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灰色と白 1




苛烈な猛攻を続ける白と灰色の二体の機械兵。戦局が動いたのは、灰色の背後から光の束が煌めいた時だった。


その光の向こうには、3体の灰色の機械兵の姿があった。対する白は一体。灰色の勝ちは濃厚である。


数の有利をとられ、白は徐々に追い詰められていく。しかし、単機での実力は白のほうが上なのか、未だなんとか拮抗を保っている。


「白、頑張れ!」



なんて、自分の状況を省みずに不利な方を応援してしまうのも、日本人のサガなのであった。




◇◇◇





『脚部に被弾。損害レベル、グリーン。戦闘続行に支障なし。』



様々な光が明滅するコックピットで、合成音声がパイロット――皇国軍第22特殊作戦部隊所属イブライト・アリシアに告げる。


その町行く人の殆どが振り替えるであろう整った細面には、僅かな焦燥が浮かんでいた。



「増援はまだなのか……!」



『周囲に味方機の信号なし。先程要請した増援の到着予想時間 約5分。』



分かりきったような律儀な回答しかしない補助システムの言葉に苛立ちながら、敵機の攻撃に対して応戦する。



『13時から高熱源反応。

推測 敵機増援による援護射撃。

推奨 迅速な回避。』



「くっ……こんな時に……!」



間一髪の所で回避するが、白煙の向こうには3体の敵機が見える。4対1。不利過ぎる状況だが、なんとか耐えきるしかない。離脱もさせて貰えないだろう。こうなったら――


――機体は失うだろうが、仕方ない。





「……認証コード scarlet.」




『警告 リミッターの解除には当機への多大な負担とES-SPHEREの損傷が――』




「やれと言っている……!」



『認証。リミッター解除。ES-SPHEREオーバードライブ。粒子タンク全解放。』



彼女の機体の節々に「力」が溢れる。敵を蹂躙するための、圧倒的な力が。


『全稼働系にエネルギー過充電。完全解放完了。行動不能まで、あと3分。』



時にそれが彼女の身を滅ぼすことになると知って。それでも力はとどまる事を知らない。


漏れ出た力の残り火は、いつしか機体を内側から照らしていた。赤く、炎のように染まった彼女の機体は、右手に持った砲を敵に突きつける。



「さあ来い。人形共……!」


4対1。圧倒的に不利な状況ながらも、敗北を感じさせないその姿。深紅に染まった白は、今、その力を解き放つ。








◇◇◇







「スゲー!」



今光ったアレ、ト○ンザム的なやつだよな?!


……何を隠そう。最初こそ異常事態に焦ったものの、巨大ロボット同士のリアルな戦いを見てめっちゃ興奮しているのだ。


二次元の世界に入ってしまったかのような感動。さらにその再現のような物まで見れたのだ。興奮しない訳がない。



まあ、そんなものを間近で見ているので、熱波とかも相当な訳だが。なんか赤く光ってから更に暑くなった気もするし。




そういって油断しているのも束の間、先程とは比べ物にならないくらいの赤い光が放出された。




暑い。暑すぎる。溶けそうだ。



……いや、待てよ。何で自分は無事なんだ?よく見たら周りも焦土と化してるし。とても人が生きてられる環境ではないーー



突如、轟音。先程の一撃でやられた灰色の機体が黒煙を上げながら落下してくる。

よくよく見たらこっちに落ちてくるじゃないか。




ヤバい。逃げなきゃ。




全速力で走り出す。取り敢えず落ちてきそうな所から遠ざからないと。ヤバい。本当にシャレになんない。逃げろ、逃げろ、遠くへ。せっかくここに来たのに死んでたまるか。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない――




遂に黒煙が地面と触れる。瞬間、閃光。あっという間に広がる爆風が、自分に迫ってくる。



「ヤバ――」



死の黒煙は、無慈悲に、そして平等に、世界と同時に自分を包み込んだ――






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