とある新人兵士の手記 ~夜~
そんなある日、我が国は隣国との戦争に巻き込まれることになってしまった。隣国の王子が我が国の王女様に恋をしたのだが、王女様がその縁談を断ったのだ。隣国の王子はいわゆる一人っ子で両親からの愛だけを一新に受け、過保護に育てられた典型的な王子だったようだ。わがままはすべて両親である隣国の王と女王が叶えてきたのだろう。
我が国の王女様は賢かった、そんな相手の気質を見抜いたのだ。そして今まで何もかもが思い通りになってきた王子は怒った。縁談で自分のものにならないのなら、力づくで…そういうことだろう。
我々は早速、兵士長に招集をかけられた。
「お前たちも知っている通り、近い内に隣国との戦争になるだろう。正直我が国よりも敵国の方が単純な兵士の数だけで3割は多い、つまりかなり苦しい戦いになると思う。無理は言わない。特に伴侶や子どもがいる者はわざわざ自分の身を危険に晒さず、家庭のことも考えよ。これは王よりの伝令だ。」
だが引き下がる者は誰もいなかった。それは俺も同じだ、そもそも立派な兵士としての勤めを果たすために兵士になったのだ。ここで逃げ出しては、田舎の両親や知人に笑われるというものだ。
「今ここで言いづらいものは後で来い。それよりも時間が惜しい、早速戦争に備えたい。各班の班長は会議室へ集合、王もいらっしゃる。そこで作戦会議と各班の配置などを決めたい。各班の副班長は自分の班の兵士を集めて戦闘訓練を開始、城内だけでは狭いので待ちの空き地なども利用するように。そして各班に所属する兵士たちは副班長の命令に従うように。以上!」
我が国の兵士達は10人ほどの班に細かく分けられており、それぞれに生物の名前が付けられる。俺の班は狐組だ。
俺たちの班が戦闘のときは、槍が貸与されることになっている。しかし当然本物で訓練するわけにはいかない、味方殺しになってしまうからな。早速暖炉や料理に使う薪置き場から長いものを数本持ってきて、そこに重りを付けて槍に見立て訓練を開始した。切る、突く、投げる、地面に突き立てて体術へ繋げる…槍の応用術は幅広い。俺たちは必死に訓練した。
そこから10日後の明け方、隣国が攻め込んで来た。もともと偵察兵が敵国の動きを探っていたため、前もって住人たちは城の地下などに避難していた。それは裏を返せば、お互いに一般人を気にすることなく思いっきり殺し合いができるということだった。
俺たち狐組も叩き起こされ、寝ぼけ眼のまま出陣した。我が国の陣地へ攻めてくるということは、相手の兵はただでさえ移動で歩き疲れているはずだ。地の理もこちらにある。兵士の数こそ負けているが、地の利と疲労をうまく活かせばきっと勝てる!
俺は今、街の外に出る前の最後のトイレ休憩にこれを書いている。必ず生きて帰って、この日記の続きを書くんだ!
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