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旅の末路  作者: 銀雀
5/7

事件

明るい未来が見え始めた頃、一族のほとんどが希望を持っていた。

しかし、あと少しというところで悲劇は起きた。


そして、出発前夜。

村の皆が寝静まっていて、湿っぽい空気が流れる少し天候の悪い夜だった。

突然、夏季とは言えあまりの暑さに耐えかねて何事かと目が覚める。

予想だにしなかった光景が目に飛び込んできた。


『火事だ!』


火がすごい勢いで迫っており、とにかく冷静にと、慌てて家屋から逃げ出した。

すると深夜なのにも関わらず辺りが明るく、熱い。

信じられないことに、燃えていたのは自身の家屋だけではなかった。

近隣どころではなく、辺り一面が火の海で燃え盛る音と建物が崩れ落ちる音がうるさい。

なのに自分以外誰も外へは出てこない。

異変はそれだけではなく、誰の悲鳴さえも聞こえてくることがなかった。


『みんな起きろ!火事だ!』


返事が一切なく、人だかりから生まれるいつもの活気がまるで感じられない。

とにかく手当たり次第叫び、家へと突っ込んで行った。


『おい逃げるぞ、火事だ!』


家へ侵入した矢先、部屋で人が寝ている。

慌てて駆け寄り声をかけ担ぐが、一切起きない。

それどころか、冷たくなって息もしていないようだ。

外まで運んでみてようやく脈をとるが、絶望的な気持ちをより煽るだけだった。

その他の家も、同様に向かったがみんな同じ有様だった。

火の勢いと共に不安も増していく。

そして脳の中をある存在が駆けた。


『翠…!』


すぐさま彼女の家へと向かった。

しかしその考えに至る所でようやく自分の息が異常なまでに上がっていることに気がつく。

煙を吸いすぎたにしては体が重すぎる。

足を引きずり向かう中、翠の家が見え始めたとき戸口からガスマスクをつけた軍服の人間が数人出てくるのが見えた。

その内の一人に、死んでいるのか生きているのか遠巻きで分からなかったが、肩腕を無気力に垂らしている翠が抱えられていた。

そしてそのあとに戸口から、空が続いて出てくるのが見えた。


『翠っ、空…!』


意識が朦朧としていたが周りの火の音に負けじと声を張り上げた。

するとそれに気づいた軍服の彼らが拳銃を取り出し銃口をこちらへ一斉に向けた。

思考回路が停止し、緊張のあまり体が硬直した。

しかし直後、空がその態勢を制止するために軍服の集団へ片手で合図した。

そして、彼女はこちらへ向かってきた。


『空、これは一体』


『みんなを売ったの』


『な・・・』


一瞬、何を言っているのか理解が出来ず、放心状態に陥った。

しかし、構えている軍服の集団を見なおしその場の状況を把握した。

軍服の集団は、政府から送られてきた人間だろう。

あまりにも衝撃的過ぎる告白だった。


『大変だったよお、夜な夜なさあ、政府の人に密告するのも、今日の宴の準備も何もかもねえ』


『翠をどうするつもりだ』


体の自由が利き辛くなっている分、より思考が落ち着かなく焦らされていた。


『きかないんだ~、あたしがどうして』


『翠をどこに連れて行く気だ!!』


自分とは打って変わって落ち着いた調子で話す彼女の言葉を遮り、思い切り叫んだ。

しかし直後、耳を抉るような大きな音と共に鈍い激痛が走り、勢いで後ろに倒れ込んだ。

すぐに左肩のあたりを押さえ込むと、徐々に血が滲み出す。


『みどりみどりうるさいなあ。

何もできないくせに村長気取って、結局は誰も救えてないじゃない』


自分へのその物言いと共にようやく、彼女が首謀者なのだと実感した。


『この、偽善者』


言い返す力もなく火が燃え盛る中、そのまま意識を手離した。


どうにも空さんの性格が出せずに過去編が終わってしまいましたが、次ページから目立たせていこうと思っています。

そこで空の読者様なりの性格を確実ではなくとも掴んでいただけると幸いです。

ここまで読み続けていただきありがとうございます。

そして物語の最初に短編だと言い切って申し訳ありません。


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