表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/28

第7話 追われる者たち

森を抜けた空は、沈みかけた夕日に照らされて朱に染まっていた。

風を切り裂き、白銀の竜が空を駆ける。その背にしがみつく少女――アイリスの頬を、冷たい風が何度も打った。


「ルーク……もう少しだけ、お願い……!」


声をかけるたびに、ルークは軽く頷くように翼をはためかせる。

竜の力強い鼓動が、背中越しに伝わってくる。けれど、その体温の奥にあるのは、弟としての記憶なのか、それともただの本能なのか――アイリスにはまだ、わからなかった。


空の彼方には、追手の影が見える。

彼らは魔導具を使って飛行する騎士団で、徐々に距離を詰めてきていた。


「……しつこいな……」


唇を噛み締めながら、アイリスは前方に山が連なる風景を見つけた。

あの中に、精霊たちが眠るという「神秘の泉」があるという話を聞いたことがある。


あの泉なら、きっと――


「ルーク、あの山の方へ……!」


声を張り上げると、ルークは一声低く鳴いて答えた。

翼を大きく広げ、風を巻き込みながら山の方向へと旋回する。


そのときだった。背後から、光の弾が飛んできた。


「っ……危ない!」


ルークが反応し、体をひねって光弾をかわす。

けれど次々と放たれる魔法の矢は、容赦なくふたりを追い立てる。


「なんで、なんでそこまでして……! ルークは、誰も傷つけてないのに!」


アイリスの叫びが空に消えていく。

だが、追手のひとりが応じるように言った。


「"竜"は災厄の兆し。喋る竜など、存在してはならない!」


「そんなの、勝手な理屈よ!」


怒りで視界が滲んだ。けれど、涙を流している暇はなかった。

あと数発の魔法弾が当たれば、ルークは持たない。翼が焼かれれば、墜ちてしまう。


そして――


「……っ」


ひときわ強い光が生まれた。追手の隊長らしき男が、詠唱の終わりに叫ぶ。


「魔封雷撃――撃てぇっ!」


雷のような魔力が、一直線にルークを狙う。


だが――


「ルーク!」


アイリスが叫ぶと同時に、ルークは自ら光の方向に飛び込んだ。

背中の少女を守るように翼を閉じ、正面から雷撃を受け止める。


衝撃が空を走り、轟音が響いた。

アイリスの視界が白く弾け――次の瞬間、彼女たちは空から落ち始めた。


「――ルーク……!」


落下する中、アイリスはルークの体を必死に抱き締める。

竜の体は熱を帯び、傷つきながらもアイリスを庇うように、翼を最後まで広げ続けていた。


木々の隙間を縫うように、彼らは森の奥へと落ちていく――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ