ウイークエンダー
ウイークエンダー「再現フィルム」という響きは今の
40代お父さんにとっては懐かしさと共に少し恥ずかしく
しかし、井上順さんではないけれども「お世話になりました」
という複雑な心持ちになってしまうのではなかろうか。
土曜日の22時から23時までという、遅い時間帯にも
かかわらず、ドリフと並んでいや、それ以上にPTAからの
悪評高く、俗悪番組の代名詞のような存在であった。
それだけ、多くの少年が土曜のこの時間にウイークエンダー
「再現フィルム」を如何に見るかに奮闘したということである。
昭和50年から約9年間放映されたウイークエンダーは
「パーパラパパパ・パラパパパ。新聞によりますとー」で
始まる事件紹介番組で、世間で起こったもっぱらB級事件を
各レポーターが面白おかしく紹介するという物。
今ではすっかり大物女優の雰囲気漂う泉ピン子さんもこの
レポーターをやっていた。司会は漫画家の加藤芳郎さん。
チャップリン似の人のよさそうなおじさんでほとんど
喋らなかった。
で、件の「再現フィルム」だが、これが必ずと言っていい
ほど、エロであった。意識的にエロ事件を取り上げていたの
だろう、ウイークエンダーのメインディッシュと言っても
いい存在。とにかく間違いなくオッパイが出てくるのだ。
青年期の男の子にとってこれ以上魅力的な番組はない。
Gメン75のエンディングテーマ「面影」やアニメ
「ハクション大魔王」を歌っていた、しまざき由理さんの
担当コーナーで、しまざきさんが真面目に、言葉を押し殺す
ようにして事件概要を簡単に説明すると次の
「それでは、再現フィルム、どうぞ」には、ほとんど正座を
して固唾を飲んで画面を食い入るようにして見るのだった。
ところが、そうはあっさり「再現フィルム」に熱中することは
出来ない。何せ、オッパイは出てくるは、喘ぎ声は出てくるはの
大人にとっての俗悪番組だから、親に知られてはいけない。
中学生になっていたかどうかの頃だから今となっては当然の
欲求だとは思うのだけれど、当時は、罪悪感一杯。
だけど、オッパイが見たいのはどうしようもない欲望。
青年はこういう葛藤をしながら成長していくものなのです。
リモコンも無い時代。挙げ句の果てにはテレビのチャンネルを
回す部分が壊れてしまっていて、ペンチで掴んで回さなければ
他番組に変わらない。そう、親が不意に進入してくる気配が
したときにはチャンネルを回さねばならないのだ。音量を最小限に
してペンチでチャンネルを掴みながらじっと見るオッパイ。
もう客観的に見ると漫画である。
ウイークエンダーに限らず昭和の時代には、いわゆる俗悪番組と
呼ばれる物が様々な圧力にも負けず頑張って放送していた。
それを何とかして見ようと権謀術数を図る子供達。この緊張関係が
心身の成長に役だったことは確かだ。教育番組よりも俗悪番組を
何とかして見ることによって、我が世代は成長したのだと思う。
だから、今の少年達が俗悪ソフトでゲームをやっているから
教育上悪いとか言うのは随分と表層的な見方だと思う。
見よ!「再現フィルム」で育った昔、子供で今はお父さんと
なっている大半のオヤジたちは立派に成長して会社で偉そうに
しているではないか。