短編 試作
初投稿で試作です
拙い文章だとは思いますがお手柔らかに
日記A
俺はこの生まれ育った街を潰した商人を探している。あいつはこの国にガラクタを売り付け逃げた。俺がまだ子供の頃、沢山の金を使って何かを買う国の人間誰に聞いてもこれは役に立つものだといって聞かなかった。終いには子供に対して暴力を振るうようになった。まだ子供だった俺には何を買っているのか分からなかったけど、取り憑かれたように何かを買っている姿はとても不気味だった。
その「売られたもの」に効果がないと判明するまでにそんなに時間は掛からなかった。泣き出す大人、怒る大人、何も言わなくなる大人。そんな憐れな姿は子供の俺には酷いものに映った。
誰のせいでこんなことになったかの言い争いになり、国民は国の長のせいにした。やがてそれが原因の反乱が起こり国は国王軍と新しい国を作ろうとする新政府軍に分裂した。この戦争は今も続いている。こんなはずじゃなかったのに。あの商人さえいなければ平和な国だったのに。怒りで俺は壊れそうだ。
商人の話
ある日、この国に飴玉しか持っていない異国の商人が入国した。何でも商人は自分の国から追い出されたらしく、本当に飴玉と最低限の荷物しか有り合わせがないらしい。
「で、なんでわざわざ飴玉なんて持ってるんだい」
「これは我が国の特産物でして…。」
男は入国した国の住人に聞かれる度、同じことを答えこれ以上は語らなかった。
その数日後だろうか、男は突然その飴玉を売り始めた。
「この飴玉は人を強くする飴だあ!一個銀貨20枚で売ろう!」
この国での銀貨20枚といえば、一人分の米が1ヶ月は食えるであろう額でした。当然住人は相手にせず、その商人が開いたみずぼらしい屋台の前を通る度に鼻で笑うもの、うるさいと罵声を浴びせるもの、あげくに商人に暴力を振るうものと酷い有り様でした。しかし商人はいつまでもニコニコして飴玉を売り続けていました。住人たちはやがて不気味に思い、屋台に近づかなくなりました。
時は経ちまた数日後、この国に旅人がやってきました。痩せていて如何にも弱々しい旅人です。海沿いで魚が美味しく治安も悪くないこの国に訪れる旅人は多くないため、住人はいつものことだろうと特に変わらない生活を送りました。しかしこれに食い付いたのが商人です。
「1回うちの飴玉を舐めてくれないか。」
商人は何度も何度も旅人に迫り、とうとう根気負けして飴玉を舐めました。実際住人もどんな効果があるのかは気になっていたようで、飴玉を舐める旅人を眺めていました。
「これといって体に変化はないですけど…、なんかちょっと元気になった気がします!」
「そうか、それでいいんだ、効果は既に出ている」
住人は首をかしげました。
「ちょっとそこの方、この旅人と戦って頂けますか」
商人はガタイの大きい如何にも強そうな住人を指定しました。痩せていて弱々しい旅人をこんな大男と戦わせるなんて無茶だ。とその場の誰もが思いました。
「俺も舐められたもんだな、秒で片をつけてやる」
誰もが秒で片がつくと思いました。大振りのパンチで旅人に迫る大男。しかし誰もが予想しなかったことに旅人はその攻撃をひょいっと避けたその流れでローキックを繰り出し、逆に秒で終わらせてしまったのでした。これには住人もざわつきました。不正を疑うもの、飴玉の効果を信じ出すもの、大男を馬鹿にするもの。
「これで効果は実証できたはずです。なんならこれから来る全ての旅人に試してもいいですが恐らく皆強くなると思いますよ。」
妙に自信がある口調の商人の言葉通り、来る旅人全てで試したがことごとく強くなり、しまいには国の長を護衛をしているものまで出たが敵わなかった。この時点で商人の言葉は完全に説得力を持っていた。
「飴玉買った!」「私も!」「俺もだ!2つくれ!」
飴玉は飛ぶように売れた。そして商人の手持ちの飴玉がなくなった時には、既に商人は次の国へ旅立っていた。
日記b
僕は商人をしている。飴玉を売る仕事だ。少し旅をして国を見かけたら自分の国に知らせる。そうしたらこの商売に必要な出来るだけ弱い見た目の強い男が自分の国から駆けつけてくれる。僕らの国にはこの飴玉を売るために、訓練施設と見た目の成長を抑える薬が開発されている。この飴玉で得た金が国の資金にもなっているからだ。こうして旅人として入国した僕らの国の住人はサクラとして、飴玉を売るために働いてくれる。やがて住人は騙され、飴玉は飛ぶように売れていく。たまに賢い人間がいて疑ってかかってくるものもいるけど、大体その他大勢が騙されてくれるから流されてくれる。まあ一人くらい買ってくれなくったて売り切れるから良いんだけどね。
そうして飴玉を売り切ったら騒ぎになる前に国を出る。こうやって僕の国は儲けている。数年前旅人として来たときは分からなかったけど、良くできたシステムだなあと思う。まあ騙された国の人間には申し訳ないけどこうしないと僕らの国はお金が無くなって滅んじゃうから仕方ないかな。
日記C
前の日記から何十年経っただろうか。数十年前に書いた日記が見つかったからもう一度書いてみる。俺はまだ商人をしている。入国してから色んな住人に助けられ生活を安定させることが出来た。ここは入国してからずっと平和そのものを体現したような国のままだ。貧困している国民もおらず、努力次第で富豪になれる可能性がいつでもある。まさに貧困した俺が望んでいた国かも知れない。嫁も出来て家庭も出来た。まさに理想の生活を送っている。
ここまで書いて彼はそっと日記を閉じた。自分はこれで良かったのか。これが望んだ生活なのか。確かに目標は達成されなかった。恐らくこの国で商人は生きているのだろう。でも俺は家庭を持った。安定した収入もある。これが幸せなのか――――――――。
俺は考えるのを辞めた。これ以上書くことのないだろう2ページの日記を破り捨てた。
日記d
どうやら最近僕が飴玉を売った国から旅人がこの国に流れ着いてきたらしい。どうやら自分の国の内戦が原因で安全な地を求めて旅をしていたらしい。幸いここは裕福で安全な国だ。「可哀想な」境遇の彼を助ける手段は沢山ある。職も沢山あるし、旅人でも収入を安定させることは容易だろう。彼が幸せな生活を送ることが出来たら良いなあ。
ここまで書いて「僕」はそっと日記を閉じた。
― 商人達の日記 終 ―
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