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1/7

プロローグ



キーンコーンカーンコーン。


恐らく全国共通であろうチャイム音。若干頭髪の薄れてきた数学教諭が手を止める。


「えー。本日は以上です。号令。」


日直の合図に合わせて礼。今日の日程は終わりなので鞄に荷物をしまっていく。誰にも話しかけられることなく、再び座る。


 程なくして静かになると、担任からの話があり、帰りの挨拶。ああ、ようやく開放される……


今からさっさと帰って我が家の愛機達を愛でよう。ああ、まだ塗装途中のプラモデルがあったな。あと今季のお気に入りアニメもやるんだったか。まだ7話目だったが話の山がきちんとできていて面白かった。漫画も評判も良かった気がするな。局部描写に定評のある漫画家が描いているらしかったが……


まあ、今いろいろ考えてもどうしようもない。とにかく今は厳重にブックカバーで保護しているラノベに細心の注意を払わなくては。


人に見られたらえらいことだ。オタクだってことがバレる訳にはいかない。


え?オタク?キャハハ、キモーイ!……なんて言われれば心は間違いなくへし折られるだろう。不登校になることも確定だ。うん。



……今までの自分の心の声を聞いてきた諸君にならわかるだろう。自分は、俗に言う「陰キャ」という人種である。オタク。ガリ勉。友達少な目。視力は0.3でメガネ。まあ、なんだ。皆さんの思い浮かべるイメージのまんまでOKだと思う。


 しかし、断じて勘違いしないでほしいのはコミュ障ではないということだ。一応ちょくちょくアニメのオフ会には顔を出していて、それなりにそっち方面の知り合いはいる。ロボット物であればトップクラスの知己も持ち合わせており、それゆえに交流の深い友達もいると宣言しよう。あくまでも、少ないだけなのだ。

 ……学校での友達の数は触れないでいただきたい。



 とは言っても、やっぱり陰キャには変わらないので、非日常にあこがれる気持ちは今これを読んでいるような皆さんと同じ気持ちである。二次元万歳。


 

 さて、さっさと靴を履いて学校を出てしまおう。それがいい。


 この時間帯は、ちょうどリア充が校舎前にたまっていて、一番いやな時間なのだ。周りには目もくれず、全速力で校門へ、そのまま先の道路を突っ切って……



―ーおい!あぶねえぞ!!―-


声が聞こえた。ふとして立ち止まる。


―ーお前だよ!お前!―-


「え?」




 横からトラックが迫って来るのが見えた。10メーターくらい先に。ん?これって間に合わなくね?

けたたましいブレーキの高音が当たりいっぱいに響きわたる。迫りくる鉄の塊が、自分のほうへ近づいてくる。時間が永遠に引きのばされ、記憶の一片一片が鮮明に。やばい。死んー







 --でなかった。眼前30センチくらいのところで止まったみたいだ。あぶない。異世界転生テンプレを踏むところだった。


―ーチッ―ー


まだ、声が聞こえる。



―ーなんでぶつかんないかなー?もういいや。エイッ!―-


 突如、めまいが―ーいや、違うな。まるで世界自体が揺れてるみたいだ。吐き気もしてきた。景色が、体が、どろどろになっていく。気持ち悪い。何かの夢か?ならばそうであってほしい。だんだん。意識が溶けていく。狭間に落ちていく。物質の、その先の――






◇◇◇






 蒸し返したような風が頬をなでる。だんだん意識が覚醒してきた。遠くから雷のような轟音も響いてくる。先ほどから体が痛い。いったいここは――


 目を開けた。一瞬疑ったが、間違いない。明らかにそうだ。文明大国日本ではありえない光景。どこまでも続く赤黒い大地。ここは――荒野である。


 いや、あきれた感じで字を読まないでほしい。ぶっちゃけ見覚えがなさ過ぎて、本当にわからないのだ。


 ただ、これまでのテンプレートにしたがって状況を考えるならば、俗に言う「異世界転生」なのではないかという事も考えられる。正直に言おう。めっちゃ興奮している。


 遂に、自分も転生デビューかと思うと、夢が叶ったも同然なのだ。二次元にほぼほぼ近い世界。きっと世界観は中世ヨーロッパ風の剣と魔法の世界に違いない。そこで現代知識を駆使して生活していけば一躍村のヒーローに。ゆくゆくはハーレムなんかも……


 ……そういえば、やけに先ほどから轟音が鳴り響き続けている。だんだん暑くなっている気もするし、音も大きくなっているような?



 突如、今までと比べ物にならないほどの熱と音が襲った。上空には閃光が輝いている。飛び交う光の筋の数も増してきている。


 さらに熱波まで襲い掛かってきた。舞い上がる砂埃。遂に耐え切れなくなって目を閉じる。幾分か吸い込んでしまった塵のせいか堰が止まらない。



 ようやく、落ち着いてきた。未だに鳴り止まぬ轟音の方へ顔を向けると、そこには――







 ――二体の、鋼鉄でできた「ヒト」が戦っていた。






 




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