(仮)
むかしむかし、あるところにニート太郎という青年がいました。
ニート太郎は毎日、朝から晩まで食っちゃ寝、食っちゃ寝していました。
それをマズいと思った青年の父親は超イケメンの家庭教師を雇うことにしました。
その家庭教師の名は――
「ニート太郎、今日からこの方がお前の家庭教師だ」
「どうも、太郎君。私は家庭教師の『イケメン・ザビエル』です」
「あ、ども……」
「では早速ですが、太郎君のお部屋にご案内ください」
「……はい」
父親の後に続きながらニート太郎は思いました。
(なんか、変な名前だな……まあいいか)
そして部屋に着くと、イケメン・ザビエルが言いました。
「太郎君、君は毎日食っちゃ寝ばかりして、うんこを量産しているそうだね」
「まあ、うんこは大好きですから」
「だから私はここに来ました。太郎君、君にうんこの持つ素晴らしさを教えてあげましょう」
「いや……結構ですけど……」
ニート太郎はお断りしました。しかしイケメン・ザビエルはかまわず話を続けます。
「ところで太郎君、君はうんこについてどのくらい知ってるかな?」
「……なんか体にいいらしいとしか」
「よろしい! ではまず、うんこの種類から説明しましょう!」
そしてイケメン・ザビエルは説明を始めました。
ニート太郎はうんこ談義には興味はなかったのですが、仕方なく聞きました。
すると、その話がなんと面白く、楽しいことでしょう。
ニート太郎はすっかりうんこに魅了されてしまいました。
「そうなんだ! うんこってすごいんだね!」
「ええ、太郎君。うんこは素晴らしいものなのです。さて、次はうんこの作り方について教えましょう」
「是非、お願いします!」
こうしてニート太郎は毎日うんこを食べ、飲むようになりました。
彼はいつしかうんこを極めるようになり、やがて世界中を旅しながらうんこを広めて回るようになりました。
そんなある日のこと、ニート太郎は日本に帰国することになりました。
空港へ迎えに来たのはもちろん、あのイケメン・ザビエルでした。二人は再会を喜び合いました。
「太郎君、あなたは本当に立派になった。もう誰もがあなたをニートとは呼びませんよ」
ニート太郎は答える代わりに、ただ微笑みました。
そして二人は手を取り合い、歩き出しました。
「ところで太郎君。私に一つ頼みがあるのですが……」
「なんでしょう? イケメン・ザビエルさん」
「実は、私の親族が集まるパーティがありまして、是非とも君にも出席してほしいのです」
ニート太郎は困ってしまいました。彼はパーティが嫌いだったのです。
しかし、尊敬するイケメン・ザビエルの頼みなら断るわけにはいきません。
「分かりました。参加させてもらいます」
こうしてパーティ当日を迎えました。そこには大勢の人々が集まり、楽しそうに談笑していました。
その中には当然のように美男美女揃いのイケメン・ザビエルの親族たちがいます。
緊張しながらも何とか挨拶を終えたニート太郎でしたが、次第に疲れが出始めてしまいました。
「少し休憩したいな……」
そう思い始めた時でした。一人の女性が近づいてくるのが見えました。
「こんにちは」
「えっと、あなたは……?」
「ふふっ、忘れてしまったんですか? 私ですよ、イケメン・ザビエルですよ!」
「えぇ!? どう見ても女の人じゃないですか!」
「実は私はこの日のために、性別適合手術を受けたんです。だから今は、こんな可愛い女の子になりました」
ニート太郎は驚きすぎて開いた口が塞がりませんでした。
一方で、イケメン・ザビエルは嬉しそうな表情を浮かべています。
「驚いたでしょう? でもね、これこそが本当の私なの。今まで隠していてごめんなさい」
「い、いえ……全然大丈夫ですよ」
ニート太郎は動揺しながらも答えました。
すると今度は別の人物がやって来ました。それはとても美しい女性でした。
彼女はニコリと微笑むと言いました。
「久しぶりね、太郎くん」
「あ、きみは確か……!」
「覚えていてくれて嬉しいわ。そう、おな中の明美よ。私この前ミス・コンテストで優勝したの」
「わぁ、それは凄いね」
「うふふ。それより太郎くん、あなた随分変わったのね」
ニート太郎は照れ臭くなって頭を掻きました。
それを見て女性はクスクスと笑っています。
「ところで太郎くん、あなた今もやっぱりうんこの素晴らしさを伝える活動をしてるのかしら?」
「うん、まあ……」
「素敵ねぇ。私もあなたのうんこに触発されて、今ではうんこの研究家になったのよ」
そう言って女性は鞄の中から本を取り出し、それを差し出してきました。
それはなんと、ニート太郎の書いたうんこに関する書籍でした。
「わぁ、嬉しいな」
「そうでしょ? 実は私も太郎くんと同じように、うんこを通じて人々に感動を与えたいと思ってるの」
「へぇー! じゃあ僕たち似た者同士だね」
そんなことを話しているうちに、またしても別の人がやってきました。
それは、ニート太郎が以前住んでいたアパートの大家さんでした。
「あら、元気にしてる?」
「大家さん! どうしてここに……?」
「ふっふーん。あたしが作った新商品のプロモーションに来たのよ」
そう言うと大家さんは大きな箱を開けて見せてくれました。
そこに入っていたのは大量のうんこ型チョコレートでした。
「わぁー、美味しそう!」
思わず声を上げてしまうと、周りの人たちが一斉にこちらを見つめてきます。
恥ずかしくなったニート太郎は慌てて口を閉じましたが、時すでに遅しでした。
みんなの視線が自分に向けられています。
「あれ? あの人誰?」
「知らない人だけど、すごくカッコイイよね」
「確かに。それにスタイルもいいし……」
周囲の人々はひそひそと話し始めていました。
それを見て、あまり目立ちたくないニート太郎は焦ります。
早くこの場から逃げなければなりません。
でもどうしたら良いのでしょう?
(そうだ、自爆しよう!)
そうしてニート太郎は、鼻をつまみ口を閉じると、ぷくーっとお腹を膨らませ、そのまま大爆発しました。
すると、さっきまでニート太郎がいた場所には、たくさんのうんこが落ちていました。
イケメン・ザビエルは言い出します。
「彼のためにみんなで流しうんこをしましょうよ」
流しそうめんならぬ、流しうんこです。
ニート太郎の分身が流れて行く姿を見た一同はみな、涙を流しました。
イケメン・ザビエルは、こう言います。
「太郎くん、君は最高だったよ。これからもずっと一緒だ」
――おわり――




