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とある新人兵士の手記 ~夕~

 しかし何も良いことばかりではなかった。スピード出世したことで俺はもっとデカい仕事を任せてもらえるかと期待していたのだが…。その頃俺は看守ではなく、城内管理の担当に異動になっていた。城内管理とは文字通り城の中の雑用で、招集がかかれば駆けつけて上官の指示に従い突発的な任務の対応をするが、基本的には1日中城の中を見回りながら掃除したり壊れた箇所を修理したりする。

 これがキツかった。ほぼ1日中誰とも会話しないことも多く、また不審者などそうそう城内に侵入してくることがない。そもそも場外警備と言って、庭や門にも兵はいるのだから当たり前だ。同僚や後輩と丸一日会話しないことも多く、孤独感に苛まれた。またやることが掃除くらいしかないためとにかく時間の流れが遅いのもキツかった。看守のときは基本的に誰かと2人一組で仕事をするので会話があった。また巡回や囚人たちのイザコザを収めたりなどやることも多かったから、あのころは大変だった分時間の流れも早く感じていたのだ。


 しかもスピード出世した分目立つ俺は嫉妬の対象になったのか、今度は同僚からの嫌がらせが始まったのである。いつからか食堂などで、アイツは出世したくせに楽な仕事をしていると聞こえるように陰口を叩かれるようになった。俺はそんな連中と、持ち場を替われるものならすぐにでも交代してほしかった。

 ただでさえ孤独な労働環境なのに、同僚からの陰口はさすがにメンタルに堪えた。それでも俺は一兵士として立派に胸を張りたかったことと、そんな連中に負けたくないというプライドだけで我慢するしかなかった。いつか絶対やり返せる時が来ると自分を奮い立たせた。

 そこからさらに3年後、俺は兵士長補佐に任命された。やっと今まで陰口を叩いてきた連中へ思い知らせるときが来た。俺に陰口を叩いた連中を城内警備に回すよう兵士長へ、いろんなポジションを経験させた方が良いなどと言って進言し異動させた。俺と同じポジションへいき俺がどんな思いで働いていたかを思い知るが良い。目には目を、というやつだ。案の定メンタル的にキツかったのか移動させた何人かはすぐに辞めた。


 しかも俺はこの頃、結婚した。この城にメイドとして従事していた女性と結婚した。実は俺が一人孤独に城内警備していた頃、一階担当だったこの女性とだけは会話する機会がよくあったのだ。お互いに毎日が単調な仕事の中で孤独を共有し、すぐに惹かれ合った。兵士長補佐になって半年、仕事も身についてきた頃上司に相談し結婚することになった。

 俺は幸せだった、仕事は順調だし家に帰れば愛する女性が夕食を作って待っていてくれる。辛い仕事も人間関係も乗り越えて掴んだ幸せだったから、より強くそう思ったのかもしれない。


 いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。

 ※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。


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