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第82話 食堂開業に向けて

 さて、アマリス様とルーチェが滞在している間、私には別のやることがありました。

 それはいよいよ視野に入ってきた食堂のオープンに向けての準備です。

 収穫が終わったあとからでも食堂のための建物の建設はできますからね。

 ですけれど、問題は料理です。食材の調達を行うのは当然ですが、料理をする人間を育てなければなりません。出店場所も決まってはいませんが、来客数によっては調理する人間が一人ではとても間に合わない可能性がありますからね。

 そこで、アマリス様やルーチェ、それとついてこられた護衛や使用人の方々と試食のできる方が滞在なさっていますので、ここはカリナさんたち親子に料理を覚えてもらおうと思うのです。


「えっ、私たちが料理を覚えるのですか?」


 当然ですけれど、カリナさんが驚いていますね。サリナさんとマリナさんも後ろで顔を見合っています。


「はい。私は農園と同時に、ここか近くの街で食堂を開こうと考えています。どちらにせよ、私とイリスの二人で作るのは限界があるでしょう」


 私はカリナさんの言葉に、このように返しておきます。


「現在、アマリス様やルーチェと、その護衛や使用人たちと十数名の食事が増えております。その対応だけで私とイリスはこの通り手一杯になってしまっているのです。料理のできる方を増やすことは、現状では急務であると考えられるのです」


「そ、それは確かにそうでございますね」


 私の話した内容に、カリナさんたちは納得しているようですね。

 とりあえずは納得して頂きましたので、私はまずはパンから作り方を教えます。

 それぞれの家庭でもパンは作られているでしょうが、市井の方々のパンは硬いと聞いています。

 そこで、私は果実を発酵させて作った酵母を使った柔らかいパンの焼き方を伝授していきます。

 ただ、この酵母を用意するにはキレイな入れ物が必要ですからね。ここがまずは庶民ではネックでしょう。

 それは私の魔法でどうとでもできますので、ここで問題にする内容ではありません。

 酵母の作り方はとりあえず割愛させてもらいまして、パンを作っていきます。

 作り方を実演していますと、三人とも驚いた様子で見ていますね。

 それもそうです。発酵の度に膨らんでいくパン生地は見ていて面白いものですからね。

 今回はシンプルにロールパンを作ります。

 棒状に伸ばした生地をくるくると巻いて、いざ焼き上げます。

 私が魔法で出したオーブンにはタイマー機能がありますので、それで時間を合わせて焼けば、きれいなロールパンができ上がりました。


「はい、これがロールパンと呼ばれるものです。まだ焼き上がったばかりで熱いですけれど、どうぞ召し上がってみて下さい」


「は、はい」


 見たことがないのでしょうね。おそるおそる三人はロールパンに手を出してきます。


「あつっ!」


 当然ながら、焼き上がったばかりのパンは熱いです。思わずやけどをしそうになります。

 すぐさま私の水魔法で冷やしてあげます。


「あ、ありがとうございます」


「いえ、このくらい当然ですよ。さあ、少し冷めてきましたので、改めて召し上がって下さい」


 私が改めて勧めると、今度もおそるおそる手を伸ばします。

 今回はきちんと手でつかむことができたので、三人は安心していました。

 手でちぎろうとしたところで、これまた驚いていましたね。


「こ、こんなにパンって簡単にちぎれるんですね」


「やわらか~い」


「ふわふわしてておいしい」


 ここでも出してましたけれど、冷めきってましたからね。

 焼きたてはやっぱり違うんですよ。


「ふふっ、焼き立てパンは満足いただけましたか?」


「はい。とても」


 ひとまず、つかみはオッケーといったところでしょうかね。


「おいしいものは人を幸せにすると思っています。ですので、みなさんも少しでも幸せをお届けできるように頑張りましょうね」


「はい!」


 私が持論を述べると、サリナさんとマリナさんは大きな声で返事をしていました。その後ろでは、カリナさんも黙って頷いているようです。

 この姿と返事には、私もすっかり満足です。

 今日はとことん料理を教えてあげましょう。

 私が魔法で作ったバターやクリームを使った料理など、とにかく様々な料理を作って見せてあげます。

 とてもじゃないですが、一日で覚えきれるものではないでしょう。

 この中から食堂に出すものを決めたいですから、できるだけ見せておきたかったのですよね。出すメニューが決まれば、それを中心に三人しっかりと作り方を覚えてもらうつもりです。


 ですが、さすがに種類と量を作りすぎてしまいました。このままでは食べきれませんので、イリスやギルバート、はてはアマリス様たちの護衛といった方々にも手伝って食べていってもらいます。

 どうにかフードロスは避けられそうですが、これでは昼食や夕食は要らなさそうですね。

 いけませんね。調子に乗ってしまうのは私の悪い癖のようです。

 ですが、そのかいあって食堂に出すメニューは絞り込めてきました。そうすれば仕入れる食材も分かってきますから、商業ギルドへの注文も出しやすいというものです。


 夕食の時間には、私は今日のことに対するお礼とお詫びを述べておきます。

 ですが、みなさんは優しいですね。笑って許して下さいました。

 このような方々に囲まれて、私は恵まれているなと、改めて思ったのでした。

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