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ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします  作者: 未羊


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92/200

第92話 開業準備は順調です

 やっとのことで、食堂も形になってきました。

 いやまあ、イリスの服のポケットの魔法のことをすっかり忘れていましたね。そうは言いましても、ポケットの入口にものが入らないと収納できないわけですが。結局は自分たちで持つか、荷馬車を手配するしかありませんでした。

 う~ん、私のおっちょこちょいもここに極まれりですね。

 商業ギルドのミサエラさんのおかげで、食堂は本当にずいぶんとらしくなったと思います。いい感じの看板はできましたし、土魔法による殺風景だった建物もおしゃれになりました。

 ミサエラさんは実は私のおばさまだったわけで、おそらくは公爵家の権力も使ったのでしょうね。そうでなければここまで簡単に調達できるとは思えません。ギルドの副マスターも権力と合わされば鬼に金棒でしょうからね。


 さて、改めて最初から提供する料理を確認しましょうか。

 というわけで、この日は一度農園に向かいます。スピードとスターも、移住させることになるからです。

 この子たちの役割は、私たちの移動手段兼卵という食材の提供です。

 鳥の卵というものは病原菌が気になるものですが、私の眷属となったことでそのあたりも心配ないらしいのですよ。ノームの話ではですけれど。

 精霊のいうことですから間違いはないのでしょうけれど、心配ですからその上からさらに浄化魔法をかけておけば、対策としては完璧でしょう。


 ラッシュバードのスピードとスターを街の方に連れてきたのには、別の理由もあります。

 かねてから冒険者ギルドからの打診がありましたので、ラッシュバードを身近で見れるようにするためですね。

 それと、まだ幼いウィルくんとジルくんの兄弟に仕事を与えるためでもあるのです。ラッシュバードは体こそ大きいですけれど、私の眷属であるためにその気性はとても穏やかです。ですので、まだ幼い兄弟でも面倒を見れると思うのですよね。

 食堂の一角には、ラッシュバードのための鳥小屋ができ上がりました。


「ブフェーッ!」


 鳥小屋に入るなり、スピードが大きな声で鳴きます。翼をバタバタとさせているので、これは喜んでいるようですね。

 かと思いましたら、とことこと歩き出して地面の感触を確かめています。イリスに頼んで運んでもらいましたわらの寝床も、厳しい目でチェックしています。


「ブェッ」


 こう短く鳴いたかと思いますと、右の翼を小さくたたみ、折れて突き出た部分を私に見せてきます。


「えっと、これは満足ということでよろしいのですかね」


「ブェフェ」


 スピードは小さく鳴くと首を縦に振っています。あ、合ってましたね。

 いや、まさかこんな行動を取るとは思っても見ませんでしたね。あ、もしかして私の親指を立てる行動を見て覚えたのでしょうか。

 むむむ、油断ならない頭の良さですね。やはり、普通のラッシュバードとは違い過ぎますね、私のところの子たちは。

 しばらくスピードとスターと戯れていますと、イリスが呼びに向かったウィルくんとジルくんの幼い兄弟が出てきます。あれからというものすっかりよくなったので、この通り歩き回れているのです。


「うわーっ、おっきい鳥さん」


 鳥小屋にやって来たジルくんは、目の前のラッシュバードがとても珍しいようで、目をキラキラと輝かせています。

 ええ、そうでしょう。私の自慢の子たちですよ。


「スピード、スター」


「ブフェ」


 私が名前を呼ぶだけで、分かったといわんばかりに兄弟に近付いていきます。目の前でぴたりと止まると、頭をすっと下げて二人の前に差し出しました。


「撫でていいみたいですよ。この子たちはこう見えても繊細ですから、優しく撫でてあげて下さいね」


「はい!」


 私の言葉に元気よく返事をすると、二人はおそるおそるスピードとスターに手を伸ばしていきます。

 二人の手が頭に触れても、二羽とも暴れることも顔を背けることもなく、実におとなしく兄弟に撫でられています。何度見ても、驚くくらいにすごく忍耐強いですよね。


「イリス、ここはお任せします。私はカリナさんたちに料理を教えなければなりませんのでね」


「承知致しました、レチェ様」


 ウィルくんとジルくんの兄弟をイリスに任せた私は、食堂の厨房に移動することにします。

 調理を担当するカリナさんと兄弟の母親ティルさんに、食堂で出すことになる料理を教えるためですね。

 鳥小屋を出る時には、後ろでラッシュバードと楽しそうに戯れる声が聞こえてきます。もう見なくても分かりますね。


 カリナさんとティルさんも、料理に対してとても真剣に取り組んで下さっています。

 病気で長く寝込んでいたとは言いましても、母親として培ったノウハウというものは簡単には失われないのですね。

 二人とも真剣に取り組んで下さっているので、私が教える料理をどんどんと覚えていきます。慣れない油料理も、最初こそ跳ねる油に怖がっていましたが、回数を重ねるとあっという間に動じなくなってしまいました。これが母親の持つ胆力というものでしょうか。

 接客を担当する三人も、カリナさんとティルさんに負けじと奮闘しますが、はっきり言って勝負になっていませんでした。こういうことに勝負というのもなんですけれどね。


 私の計画性のなさから危険信号の灯っていた食堂事業ですけれど、みなさんのおかげでなんとか無事に予定通りの開業を迎えられそうです。

 改めてみなさまのお力に感謝したのでした。

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― 新着の感想 ―
思い出していただきたいのはポケットより ギルドから記念品として貰った大容量鞄ですよお嬢様… 開業したら仕入れになくてはならなくなるでしょうけども それまで忘れてる設定なのかしら…(汗)
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