とある新人兵士の手記 ~昼~
早速翌日から他の新人たちと計30人が囚人監視の任務に着いた。先輩についていろいろ教わって回るのだが、やはり囚人たちにも誰が新人かはひと目で分かるようだ。やつらは新しい獲物を見つけたとばかりにニヤニヤしていた。
噂に聞いていた通り、早速やつらの新人イジメが始まった。見回りの時に足をかけられたり、牢屋越しに水をかけてくるなど日常茶飯事だ。新人からの命令には露骨に従わないなど完全に舐めきった態度も取ってくる。あいつらは本当に下らないと思う、そもそも自分たちが悪事を働いたからここで監視される生活を送っているくせに、看守に当たっても何も解決しないではないか。俺は無性に腹が立った。
しかも奴らのいやらしいところは、人を選ぶのだ。俺のように体が大きく物怖じしなさそうな粗暴なタイプにはほとんど何もやってこない。マジメな看守、おとなしくて優しそうな看守…そういう反撃してこなさそうな人を選んでターゲットにしているようだ。
だが先輩からは何をされても徹底的に無視するように何度も言われた。反応して怒ったり泣いたりするとおもしろがってさらにエスカレートするからだ。しかも腹が立って手を出せば看守が囚人をイジメていると通報されるのである。なんとも理不尽な話だ。
とはいえ俺達だって人間だ、着任して早々1週間で3人が辞めた。それほど囚人たちの新人イジメが苛烈なのである。しかも賢いものほど先輩がいないときに、かつ証拠が残らないよう仕掛けてくるため悪質極まりない。俺は絶対に出生してコイツらにもっと厳罰を与えてやるんだと固く誓った。
俺はなるべく一緒に働く同僚を守るために、休みも返上して働いた。というのも一人だとイジメられるという看守も、俺が一緒に歩いていると何もされないと喜んでいたからだ。こんな俺でも誰かの役に立てるんだ、そう思ったら嬉しくなって俺はますます仕事に精を出した。難しいことを考えるのが苦手な俺だったが囚人の監視と統率でほぼ一日が終わり、頭を使わなくてもよいこのポジションはある種自分にとって天職だったように思う。
そして俺の頑張りが認められ、俺は兵士になって3年目にして1等級上がった。嬉しかった、1等級上がるのも普通は5年かかると言われていたからだ。この調子でどんどん出世してやるんだ、そして囚人たちの腐った性根を叩き直す。俺は使命感のような何かを覚え、やる気に満ちていた。
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