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ヤンキー娘、街に入る。

 日が傾き、肌寒くなって来始めた道をアタシはずるずるべったんとデッキシューズで歩いた。ばーちゃんの家の田んぼへ行く道もこんなんで舗装されてなくて、雨の日は靴をドロドロにしたっけ、と思い出した。


 森の中を一日歩き回ったけど、天気はよく過ごしやすかったんじゃねぇか、と思う。日が傾いただけでこれだけ涼しくなるんだから、きっと夜は寒くなんだろうな。家に帰れれば一番だけど、ダメならダメでカツアゲした金で何処か泊まる場所でも探さねえと。そんなことを思いながら高けえ塀?壁?に囲まれた街に近づく。なんか、漫画で見たような革の鎧を来たおっさんが二人、街の入り口っぽい所に立っている。こっちに気が付いたみてえでおっさんが一人、手招きしてる。槍持ってるし、まぁ喧嘩をいきなり売ることもねぇだろう。街に入れてやらねぇとか言われても困るし。



「おう、嬢ちゃん。身分証かなんか持ってっか?」

「?学生証ならあっけどよ。ほれ。」



 素直に学生証を差し出したアタシだったが、受け取ったおっさんは怪訝な顔でそれを受け取った。



「学生証だと…?みたことねぇ所のだな。おい、ダントン。これおめえ確認したことあるか?」



 ダントンと呼ばれたもう一人のおっさんが寄って来て学生証を裏返したりして眺めて、首を振った。



「初めて見るな。うちの国のじゃねえみたいだが…。精密な肖像画までついてるが、使えんのかまではわからんな。」

「ああ、流石にこれは一回アレ使うか。」

「そうだな、じゃあ悪いがちょっと待っててな。詰所から読み取り機持ってくるから。」

「お、おう。」



 アタシには何のことだかさっぱりわかんねぇが、なんか検査でもするんだろうか。ダントンのおっさんが手に小さい何かを持って帰ってきた。



「これをこうして…む。すまん嬢ちゃん。この学生証じゃ証明にはならんようだ。ひっ!」



 思わずガン付けちまった。



「…そ、そそそうだな、街の出入りには身分証が無ければ税金がかかるんだよ。こ、この街で何もなくても身分証を発行出来そうなのは冒険者ギルドだが、ど、どうする?」

「あぁ?場所わかんねーんだけど、すぐ行けんの?」



 ダントンのおっさんは怯みながも門の内側を指差した。笑顔が若干引きつってるな。…あ、いきなりは喧嘩売らねえって思ってたんだった。スマイル、スマイル。



「す、すぐそこだよ。手続きすりゃあ一時もありゃあ発行してくれるさ。…お嬢ちゃん可愛いから発行してすぐ見せてくれりゃ税金見逃してやるぜ?」



 可愛い、の言葉にちょっと照れたが、それ以上にむさいおっさんが急に顔を赤らめたこともあってか、アタシは即正気に戻った。きめぇ。



「わーったよ。おっさんの言うとおりにしとくわ。あの建物な?」

「あ、ああ、まだしばらく俺らが当番だからな。終わったら見せてくれ。」

「あいよ。」



 アタシは苦笑いをしているもう一人のおっさんにもひらひらと手を振ると、冒険者ギルドとやらの建物に入る。


 建物の中は明るい開放的な作りで、通りに面した部分に大きな窓が幾つもついていた。肌寒くなってきたということもあってか窓は閉まっているけど、建物の中はとても明るい。



「カウンターのお姉さん、身分証作りたいんだけどさ、どうしたらいいかな?」

「こんにちは。そうね、ここがどういうところかって知ってるかしら?」

「ん?冒険者ギルドってーのは聞いたけどよ。」



 丁寧な口調で話してくれているお姉さんだが、こめかみにビキッと筋が浮いたのをみて、もしかすると同類かも、とアタシは思った。ここも下手に出た方がいいかもしれない。



「ちょっとこっちに来てくれるかしら。詳しく説明するわ。」

「あいよ。」



 手招きするお姉さんの方にカウンターを回り込むと、そこには狭いながらも応接セットが置かれていた。フカフカの椅子を勧められてアタシはどさっと腰を下ろした。お姉さんも向かいに腰を掛けると、何枚かの紙をテーブルに置いた。



「それじゃあ説明するわね。まず、大まかな所からね。

 この冒険者ギルドというのは冒険者同士の互助組織です。」

「ごじょ、そしき…。」



 あかん、アタシには既に高度過ぎる。ごじょそしきってなんのことだ。



「そうです。当ギルドは国の干渉すら跳ね除ける大きな組織です。人口が一定以上の街には大抵支部が存在してまして、そこで色々なサービスが受けられます。そうですね、主に依頼の受領に終了に関する手続き、モンスター素材の一括買い受けに、貴女の求めている身分保障です。また、宿や食事の提供も有料ですが行っています。」



 おお、飯も寝る所も一発解決!素敵じゃねーか。



「その代わり、所属すれば色々な義務も発生します。毎月一件以上の依頼の完遂。これは隊商の護衛や遠方の場所指定の討伐、探索依頼など長期に亘る依頼の場合は免除されますし、怪我などで働けない場合も届け出がされていれば免除されますね。それと、緊急依頼発生時の参加義務。これについては…」



 む、難しいと眠気が………Zzz…。



「ふべぁっ!」

「ちゃんと聞いてくださいね?」



 どうやら手にしたバインダーみたいなので叩かれたらしい。痛かった…。



「まぁどこまで聞いていたのかはわかりませんが、登録する以上、ギルドの品位を落とさないよう自覚を持って、きっちり仕事を完遂させてください。」

「わ、わかったよ、じゃなくて、わかりました。」

「はい、それでは冒険者証を作りましょうか。手を出してくださいね。」

「お、おう。」



 アタシがバッと手を出すと、お姉さんは持って来ていた袋から一枚のカードを取り出した。



「ちょっと手のひらに乗せたままにしててくださいね。すぐ済みます。」



 お姉さんは袋から今度は四角い箱を取り出してボタンをぽちぽちと押した。するとカードに文字が浮き上がってきた。なんじゃこりゃ。



「どれどれ、成功ですね。」

「お、おう。」



詩織・飯田

16歳 人族

レベル12

格闘家


HP 1840/2120

MP 320/320


STR 65

STA 92

DEX 82

AGI 88

INT 9

LUC 131


スキル

威圧レベル5/ど根性レベル4

女神の魅了レベル3

自動翻訳レベル5/格闘術レベル2

交渉術レベル3


エクストラスキル

成長50倍


賞罰なし



「スキルが多いですね。というか、エクストラスキル持ちなんて初めてみました。レベルの割りにステータスが凄いのはこれのせいですか…情報は少し隠しておいたほうがいいかもですね。」

「へぇ。」

「大体は想像がつくとは思いますが、分かりづらいスキルの詳細は…。」



・ど根性(レベル4/5)

 気合と根性によってあらゆる耐性を含めた全ステータスの向上と、武技、魔法の威力の向上が発生する。


・女神の魅了(レベル3/5)

 笑顔をトリガーに、スキルの所持者を見ているもの全てに好感度の著しい上昇が発生する。また、完全に魅了された者にはスキル所持者のLUC×女神の魅了レベルの二乗パーセントがボーナスとして加算される。



「…最低でもエクストラスキルと魅了は隠しておきましょうか。それと交渉術も、自動翻訳もありますし商家での仕事をもらうにはいいかも知れないんですが…INTがちょっとアレですから、これも隠しましょうか?」

「まあアタシ馬鹿だからな。それでいいよ。」



 馬鹿だと思われるのは仕方ない。さっきも居眠りしちまったからな。それにしても腹減った。。。



「それでね、冒険者証発行手数料なんだけど。2ゴールド5シルバーになるけど、大丈夫かしら?」

「うーん」



 アタシはカバンからカツアゲした金を入れた袋を取り出すと、ジャラジャラと机の上にそれっぽいのを並べた。



「この辺で足りっかな?」

「この辺、ね。」



 お姉さんはひょいひょいと金色のコインを2枚、銀色の小振りなコインを5枚拾い上げた。きっとそれがゴールドとシルバーなんだろう。アタシオボエタ。

 残りのコインを袋に戻した所でお姉さんに聞いてみた。



「ここって飯美味えの?」

「安くて量がたくさん。濃い味付け。」

「なるほどね…。」



 まあアタシは何食わせても大抵うめえっていうからつまんないって言われるくらいだからきっと大丈夫だな。めし、めしっと。


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