いらないっていわれた私だけれど 詩
虐待されたということは、他の人と感覚がクロスしないことが多い
それだけ根深い問題だ。
いらないって言われ続けたこの体に
小さな小さな命が宿った
いらないって言われ続けたこの体の中で
小さな命は毎日少しづつ大きくなり
10ヶ月経った
いらないって言われ続けたこの体から
あなたは生まれた
ぶたれまいとして必死に庇いつづけてきたこの手で
私は初めてあなたを抱きしめる
小さな小さなあなたは元気に泣いていた
「産んでくれてありがとう。」
あなたのお父さんは
右手であなたの頭にそっと触れながら
左手で私の頭をなでながら言ってくれた
ずっと言って欲しかった言葉を急に与えられて
私は涙腺が壊れるかと思うくらいずっとずっと泣きっぱなしだった
私はお母さんになるのが
とても怖かった
今でも怖くないと言ったら嘘になるけれど
私をお母さんにしてくれたあなたはとても強いね
蹴られて痛くて夜中に声を出さずに泣いていた背中に
今はあなたが抱きついてくる
「だいすき」って言ってくれる
叩かれて赤くはれ上がっていたかつての頬に
あなたはキスをしてくれる
痣だらけだったこの足にあなたはなんの
ためらいも無くまとわりつき
「遊んで」ってきらきらした目で見つめてくる
あなたとの毎日はすべて驚きの連続だった
私は何も知らずに育った
これがいとおしいという気持ち
私に家族を教えてくれた
知らないことが多すぎて
分からないことがありすぎて
あなたをどう育てたらいいか迷って迷って不安が膨らんで
色々なことを後悔しそうになって
時々泣いてしまうけれど
そんな時にもあなたは優しいね
「お母さん、いたいいたい?」って言って
ティッシュを差し出してくれる
小さな小さなあなたの手
ありがとう
わたしはあなたやあなたのお父さんや周りの人に助けてもらって
ほんとに感謝している
知らないことばかりで落ち込むこともあるけれど
色々と欠けちゃっている私だけれど
いらないって自分を思いつづけるのはもうやめにしたい
私には
「だいすき」って言ってくれる人ができたから
私は要らない存在じゃないって
私から生まれたこの命が教えてくれた
私は生まれてきて良かったんだって
私は私にそっと言ってみる
「生まれてくれてありがとう」
人生、誰でも幸せになる権利があるのです。