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モブ令嬢アレハンドリナの謀略  作者: 青杜六九
アレハンドリナ編
9/22

お姫様抱っこはいい匂い

前話の投稿時刻設定を誤りました……。昨日3話進んでおります。

私は一人で図書室に行き、暇つぶしになりそうな本を探していた。休み時間ともなると私の教室に押しかけてきていた王子が、例のナイフ女に追われているのかぱったりと来なくなり、一人の時間がたっぷりできたのだ。

ここはひとつ、友達でも作ってみようとクラスメイトに声をかけたものの、皆遠巻きにして去っていく。


一体なんだ?

私、何か嫌われるようなことしたっけ?


メラニアの騒動は、うちのクラスに何の影響もないよね?

あの子が勝手に騒いだだけで、殿下も丸く収めてくれたし。

授業中にいびきかいて寝たり、舟を漕いで机に顔面を強打したことはあったけど、皆に何も被害はなかったでしょうよ?必要最低限の会話しかしないのって何?私、村八分にあってるの?


「クラスのみんなが冷たいんです」

職員室でバルドゥイノ先生に相談したけど、先生は私と目を合わさずに、

「そのうち馴染むよ、大丈夫」

と短く言って追い出した。

大丈夫って何ですか?もう一年切ったんですけど?適当な気休めはやめてください。


ということで、友達百人作戦は失敗に終わり、このひと月は専ら本とお友達だ。

図書室の本はめぼしいものは読んでしまった。残るは哲学の棚、図鑑の棚、経済……うん、やめておこう。

寝る。絶対寝るよね?私。

昼休みには食堂でキラキラグループを観察したいが、一人でじろじろみるのは明らかに怪しい。知らない奴と相席になるのも窮屈で嫌だったので、最近は図書室に籠りっきりだった。


続き物の小説の四巻を探し、背伸びをしていたところに、横から誰かがぶつかってきた。

「痛!」

バランスを崩した私は、思いっきり尻餅を……っていうか、パンツ丸見えじゃない!

慌てて裾を直す。ぶつかってきた奴を睨む。

「すまない。……け、怪我はないか?」

目の前の男は立て膝をついて私に手を差し伸べた。少し癖のある艶めく黒髪に、誠実そうな青い瞳。……ビビアナ嬢のお兄さんだわ。

レディのパンツを見ておいて、「怪我はないか」ってどうなのかしら。こっちはガラスの心臓が砕け散りそうだっていうのに。


「ええ。ご心配なく。……よっこらしょ」

掛け声をかけなければ立ち上がれない。お尻が猛烈に痛い。絶対青あざになったわ。

「……っと、いっ……」

左の足首に体重をかけた瞬間、ビキビキと痛みが走った。

顔を顰めた私に気づき、ビビアナ兄、もといクラウディオは私の腰に手を回した。

「足首を捻ったのか?……全て僕のせいだ。責任を持って医務室に連れて行く」

ええ、全部あなたのせいですよ、と言ってやりたいが、いきなり抱えられて声が出なかった。


お姫様抱っこだ!

小さい頃お父様に抱っこしてもらって以来だわ。他人だとこうも新鮮なのね。

それに、クラウディオは煙草くさいお父様と違って、ちょっといい匂いがする。

胸に顔を近づけてスンスンと匂いを嗅いでいると、

「泣かないでくれ……君に泣かれたら、僕は……」

と申し訳なさそうに呻いた。

全然泣いてないですよ?匂い嗅いでただけですから。

鼻をすすっていると勘違いしたのかな。彼からは私の顔は見えないし。

まあいいや。さっさと医務室で手当てしてもらいましょ。


   ◆◆◆


足首に包帯を巻かれ、医務室の先生には「迎えが来るまで絶対安静」と言われた。

それ以来、ひたすらベッドの住人と化してる私。

暇だ。

暇すぎる。

図書館から出てくる時に、本の一冊でも持ち出してくればよかった。ちっ。


迎えが来るまで……ん?迎え?

迎えなんか来るか?しばらく学校には通えないから、家から馬車でお母様が迎えに来るのかな。堂々とサボれるのは嬉しいけど、毎日お小言の嵐だろうな。複雑。

足首が完治するまで何をして過ごそうかとぼんやり考えていたら、先生は私が寝たものと思ったらしい。カーテンの向こうで誰かと話をしている。


「怪我の具合は?」

あ、この低い艶のある声。バルドゥイノ先生だわ。

「軽く捻っただけだから、二週間もすれば治ると思うわ。なあに?あなた、そんなにあの子が心配なの?」

あれあれあれ?医務室のアリアドナ先生、言葉に棘がびっしりですよ?

「拗ねるなよ、ドナ。君は別格なんだから」

「別格ね。……まさかあなた、彼女に手を出していないでしょうね?死ぬわよ、社会的に」

「分かっているって。アレセス家を敵に回して平気でいられるほど、俺は豪胆じゃないよ」


ええと……。

つまり、バルドゥイノ先生とアリアドナ先生は、人に言えない関係ってことですよね?

で、私に手を出そうとしたバルドゥイノ先生は、アレセス家にビビってるってこと?

……イルデの家じゃない!

イルデが先生を脅したから、先生は私の相談に素っ気なかったんだわ。

ちっくしょー、イルデの奴、次に会ったら文句言ってやるわ。


……と。

私、いつからイルデに会ってないんだっけ?



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