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ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします  作者: 未羊


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第91話 私、しっかりしなさい

 新しい従業員を連れて食堂に戻ってきましたが、食堂の中はまだまだ殺風景でした。布団だけではダメですね。

 私はウィルくんたちの部屋をとりあえず用意します。布団も余計に用意しておいて正解でしたね。

 イリスにベッドメイキングしてもらいまして、私はウィルくんの母親と弟をベッドに寝かせます。二人は長く寝込んでいましたから、とにかくまずは体力をつけてもらいませんとね。

 大人の女性の肩を背負っていましたのに、まったくそれほど苦でもなかったなんて、心配を通り越して不安になる軽さですよ、まったく。


「しばらくはウィルくんはお二人の看病を続けて下さい。病気は私の魔法で治りましたから、看病という表現はおかしいかもしれませんけれど、完全に回復するまでは病気なのと同じですからね」


「はい、わかりました。本当に、その……ありがとうございます!」


 ウィルくんが元気よく頭を下げてきます。悪いことに手を染めなければいけないほど追い詰められていましたものね。それが解消されたのですから、このようになるのも当然ですか。


「私は治すだけの手段を持ち合わせていただけです。本当に感謝しているのでしたら、食堂の一員として、これから頑張って下さいね」


「はい! えと……あの……」


 私の声に元気よく返事をしますが、その後はしどろもどろになります。私はピンときましたので、咎めることなく話しておきます。


「先程も名乗りました通り、私の名前はレチェです。名前で呼んでいただいてまったく問題ありません」


「は、はい、レチェ……様」


 恥ずかしそうにしていますね。

 ……あっ、そういうことですかね。それでしたらなんとも可愛らしいことではないですか。

 とりあえず、私は微笑みかけておきます。


「もうしばらくしたらお食事をお持ちしますのでね。よく食べて体力を付けて行って下さい。体力をつけたら、再び歩けるように訓練をしませんと」


「はい、何から何までありがとうございます。レチェ様」


 ウィルくんは本当に嬉しそうにしています。

 今度は名前でつまることはなかったですね。

 私は三人にそのまま部屋でゆっくりしているように伝えます。

 ひとまずは何か食べてもらいませんとね。起きたばかりの方には、おかゆから食べて頂きませんとね。

 考え込みながら厨房までやってきますと、そこにはカリナさんと新しい三人の従業員が集まっていました。


「レチェ様、先程の方々は一体?」


「新しく雇い入れた従業員です。ただ、母親と弟くんは病気になられていたみたいでして弱っていましてね。今からちょっとおかゆを作って差し上げようと思うのです」


「病気に……? だ、大丈夫なのですかね」


「はい。私の魔法で完全治癒させておきましたから、病気が私たちに移ることはありません。今は長いこと寝込んでいましたので、体が弱って動けなくなっているようです」


 私が話すと、四人はざわついています。何か知っているのでしょうかね。


「あの、レチェ様」


「はい、なんでしょうか」


「もしかして貧困地区の方たちですかね」


 新しい従業員の女性の一人がズバリ言い当ててきました。


「はい、その通りです」


 私は否定しません。認めます。


「ご存じだったのですか?」


「はい。私たちの中では近づくなという風に言われている場所でしたので、詳しくは知りませんでしたが……」


「そうですか。この街でもそのような話が出ているのですね。公爵領内でのよくない噂、どうにかしませんとね」


 従業員の話に耳を傾けながら、私は悔しく思いました。

 だって、この国の公爵が治める土地に、このような問題があることがおかしいのです。リキシルおじさまだって、領内のことには尽力されてきたはずですから、まさかこのようなことがあるだなんて……。

 私は悔しくて仕方ありません。ええ、この時ばかりは公爵令嬢として、本当に悔しく思いました。


「ギルドを動員して、調べ上げてもらうしかありませんですかね。今日はたまたま暇でしたから助けましたが、いつもこうできるとは限りませんからね」


 はい、嘘でございます。

 少年が気になったので、それどころではなくなっただけです。イリス、本当に申し訳ありませんでしたね。


「レチェ様はお優しいのですね」


「……ただのお節介焼きです。買いかぶられても困りますよ」


 そうこうしている間に、パンをお湯で炊いただけのおかゆができ上がります。味気ないですけれど、胃が弱りまくった方にはここから始めて頂きませんとね。


「さて、私はウィルくんたちを見てきますので、みなさんは必要なものを改めてイリスに伝えておいて下さい。すぐさま集めに出かけますから」


「はい、承知致しました」


 私の言葉に、カリナさんたちが慌ただしく動き始めました。


 イリスから後で聞きましたけれど、いやはや足りないものだらけでしたね。いけませんね、こんなことでは。

 私は今回のことで、改めて考えなし、準備なしに動いていたことを思い知らされました。

 これからは冬の時期に入って寒さが本番を迎えます。

 ああ、暖房も用意しませんと。……私ってば、こんな調子で大丈夫なのでしょうか。


 そんなこんなでして、私は農園との間を往復しつつ、来年の食堂開業に向けてどうにか少しずつ準備を進めていったのです。

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