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ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします  作者: 未羊


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第98話 食堂が落ち着きましたので

 ようやく食堂の準備に一段落がつきましたので、私はスピードに乗って農園へと戻ってきました。

 到着すると、わらわらとノームが集まってきます。


『お帰り、主ー』


『久しぶり、久しぶり』


「ただいまですよ、ノーム。特に問題はなさそうでしょうか」


 私が質問をすると、ノームたちはこくこくと頷いています。

 精霊は嘘をつくことがありませんから、実際大丈夫なんでしょうね。


「レチェ様、お帰りなさいませ。食堂はいかがですか?」


「ただいま、ギルバート。食堂は最終準備の最中ですね。商業ギルドと冒険者ギルドに頼るところが大きいですので、私たちの方でできることは終わった、というところでしょうか」


「さすがレチェ様です」


 褒めてくるギルバードですが、そんなことをしても何も出ませんよ。


「農園は大丈夫ですか? ギルバートは狩りに出ることもありますので、その間のことが心配になるのですが……」


「大丈夫ですよ。見えないですけれど、ノームが監視してくれてますしね。マリナちゃんでしたっけか、彼女からノームの話が全部上がってくるんですよ」


「ああ、そういえばそうでしたね。マリナさんは、ノームを認識できるようですからね」


 どうやらギルバートがいない間はノームがみんなの様子を見守っていて、それらをマリナさんを通じてギルバートに報告しているようです。

 ノームの姿は、この農園の中では私とマリナさん、それとラッシュバードたちにしか認識できませんからね。どこから見られているか分からないとなると、それは警戒して悪いことはできませんよ。

 とは言いましても、やはり自分の目で見てみるのが一番です。

 畑ではマックスさんとハーベイさんが畑を耕していました。今は冬小麦のお世話ですね。


「これはレチェ様、お帰りなさいませ」


「ただいまです。どうですか、小麦の状況は」


「はい。俺たちは初めてですけれど、勝手にやってくれてる連中がいるみたいで、俺たちの出番があまりないですね」


「そうですか。その様子だとノームですね。まったく、従業員にやり方を教えないといけませんのに……」


 私はマックスさんの報告にちょっとムッとした表情をしてしまいます。


「いや、悪いことばかりじゃないですよ。俺らもこの農園を守るために力をつけなきゃいけませんからね。精霊たちが勝手にしてくれるおかげで、ギルバート様から剣を教わるだけの余裕があるんですよ」


「あら、そうでしたのね」


 ハーベイさんからの話を聞いて、私はちょっと機嫌が直りました。

 確かに、男手は三人しかいませんからね。ラッシュバードたちは基本的に小屋の中ですから、守れる力があるのはギルバートたちだけです。なら、それもいいかなと思い直しました。

 とはいえ、農園の仕事もおろそかにしないようにだけ注意をして、私はラッシュバードの小屋へと向かいました。


 ラッシュバードの小屋の中では、キサラさん一人でラッシュバードの世話をしていました。全部がスピードとスターの子どもたちなのですが、最初の体の大きさがまるっきり違っています。

 最初の頃は知らなかったこともあって、名付けてしまったら大きくなってしまいましたからね。最初の四羽だけが体が大きく、残りはまだ小さなヒナたちです。ヒナとは言いましても、さすがに半年前後経っていますから、だいぶ大きくなってはいますけれどね。


「レチェ様、お帰りなさいませ」


「ただいまです、キサラさん。ラッシュバードの状況はどうでしょうか」


「はい、みんな健康ですよ。大きくなったキララたちは、換毛期を迎えまして、この通りたくさんの羽が手に入りました。魔法できれいにして何かに使えないかなと思っています」


 キサラさんの言葉で、私に衝撃が走ります。


「羽毛布団……! そうです、その手がありましたか」


「う、羽毛……?」


 キサラさんが首を捻っています。そうですか、この世界の方は分かりませんか。


「鳥の羽を詰め込んだ布団のことです。これは、試してみる価値はありますね」


 私はキサラさんの手をがっちりと握ります。


「大当たりをしたら、キサラさんの給与に反映させて頂きます。ラッシュバードのお世話、よろしくお願いしますね」


「は、はい……。レチェ様、怖いですよ」


 私の反応にキサラさんが引いていますが、それはとりあえず今は不問です。

 アイディアを忘れないようにメモに認めますと、私は小屋へと移動します。


 小屋の中では、サリナさんとマリナさんの姉妹が一緒に掃除をしていました。

 二人は私の顔を見るなり、母親のカリナさんのことを心配していらっしゃいましたね。ですので、頭を撫でながら元気でやっていることを伝えます。二人はとても安心した表情をしていましたね。


「レチェ様、食堂は順調でしょうか」


「ほとんど準備は終わりましたので、心配ありませんよ。今日は一段落して戻ってきました。泊まっていきますので、様子を報告して下さいね」


「はい、わかりました」


 二人とも、小さいなりに私たちのことを心配してくれているのですね。本当にいい子たちです。


 その日の夜は農園の状況を確認を兼ねて、私が料理を振る舞います。

 とは言いましても、食事に使う食材は、ノームが成長促進してくれたものばかりですからね。季節に関係なくいろんなものが揃っていました。

 万一食材が足りない時は、こちらからお借りしましょうか。

 ノームの力があれば、腐らないですからね。まったくすごい力です。

 自分たちが食べるもの以外は、ノームの力をほとんど使っていません。精霊の加護というのは付加価値ではありますが、どこかずるい気がしましたからね。

 他の農家の方々に悪いと思いまして、小麦を粉にするのも商業ギルドに発注しています。

 まあ、言ってしまえばこだわりですね。


 それにしても、久しぶりのギルバートたちとの交流は、ちょっぴり懐かしく感じてしまいましたね。

 あまり離れていたわけではないですのに、不思議とそんな風に感じてしまった夜なのでした。

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