目で小さく震える可愛らしい少女

そしてその少女の隣には精悍な顔の男がいた


「それは……本当なのか?」

綺麗な顔の男は信じられないとでも言うような表情で

少女に聞いた


「は……はい。私も最初は信じられなかったのですが…」

俯き、心の痛みに耐えているかのような少女


「そう……か…。嫉妬してそのようなことをしたと?」


「はい。私が仲良くしているのを見てなのだと…」


「それが本当ならば…」

綺麗な顔の男は何かを決意したかのように少女とその隣にいる男を連れて部屋を出て行った









◇◇◇◇


ここは広大な敷地に建てられた貴族の子女、子息が将来のために通う学園

そのため、授業は多岐に渡り語学や歴史、数学等といったものから体術、剣術、マナー、外交といったものまで様々


貴族であるがゆえに求められるものも多く自らが必要とする授業を受け、将来のために役立てようと義務ではないにも関わらずほぼ全ての貴族が通っていた


その学園にいくつかあるカフェテラスの一つ、白百合の庭で4人の令嬢が紅茶を飲みながら和やかに会話していた


「そういえば、あの噂知ってるかしら?」

光に当たりキラキラと輝くような金の髪を横に緩く纏めた伯爵令嬢オフィーリア


「噂ってあの少女の噂ですの?」

緩いウェーブのブラウンの髪をハーフアップにしている伯爵令嬢ユフィー


「最近その方の話はよく耳にしますわね」

流れるようなストレートの長い髪の侯爵令嬢マリエル


「その方がどうかしましたの?」

白銀の腰まである髪の侯爵令嬢カミーリア


4人は学園に入る前からの友人で幼い頃、親に連れて行かれたお茶会で知り合い同い年だったこともありよく遊ぶ間柄だった


「ええ、彼女が最近色々な殿方にアプローチしているのよ」


「それはよくあることじゃないオフィーリア」


「そうね…けれど、アプローチした殿方を囲うようなことをしているのはよくあることじゃないでしょう?」


「「「まぁ…!」」」


オフィーリアの言葉に3人は返す言葉を失った


学園には将来の結婚相手を求めてくる生徒も多く、貴族の義務ともいえる政略結婚は一部の上流貴族がほとんどだった


侯爵令嬢の2人は学園に入る前に決められた婚約者がいる

伯爵令嬢の2人は学園で知り合い婚約をしている


しかし4人に共通するのは4人ともがお互いの婚約者と相思相愛であるということ

義務として婚約しているはずの侯爵令嬢2人も誰が見てもお互いを想い合い仲睦まじい


「けれど、囲うだなんて…淑女としてどうなのかしら」

ユフィーの発言も最もなことで、国では一夫一婦制となっており、王のみが血筋を守るため側室が認められている


とはいえ、上流貴族も血筋を残さなければならず公にはしないが正妻に子供ができない場合に限り妾を迎えている

長い歴史の中で男性に種がなく妾でも子供ができないとき、正妻が妾を持つこともあった


「女性が妾を持つことがあるとはいえ、それは結婚した何年も後のことですものね」

マリエルは気分を落ち着けるため紅茶を口にして、ほぅっと息を吐いた


「風紀は乱れますけど、実害が出なければお好きにすればよろしいと思いますわ」

カミーリア自身、名前を聞いたことがある程度の相手は気にもしていない

これが自分や周りに害があれば違ったのだろう


3人がその言葉に頷いた

実害というのは社交界や領地、国へのことであり学園の中のこととは切り離して考えているためであった


そんな話をしているとカフェテラスの入り口から見知った男性をカミーリアは見かけた

その男性はカミーリアを見つけると真っ直ぐに向かってきた

その後ろには女性と男性も一緒だった


「カミーリア」

声を掛けてきたのはさらりとした黒髪で左目の下にホクロがあり、整った顔以上に溢れ出る色気で社交界でも学園でも有名なウィンチェスター侯爵アーサー・マクミランだった


「まぁ、アーサー様ごきげんよう。どうかなさったの?」


「友人達とお茶をしているときにすまない」


「構いませんわ。そちらの方はどなた?」


カミーリアは持っていた扇子を広げちらりと後ろにいる少女を見た

目が合った瞬間、少女はビクリと肩を揺らしアーサーの腕に手を添え怖がるような仕草で俯いた


カミーリアはとても美しいと社交界でも評判だが、キツイ目元と冷たそうな雰囲気から青薔薇の令嬢と呼ばれていた


そしてあまり変わることのない表情とカミーリアにアプローチをして散っていった男性も多く、笑顔を見ることと手に入れることは不可能だという意味もあった


「ああ…彼女はフォーブス伯爵のご令嬢でアンジェリークという。それでカミーリア、君に聞きたいことがある」


アーサーは紹介するときにさり気なく掴まれている腕を外した


「なんでしょう?」


「君はフォーブス伯爵令嬢に嫉妬から悪質な嫌がらせや噂を流していると彼女から聞いた。もしそれが本当なら……私は……」


アーサーは最後言葉にすることができず眉間に皺を寄せ少し俯いた


「私が?そこの令嬢を知ったのも今日が初めてだったと思うのだけれど?」

パチリと扇子を畳み、首を傾げる


「そんな…!あんなひどいことをしているのにあんまりです」

アンジェリークは胸の前で両手を組涙目になりながら訴えてきた


心当たりのないカミーリアはオフィーリアへと目を向けると

(あの女性知っていて?)


(彼女が例の女性ですわ)


とアイコンタクトで会話した

それを見ていたユフィーとマリエルもなるほど…と顔には出さず納得した


「ひどいこととはどんなことかしら?」

この状況とアーサーと彼女の言動から実害を被るかもしれないと思い立ったカミーリアはうっすらと笑みを浮かべ、見る者を凍りつかせた


それを見たマリエル達はカミーリアが楽しそうにしているとわかり目の前の少女を気の毒に思った


「私がアーサー様と仲良くしているからといって、ダンスの授業のときわざと足を引っ掛けてきたり、ランチのとき私の食事に虫を入れたり、他にも……っ!」


されたことを思い出したのかポロポロと涙を流しながら、それでも目を背けることなくカミーリアを見ていた


その様子は健気にも立ち向かおうとしているようにも見え、そしてその言葉は真実であるように思えた


「先程、私は貴女を初めて知ったと言いましたわよね」


「そんなの、なんとでも言えるわ」


「それもそうね…では、私がその数々の嫌がらせを貴女にしたとして私に何のメリットがあるのかしら?」


「私にカミーリア様の婚約者であるアーサー様が取られるという嫉妬からでしょう」


「そう…」

カミーリアは少し冷めてしまった紅茶を飲み、アーサーを見た


「カミーリア…本当に、嫉妬からそんなことをしたの?」

アーサーは静かに、だけれどそれは咎めるような声色ではかった


「もし、私がしたと言ったらどうしますの?」


「それが本当なら…私は……」


「認めたわね!してないようなことを言っていたけど本当はしたんじゃない。アーサー様、このようなことをする方は婚約者に相応しくありません。アーサー様の本当の気持ちを伝えて下さい」


アーサーの言葉を遮り、アーサーの気持ちを分かっているとでもいうかのようにアンジェリークは上目遣いで見つめた


その少女の様子を隣で呆れたように見ていたレイモンドはさすがに止めようと手を伸ばしたとき視線を感じて4人がいる方へと目を向けるとレイモンドの婚約者であるマリエルから


(何もせず見ていて)

とアイコンタクトをされ、アンジェリークを止めようとした手を下ろした


「カミーリア…本当に嫉妬からそんなことをしたのなら……」


アーサーは一度落ち着けるためなのか大きく息を吸いゆっくりと吐いた


「こんなに嬉しいことはないよ」


「は?」


アーサーはそれはとても嬉しそうに、そしていつにも増して色気を溢れさせていた


その言葉についていけなかったのはアンジェリークただ1人


「え?あの…アーサー様?悪質な嫌がらせをしていたのですよ?なぜ…」


「なぜって、そんなの決まってるじゃない。カミーリアが嫉妬したんだよ?それだけ私のことを愛してるってことだろう?」

何を当たり前なことを聞いてるんだ?とでも言うかのように言うアーサーにアンジェリークは一瞬そうか…と納得しそうになった


「おかしいですよ!ひどいことをする女性ってことなんですよ?それが婚約者でいいんですか?」


「フォーブス伯爵令嬢こそ何を言ってんだ?そんな嫌がらせ程度、社交界ではよくあることだろう」


「そんな…!」


社交界では男性でも女性でも足の引っ張り合いはよくあることで、それをいかにあしらい弱味を見せないかが重要となる

嫌がらせが露見すれば多少は評判も落ちるし付き合いも減るかもしれないがそれだけのこと


「アーサー様」


「ん?なんだい?」

カミーリアの呼びかけに蕩けるような笑顔で応える


「私、嫉妬から嫌がらせをしたとは一言も言ってませんわよ?」

カミーリアはわかる人が見ればそれはそれはとても楽しそうな表情をしていた


「……」

先の会話でやったとは言ってないことに気づいたアーサーは悲しそうに目を伏せた


「そうだった…確かに言ってないね。そうだよね、カミーリアが嫉妬なんてするはずがなかったね…」


蕩けるような笑顔が一転、哀愁漂う色気


「マリエル、アーサー様のあの色気はどんなときでもなくなりませんのね」


「本人が無自覚ですもの仕方がありませんわオフィーリア」


「あの色気に吸い寄せられる蝶が後を絶ちませんわ。カミーリアという婚約者がいることを知っていても関係ないんですから」

ユフィー達3人はヒソヒソと話ながらことの成り行きを見守っていた


「でも、少しくらい嫉妬したりは…」


「ありませんわ」

僅かな希望に縋って聞くアーサーにニッコリきっぱり言い切る


「なによ……なんなのよ…」

ようやく呆然としていた意識を取り戻したアンジェリーク


「嫉妬しないならいいわ!私がアーサー様を奪っても構わないわよねぇ?だって嫉妬する程の愛情がないんだもの」


カミーリアへの宣戦布告とも取れる言葉に一番心に刺さったのはアーサーだった


「愛情が……ない…」

いっそ可哀想なほど意気消沈していることにアンジェリークは気づいていなかった


「まぁ…!ふふ、有り得ないでしょうけどもしそうなってしまったら仕方ないことですわ」


「そんなに余裕でいられるのも今のうちだわ。後悔するわよ」


「ふふふ…頑張って下さいませね?」


カミーリアのその態度に更に火がついたのか、見ていなさい!と怒りを露わにしアンジェリークは去って行った


残されたのは楽しそうなカミーリアとそれを見る3人の令嬢、可哀想な目でアーサーを見るレイモンドと意気消沈しているアーサー


「ちょっと…いいの?あんなこと言って」

オフィーリアの問いかけにユフィーとマリエルもカミーリアを見た


「あら、構いませんわ」


「本当にアーサー様があの方へ心移されるようなことがあったらどうしますの?」


そんなことはないだろうと思いながらも可能性があるかもしれないことをマリエルは危惧していた


「そのときは私に魅力がなかっただけのことですわ。ねぇ?アーサー?」


未だに哀愁漂うアーサーへ向けて言葉と視線を送る


「…っ!」

それを受け止めたアーサーは意識を取り戻し、カミーリアへと近いた


「カミーリア…俺が離れていったら…」


「アーサーが私から離れることはありませんわ」


「リア…!」

傲慢ともとれるカミーリアの言葉にアーサーは深い愛情を感じていた


カミーリアの言葉はアーサーからの愛情を信じ、受け止めそして同じだけ愛情を返しているからこそ出る言葉だった


「リア…愛しているよリア。俺が離れてしまえばきっと君は追ってきたりはしないんだろうね…だからこそ俺はリアから離れられない。リアから愛を貰えなくなるなんて考えたくもないよ」


座っているカミーリアの後ろから優しく抱きしめ、頬に口付けをする

カミーリアは何事もないかのように紅茶を飲み、満足そうに微笑んだ


その様子に見慣れている4人は平和な日常と少しの熱を感じながら午後のお茶会を再開したのだった








◇◇◇◇

「レイモンド様、なぜあの令嬢を連れてきたのです?」


「あー…以前からうるさ……やかまし……しつこ……あー…積極的だったから面倒になってな。アーサーがどうにかなるわけないのは分かってたし、あの2人の様子を見せればもう来ないだろうと思ったんだけどな」


あの日のことを思い出しながらレイモンドは自分が思っていた予想と違ったことに驚いていた


「それは残念でしたわね」

マリエルはレイモンドがこっちに問題を丸投げしようとしていたことに気づいてあの場でレイモンドに黙っているように促し、カミーリアの楽しみに乗ることにしたのだった


「マリエル、怒っているのか?」


「そうですわね…ほんの少し怒っていますわ。そちらの女性問題を私達に解決させようとするなんて」


にっこりとしているが目が笑っていないマリエルにレイモンドは苦笑した


「悪かった」

そう言ってマリエルの頬をそっと撫でる


「ふふ、もう怒ってませんわ。でも、カミーリアが楽しんでいるのだからしばらくは貴方も大変でしょうね」


これから起こることを予想しマリエルは小さく笑った

ここまで読んで頂きありがとうございます

反響があればアーサー視点も書いてみようと

思ったり思わなかったり(´・ω・`)

2/22 アーサー公爵の名前をウィンチェスター侯爵アーサー・マクミランと変更しました

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