異常
街から離れた静かな森の中、小さな廃家が存在した。
木造のその建物は、建っているのもやっとの状態の、傷んだ床や壁が目立った廃家だった。
森の動物たちも寄り付かないその建物はとても普通の人間が暮らせる場所ではない。
日暮れが迫るころ、その廃家の中では一人を軸に地獄絵図が広がっていた。
叫び倒れていく相手の血潮が視界をよぎる。
彼の周りにはついさっきまで息があった人間たちが転がっている。
物心がつく前から、他人に終止符を打つことを繰り返してきた彼には、返り血を浴びることも、いとも簡単に倒れる存在に対しても何も情がわかない。
彼には、常人離れしたこの戦闘センスはこの世で一番憎い人間を陥れるための道具でしかない。
彼は、怨みゆえに生きていた。
ただいつもと違ったのは、珍しく視界のはっきりした時間からの刺客だということで、興味が沸いていた。
元々、この場所に佇んでいたのはここが怪しいと睨んだからである。
「吐いてもらおうか。誰の差し金だ」
そう言いながら、最後の獲物をゆっくりと壁際に追い詰めた。
欲しいのは情報だけでそれ以外に興味はない。
突然自らを襲ってきた賊を返り討ちにしたあと、ただの賊ではないと察知した彼は問いただす。
カラン、と最後の一人が牙を投げ捨てた。
「待て、俺は何も知らねえ。ほ、ほんとだ、ついさっき金で雇われただけなんだ」
それを聞いたあと無抵抗の示しとして武器を捨てた獲物を容赦なく潰した。
そして一人、廃家を飛び出し森へと駆け出した。
辺りは夕日が射しかかって、動物たちも静まりかえった静寂のときだった。
街とは真逆の森の奥へ、向かっていく。
彼は先ほどの賊の、ついさっき、という言葉に反応した。
普段、襲撃に来る刺客たちは雇われたにしろ、時間を見てやってくる。
そしてやってくるのは、手慣れているその道専門のものばかりだ。
余程の脳の無さの賊を刺客として利用したところに即席さが読み取れた。
先ほどの賊から情報を手に入れ確信を得ることが出来た。
間違いなく、この近辺にいる。
目標の有益な情報を持った仲間か、目標自体が。
「!」
突然、大きな発砲音が聞こえ、彼めがけて鉛弾が向かってきた。
夢中で駆ける足を止め、持ち前の反射神経でナイフを出しそれをはらった。
「こんなにすぐに追いつかれるとはね」
ほとんど短編ものですが、続きます。
描写も感情表現も下手ですが、自分なりに時間もかけました。
読んでいて明るくなる要素が全くありません。
なるべく色々なものを書いてみようという気構えで執筆致しました。
よろしかったら最後までお付き合い頂けるとうれしいです。