中途半端
「帰宅ナウ」
「取り敢えず、手を洗え」
ただいま午後の3時。まあ、一休みして、晩飯食って、風呂に入って、宍戸殺して、エロいことして、首吊って……。
「まあ、十分な時間か」
うん。
「なあ、冬樹」
「あー?」
隣でバシャバシャと水で両手を流す喜央。動作一つ一つの雑さがなんともらしいと言うか……。
「合体しようぜ」
「まだ昼間だぞ」
おい。
「いーだろ。俺達、世間一般の恋人が出来る様な時間は残されていねーんだぜ?」
「まー、そうだけどな」
言わんとすることは分かるけど、こんな時間からっていうのは今一ピンとこねーな。
「良いから、抱け!」
「脱ぐなバカ」
「いてっ!?」
話しの途中で勢いよくTシャツを脱ぎ捨てたバカにでこピンをお見舞いする。この痴女が。
「いーじゃねーかよー。残り時間少なくなって、お前とくっ付いていなかった時間が出来ると、絶対後悔するんだよ俺」
ぶんぶんと両手を振って、必死にアピールしてくる喜央。ガキか。
「ガキでも良いから合体!」
訂正、バカか。
「馬鹿でも良いから「はいはい、天丼天丼」
適当に茶々を入れながら、さっさと話を進める。
「つってもまー、俺も半分くらいは同じだけどな」
多分、死ぬ段階になって、こいつと一秒でも無駄に離れていたら、絶対に後悔する。
「……はぁ」
俺が、「同じ」の「お」を言いかけたあたりで、ガバッと抱き付いてきたこいつは、ピタッと体をくっつけて、梃子でも動かない体勢に入っている。なんていうか、母猿にピタリとくっついた子猿の様だ。
「なあ、喜央」
「ん゛~?」
あ、半分泣きが入ってる。
こいつは、悪い意味での依存型だ。まあ、良い依存て聞いたことはねーけど。まあ、つまるところ、俺と離れること自体を内心かなり怖がっている節がある。逆に、俺が居れば、たいていの事は問題なく出来るし、日常生活にも支障はない。