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家庭教師の1年間  作者: マック アダソン
エピローグ
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エピローグ

高校生活が始まった。

 中学三年の頃には遠く感じていた高校生という立場も、気がつけば現実のものとなっていた。

 新しい授業が始まり、受験勉強に追われていた日々とは違う時間が流れ始めていた。

 もちろん不安が消えたわけではない。

 それでも、中学三年の春に抱えていた「高校へ進学できるのだろうか」という不安は、もう過去のものになっていた。

 振り返れば、この一年間には多くの出来事があった。

 塾を辞めたこと。

 家庭教師と出会ったこと。

 英検三級に挑戦したこと。

 評定二・九に落ち込んだこと。

 面接対策を繰り返したこと。

 そして高校合格。

 その一つ一つが、当時の私には大きな出来事だった。

 しかし二〇一三年のあの頃の私は、まだ知らなかった。

 この先、自分の人生を大きく変える出会いが待っていることを。

 中学時代から高校時代にかけて、私は友人が多い方ではなかった。

 人との関わり方に悩むことも少なくなかった。

 だからこそ、その年の十月に始まる一つの関係が、自分の人生にこれほど大きな影響を与えることになるとは想像もしていなかった。

 家庭教師と出会った同じ二〇一三年十月、私は後に『九年差の同じ別れ』第一章を書くことになる「彼」と出会う。

 その時の私は、まだ何も知らなかった。

 その出会いが三年間続く関係になることも。

 思春期の私に大きな影響を与える存在になることも。

 親に知られないように手紙を書き、返事を待ち、自分なりの方法で関係を続けていくことになることも。

 そして、その関係が後の私の考え方や生き方にまで影響を与えることになることも。

 当時の私には想像もできなかった。

 その出会いは学校で配布された、全国の小中学校へ届けられている公的な媒体物の手紙がきっかけだった。

 私はその手紙を手に取り、一通の手紙を書いた。

 それが始まりだった。

 ただ男性と手紙で出会った。

 その程度の認識だったのである。

 まさか非対面の文通が三年間続くことになるとは思ってもいなかった。

 しかし振り返れば、その出会いは私の思春期を支え、多くのことを学ばせてくれた大切な出来事だった。

 さらに高校卒業後、二〇一七年に上京した先では『九年差の同じ別れ』第二章に登場する「彼女」と出会う。

 その時の私も、まだ何も知らなかった。

 その出会いが八年間続く関係になることも。

 成人期の私に大きな影響を与える存在になることも。

 仕事や日常の中で言葉を交わしながら、多くのことを学ぶことになることも。

 そして、その別れが思春期に経験した「彼」との別れを思い出させるほど大きな出来事になることも。

 当時の私には想像もできなかった。

 ただ一人の女性と出会った。

 その程度の認識だったのである。

 しかし振り返れば、その出会いもまた私の成人期を支え、多くのことを学ばせてくれた大切な出来事だった。

 思春期に出会った「彼」。

 成人期に出会った「彼女」。

 二人との関係は形こそ違っていたが、そのどちらも私の人生に深く関わる存在となっていった。

 三年間。

 そして八年間。

 振り返れば、その十一年間は私の人生にとって学びの時間だった。

 その中で私は多くのことに悩み、多くのことを考え、少しずつ変わっていった。

 もちろん、高校へ進学したばかりの私はそんな未来を知るはずもなかった。

 ただ高校生活の始まりに胸を躍らせながら、新しい日々を過ごしていたのである。

 けれど今振り返ると、『家庭教師の一年間』は決して受験の記録だけではなかったように思う。

 それは後に続く十一年間の始まりであり、『九年差の同じ別れ』へとつながる最初の一歩でもあった。

 二〇二六年現在、私は一九九八年生まれの二十七歳であり、八月には二十八歳を迎えようとしている。

 二十歳になった頃には遠い未来だと思っていた三十歳も、今では少しずつ現実味を帯びてきた。

 そんな年齢になったこともあり、近頃は自分の人生を振り返ることが増えた。

 しかし、それだけではない。

 思春期に出会った「彼」との別れ。

 成人期に出会った「彼女」との別れ。

 九年の時を隔てながら、どちらも転勤という同じ理由で終わった二つの関係。

 私はその出来事に向き合い、『九年差の同じ別れ』を書こうとしていた。

 そして過去を振り返るうちに気づいたのである。

 その二人との出会いよりも前に、もう一人の大切な存在がいたことを。

 中学三年の春、不安ばかり抱えていた私を一年間支えてくれた家庭教師である。

 もし『九年差の同じ別れ』を書かなければ、私はこの一年間をここまで丁寧に振り返ることはなかったかもしれない。

 九年差で訪れた二つの同じ別れがあったからこそ、その始まりまで遡ることになったのである。

 時間が経てば、人の記憶は少しずつ薄れていく。

 当たり前だった出来事も、いつの間にか思い出せなくなってしまう。

 だからこそ私は、忘れてしまう前に記録として残しておきたいと思った。

 中学三年の春、不安を抱えていた私。

 その私を一年間支えてくれた家庭教師。

 そして、その後に続く十一年間の始まり。

 それらは今の私を形作った大切な出来事だったように思う。

 この続きについては、『九年差の同じ別れ』の中で記録していくことにしたい。

 これは、その長い物語が始まる前の一年間の記録である。

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