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ヤンキー娘、リドリーと風呂に入る。

 家に…といっても、今日買ったばかりだからまだそんな実感はねえんだけど、帰り着いたアタシを待っていたのはやっぱり四つ足だった。どうやってか主寝室のドアノブを器用に回して廊下に出たらしく、ドアを開けたとたん玄関ホールの天井から降ってきたのである。タイガーの仔は全身総毛立ち、リドリーは失神。ゴードンは腰を抜かしただけで済んだものの、アトルは失禁する始末。



「あー、ごめんよ、言っとけばよかったか。まさか寝室から脱走してるとは思ってもなかったからな。こいつはアタシの舎弟の四つ足だ。」

「お、おう、そ、そうか。…襲ったりはして来ないんだな?」

「勿論だ。…たぶん。」

「たぶんってなんですか!?」



 盛大にツッコミを入れてくれたアトルの頭をぐりぐりと撫でる。冗談冗談大丈夫、と頭をぽんぽんしていると、ギルベルトのジッちゃんが色々と掃除用具を手に現れてアトルをマシューのジッちゃんに預け、手早く掃除を済ませていた。何やら手がピカーとか光ったりしているけど、気のせいだろ、多分。



「…すまねぇ。」

「何、いいってことよ。」



 四つ足に纏わり付かれながらゴードンが立ち上がるのに手を貸して、戻ってきたマシューのジッちゃんに預けてからアタシはリドリーをお姫様抱っこして風呂場へと連れて行く。だってよ、女の子1人官舎に放り出すってのはダメだろ。しかもちょっとクサイからお風呂には入れてあげたいのよ。アタシも今日は1日張り切りすぎて臭えだろうしな。いつの間にか控えていたギルベルトのジッちゃんに、アタシの着替えを2人分と風呂用のタオルとかを準備してもらうよう言いつけていると、腕の中でリドリーが目を覚ました。



「え…?あ、あの…?」

「おう、目が醒めたかよ。」



 アタシの笑顔にリドリーは真っ赤になった。それと同時に自分の置かれている状況もわかったようで、小さな蚊の鳴くような声で、降ります、と話した。



「ごめんな、この蜘蛛の四つ足はアタシの舎弟なんだよ。リドリーを襲ったりはしないから、安心してくれ。」

「は、はい。」

「それでよ、まずは風呂に入ろうぜ。従業員用の官舎もあるんだけどよ、あっちは男が4人だしリドリーはこっちの風呂を使ってくれよ。ギルベルトのジッちゃん…」

「はい。了解致しました。男性恐怖症という話でしたから、仕方ないでしょう。ただ、官舎に部屋は準備致しますから、住むのは其方に願います。…いいですね?リドリー。」



 いつの間にかいたギルベルトのジッちゃんに何か言う前に続けられてしまったけど、ま、べつにいいかと流した。リドリーも頷いてるし。ギルベルトのジッちゃんは着替えを藤製のカゴにそっと入れると、頭を下げてスマートに脱衣場から出て行った。やっぱ渋いぜ。アタシが服を脱いでいる間、元々一枚しか身につけていなかったリドリーはすぐに脱ぎ終わっていたようで、なぜか顔を真っ赤にしながらそばで佇んでいた。寒くなっからさっさと中に入ればいいのによ。



「ほれ、行こうぜ。寒くなっちまう。」



 頷いてついてくるリドリーをそのままに、アタシは置いてあった桶でお湯を掬ってリドリーの体に掛けてやる。…細っこいけど、体のラインは綺麗なんだよな。ちゃんと肉付けて丸みを帯びたら絶品だぜきっと。傷痕だけはちょっと可哀想だけどよ。…ん?



「リドリーは風呂は好きか?」

「入った事、記憶に、ない。」

「ずっと入ってねぇのか?」

「体は、拭いて、ました。」

「そっか。じゃあ教えてやるぜ。湯船に入る前によ、こうやって一回身体の汚れを流してやるのがマナーなんだ。んで、一回あったまったらちゃんと体をゴシゴシ洗おうぜ。」

「はい。」



 アタシは腰掛けに座らせたリドリーに、更にお湯を掛けて流してやる。傷痕にもう一度目が行った時、ふと存在を思い出した。



「ライナス、アンタこの子の傷痕治せる?」

『御用かい?詩織。』



 ヘアピンの辺りから光がゆらゆらと顔の前に揺らめいたかと思うと、巻いて玉のような格好になる。前もこんな感じだったか。声が聞こえない様子のリドリーは不思議そうな顔をしていたが、光の玉が現れたのには気付いたようで、様子を伺っている。



『お安い御用、と言いたいところだけどね。それには僕を彼女に…そうだな、丸一日は預けて貰わないとダメだろうね。』

「なんだ、それくらいで治るのかよ。そんじゃ頼むぜ。」

『詩織!?』

「なんだよ、いいじゃねぇかよ。女の子の体に傷残しとくなんてダメだろ。しかもこの子はアタシのものなんだ。治せるのにほっとくなんてそんなん許さねぇよ。」

「??」

『…仕方ないなぁ。』


 不思議そうな顔をしているリドリーの髪に、そっとヘアピンを差してやる。



「これ、は?」

「おう、これはアタシが持ってる魔道具なんだけどよ。命の精霊のライナスが中に入っててよ、傷とか治してくれんだよ。だから、1日それ着けてな。寝るときもだぞ。」

「ありがとう、ございます?でも、今、怪我、してない。」

「いいからいいから。ってほら、寒くなっから湯船に入ろうぜ!」



 アタシは盛大にお湯を頭っからザッパンザッパン被ると、ててててっと走って湯船に滑り込んだ。



「くーっ、熱めでいい風呂だぜ。ほれ、何してんだよ早く入れよ。」

「はい。」



 リドリーも控えめにお湯にするっと入ると、私から少し離れた所に座った。…何やら視線を感じるな。アタシはリドリーの所まですすす、っと近付いた。そしておっぱいを持ち上げるとぱふん、とリドリーの顔を挟んだ。



「な、なな、何、を」

「いや、何か見られてるみたいだったからよ。」

「…おっきい、羨ましい。」

「たっぷり食ってたっぷり寝て、たっぷり働けば丁度よく肉が付いて胸も大きくなるだろよ。今でさえそこそこ綺麗なおっぱいしてんだからよ、栄養充分になりゃあさ。」

「…この、くびれも、すごい」

「うひゃあ!…くすぐってぇ!」



 急に手を伸ばしたリドリーがアタシの腰やら尻やらおっぱいやらを確かめるように触って、ムムム、と唸っている。アタシはにひひ、と笑うとリドリーの腰から腿のラインをさわさわっとなぞる。



「ひゃあああ!」



 ばしゃあん、とリドリーが慌てて振り回した手が盛大にお湯を叩く。アタシはすっくと立ち上がると、ううう、と体を抱きしめるリドリーに手を差し出した。



「よっし、洗いっこしようぜ。ギルベルトのジッちゃんが石鹸も持ってきてくれたからよ。」

「ご主人様に、洗って、貰うのは、畏れ多い?」

「何が畏れ多いんだよ。立場はちょっとアレだけど、友達(ダチ)だと思って頼むぜ。」

「と、友達、今迄、いた事、無い、けど」

「んじゃあ初めてのダチってことでよ、ヨロシク!」



 のんびり浸かってゆっくりしたアタシ達を、男共はご飯をお預けで待っていてくれたらしい。アタシは奴隷とか雇ってるとか関係無しにみんなで食べたい、と伝えて、食堂でみんなで食べる事にした。だってよ、アタシがご主人様だからってよ、1人だけで食べるのなんてヤダぜ。つまんねぇよ。普通は使用人とは一緒に食べないってことだけどよ、そんなのどうでもいいじゃん。



「いただきます!」



 アタシの声にみんなが一斉に食べ始めた。特にアトルとゴードンの勢いがスゲェ。アタシもよそ見しないで食べようとリドリーの方をちらりとみると、ちまちまと、でも笑顔で食べているのが見えて、アタシも笑顔になった。ジッちゃん達はなんだか上品に食べてんな。アトルもゴードンも、ぶかぶかの服にこぼさないよう気を付けてはいるらしいが、やっぱりがっついているせいか、アトルは溢してしまっている様子。ギルベルトのジッちゃんが、小声で嗜めている様子がおかしい。



「みんなで食べるってやっぱいいな。アタシが仕事の時はみんなと食べられるのは朝くらいだけど、出来れば一緒に食おうぜ。」

「わかりました。そう準備致しましょう。」



 楽しかったご飯を終えタイガーの仔を連れて寝室へ戻ると、やっぱり疲れていたのかアタシはバタンキューと寝てしまった。夜中目が覚めた時、タイガーがお腹の上で丸くなっていた。ちょうカワイイ。


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